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10-1 勝ち組



「な、なにここ?!」


 手を繋いで転移し直ぐさま俺達は戦闘態勢をとった。だが、目の前に居るはずのクロトワの姿が存在しなかった。


 そして何よりも驚かされたのは、ここが地上のどこにも存在していないであろう場所だったことだ。


 まるで時空の歪みに呑まれてしまったかのような、歪む景色が遠くにあるのか近くにあるのかも分からないようなそんな場所だった。


「みんな、離れるなよ!」


 なんだ。ここはどこなんだ?魔力感知もうまく働かないし、気配察知にも何もかからない。

 そもそもクロトワを追ってきた筈なのに、何故誰も居ないんだ?


「クロトワならいるぞ?」


 突如声が聞こえてきた。だがどこから聞こえているのかも分からず周囲を見渡す。

 すると背中合わせに構えて居たはずの皆がいなくなっていた。


「欲しいのか?欲しいのならくれてやろう。ほらっ。」


 すると目の前の空間から黒い何かが俺目掛けて飛んできた。突然だったことと、距離が近すぎたせいでつい受け止めてしまった。

 腕の中を見てみると、そこには口から血を流し光を失った眼をしたクロトワがいた。


「……どこにいる。姿を見せろ!!!!」


「……良いだろう。」


 何もかもが突然だ。今度は突如背後に気配察知が働く。振り返ると、そこには始めからそこに佇んでいたかのような中性的な顔をした男が椅子に座っていた。


 3対6枚の漆黒の羽を背負い、真っ白い髪に血の通っていないような白い肌。羽が黒いこと以外は神や天使のような姿をしていた。


「どうした…望み通り姿を見せたぞ?」


「お前は……誰だ?」


「ふっ、礼儀も知らぬか。……まぁ良いだろう。余は大天使ナルキテラ。今は名乗っておらぬ古い名だがな。お前の紹介はいらぬ。死にゆくものに興味などない。」


「……お前が邪神の欠片を盗み出したのか?」


「盗み出したというのは言い方が悪い。余は持て余していた力を有効活用したまでだ。神界の役立たず共に持たせていても宝の持ち腐れであるからな。クロトワも少しは役に立ったが、力をくれてやっても逃げ帰って来るような弱者はいらぬ。」


「……堕天使か。堕ちるとどこまでも堕ちるもんなんだな。」


「堕天使とはこれまた失礼な言いぐさだな。余は既に神の領域へ足を踏み入れたのだ。地上においても神の力を行使することが出来るのだ。よって邪神として地上も神界も掌握し絶対的存在として君臨者となるのだ。わかったか?」


「わかったよ。クズ野郎だって事がな!!!」


「ふむ。ではお前に命令をくれてやろう。お前の心の臓が停止するまでに余を出来るだけ楽しませてみせよ。」


 全身がキラキラと輝く魔力に包まれたナルキテラは、右手を上げて人差し指を天に向けて指差した。


「まずは暇を持て余しているお前の仲間に試練をくれてやろう。マナ・ドリクル。」


 



「ハルト様!ハルト様!!!」


「ルカちゃーん!!!落ち着いて-!!!!」


「そうだよ!ルカ、今は戸惑っている暇なんて無いんだから!!!」


 ハルトと分断された3人は、ハルトのいる空間と同じ景色の空間にいた。

 ハルトと離れて最も取り乱したのはルカだった。ハルトと共に戦えない焦りと、危険な敵を前に1人にさせている恐怖がそうさせていた。


「……すみません。アイナ、早く転移でハルト様の元へ向かいましょう。」


「そうだけどさ、一旦落ち着こう。ルカは氷の女王の如くドシッとしててよ。皆がパニック状態の時の頼みの綱なんだからね!はい、深呼吸して深呼吸。」

 

「…………はい。ヒーヒーフー。ヒーヒーフー。……少し冷静になれた気がします。」


「ぷっ!!」


「あれー?何か変なのだよー??」


 シロが何かに気付き指を指す。すると指差した先にはマーブル模様の球体が3つ浮かんでいた。


「魔力の塊……シロちゃん、アイナ!気を付けて下さい!!!!」


 ルカが声を掛けるとシロとアイナはすぐに距離を取り臨戦態勢へ入る。

 

「動い…てるね。」


 アイナは剣の柄を掴みいつでも抜刀出来る状態で球体を見ると蠢いたように見えた。


「ちゅりゃ!!!」


 蠢く怪しい球体を前に我慢できなくなったシロが手弾を飛ばす。

 だが、まるで水が岩にぶつかったかのように弾けて消えてしまった。


「んー、硬い-?」


「魔力に動きが!離れて下さい!!……はぁッ!!!」


 ルカが魔力の動きを感じ取り即座に指示を出し、その場を後退すると、間を置かずに球体は破裂した。

 とてつもない爆風が3人を襲ったが、ルカが氷の結界で防いだ。すぐに通り過ぎた爆風が止むと、そこには驚愕の光景が現れた。


「あっ、ご主人様だぁー!!!」


「勇者ランスロット……?」


「黒槍!?」


 球体が弾け飛んだ場所にはハルトとランスロットとクロトワが並び立ち、ルカ達を見詰めていた。


「ね、ねぇルカ。どーいうことか分かる?」


「繋がりがあるとすれば、私達が敗北してきた者という事でしょうか。」


「ハルトさんは戦ってないじゃん!!」


「ダンジョンでシロちゃんとハルト様は一度戦っています。」


「あっ!そういえば私も負けてたわ。」


「ルカちゃん。ご主人様偽物なのー?」


「魔力の感じは限りなく似ています。判別出来ない位には。しかしランスロットは既にクロトワの手によって死んでいます。」


「じゃあ……幻術って事?」


「いえ、幻術には既に干渉を試みましたが、何の手応えもありませんでした。実在しています。それに……確実に言えることはハルト様の形を模したあの者は、決してハルト様ではありません。幻術ではこうはいきません。」


「何でハルトさんじゃ無いって分かるの?」


「ハルト様の瞳は……遙かに暖かく輝きを放っています!!!!飛龍剣・一閃!!!!」


 ハルト愛から偽物だと見抜き、ルカは愛する者の形をした何かに剣技を飛ばした。

 だが、偽物のハルトはルカ達の想像以上にハルトを模していた。


地這う百雷龍ライトニング・ヒュドラ!!!!」


 無表情ながら声を上げたハルトは、虚空のような天へと向けて魔力を放った。




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