9-8 決戦へ向けて
「あっ!ご主人様だぁ!!!」
「ハルト様、お疲れ様でした。無事に済んだようですね。」
「え?なんで分かるの?」
「ハルト様のことなら表情一つで分かりますから。」
ルカは照れくさそうに言う。可愛すぎるだろ!!!耳が赤いぞ!!!
「ご主人様お疲れさま~!シロも頑張ったよー!!ルカちゃんよりは大分時間かかっちゃったけど、デッカイの倒したの!!楽しかったなぁ。ご主人様にシロの万裂拳見せてあげたかったなぁ-!!!ちゅりゃりゃりゃりゃ~だよ!!!!」
「あぁ、俺も見たかったよ。」
シロの頭をワシャワシャしてると今度はアイナがいじけだした。
「神様方と話してるときも除け者……今の感動の再開も除け者……。」
「アイナ-?元気出して-?シロはとっても嬉しいんだよー?」
「くぅ~!!!シロちゃーん!!!!」
アイナはよっぽど嬉しかったのかシロを強く抱き締めた後、シロを持ち上げてクルクル回り出した。
そして落ち着いたところでリスキアと話したことを3人に説明した。
クロトワを討伐するってやつだ。
「私はそれで構いません。黒槍が長距離転移を使える以上放っておくのは危険ですから。」
ルカはそう言ってくれると思っていたよ。
「シロはいつ何時、誰の挑戦でも受けるよ-!!!」
シロはどこのプロレスラーだ………。
「わ、私だってついていきますから!!!!」
「……大丈夫なのか?」
「大丈夫です!残りの邪神の欠片はあと2つですから、あの黒槍女とラスボスだけですよね?それならこっちから向かい打てば問題ない筈です。それに私……あの黒槍にやられっぱなしで皆に任せてるだけなんて耐えられません!!」
おぉ、アイナが燃えている。
「攻撃が最大の防御大作戦だな。待っていたらどこかで被害が生まれるかも知れないし。」
「はい!」
「よし、じゃああとはいつ向かうかだな。敵の本丸に乗り込む可能性が高い。となると皆の魔力量とかの関係もあるし。」
「シロはへっちゃらー?」
「私はちょっとヤバめです……少しだけ休みたいです。威勢の良いこと言ってたのにすみません!!!」
「いや、隠される方が厄介だから構わないよ。万全に近い状態で挑んだ方がいいに決まってるからな。じゃあ明日にしておくか。」
クロトワ討伐が決まり早速ハルルシアで王都に戻って休もうと移動を開始すると、一人の女性が駆けてきた。
「待ってくれ!!!」
「あっ、お姉ちゃんだぁー!!!おつかれー!!!」
「あぁ!其方等のおかげで帝都の被害も小さくて済んだ!!それに私も生きていなかっただろう!助かった!!!」
綺麗な人だ。ちょっとだけボーイッシュだが、綺麗な人だ。
「この人がシロのご主人様だよー?めっちゃくちゃのぷっちょくちょに強いのー!!シロもご主人様みたいになるのがゆめー!!!」
「ご、ご主人様とやらは其方よりも強いというのか……?」
「もちろんだよー?ご主人様-!この人はお姉ちゃんの人だよー!」
うーん、お姉ちゃんの人か。
「どうも。ハルトです。」
「あ、あぁ。私は帝国の勇者と帝国の騎士団長をやっているミラーリアだ。この度は本当に助かった。心より感謝している。皇帝には既に其方等の活躍は報告済みだ。謝礼をせねばならぬ、よければこれから来ては貰えぬか?」
「あー、ごめんなさい。ちょっと本気で忙しいので。」
「そうであったか。………分かった。私から皇帝には伝えておく。また時間があるときにでも来てくれ。歓迎するぞ。」
「分かりました。」
あー、他人な美人は緊張するな。つい堅苦しい感じになってしまう。
☆
「ふぃ~、やっぱりハルルシアは落ち着きますなー!!最高のお風呂でした!!!ね?シロちゃん!!」
「小さくても柔らかい-!!」
「うわぁーーーーー!!!!!」
シロとアイナは何を騒いでるんだ?この2人はほんとにいつも元気いっぱいだな。
「あれ?ルカは?」
「ルカは遅れて来たんでまだお風呂ですよ!覗いても私は怒りませんので!!さぁどうぞ!!!」
ぺしっとアイナのおでこにチョップを入れて、コーヒーを入れに行こうと操舵室を出た。
するとちょうど部屋からルカが出て来たところだった。
「あっ、ルカ。お風呂入ってたんだね。」
「お先にいただきました。ハルト様はどちらへ?」
「コーヒー入れに行こうと思って。ルカも何か飲む?」
「私がすぐに入れてきますので、ハルト様は操舵室で休んでいて下さい。」
「大丈夫だよ。ルカこそ戦ったばかりなんだからゆっくり休んで戦いに備えててよ。シロとアイナの分も用意するから、何飲むか決まったら念話してね。」
「はい。……ありがとうございます。」
ルカと分かれて階段を下りていく。あの感じだとルカは俺の様子がおかしいことに気付いていたな。
あの風呂上がりの火照った顔をしたルカの破壊力は一体何なんだ。神力風呂にでも入って破壊力の底上げしてないだろうな。
まぁそれでも突っ込んでこないルカの優しさに感謝だな。
☆
なんやかんやありつつハルルシアをゆったりと飛ばし、王都へと戻ってきた。
アイナはムーアさんに報告をしに王城へと向かっていった。
「お待たせしました!!」
「はやっ!!もう終わったのか!?」
さっき行ったばかりなのにすぐにアイナは戻ってきた。忘れ物か?
「転移がありますから!おかげでムーアさんの驚いた顔が見れました!!!」
「いくら何でも早過ぎないか?いいのかちゃんと話してこなくて。」
「眼をジーッとみて、急いでます。ハルトさんが。って言ったら…はぁ、もう行け。って言ってくれました!」
アイナはムーアのものまねしながら説明してくれた。すげぇ似てる。
「そうか。」
そういえば聖教国は大丈夫なのだろうか。ヤナタ達が心配なんだよな。
『リスキア。』
『……ハルト、どうかしましたか?』
『一つ聞きたいんだが、聖教国は今のところ無事か?』
『……はい、襲撃を受けた様子はありません。恐らくそんな事をしている余裕もないでしょう。』
『そうだな。』
『ハルト……気を付けて下さいね。』
『ありがとう。じゃあな、また連絡する。』
『はい。』
よし、いよいよ後は敵地へと乗り込むだけか。
「みんな魔力量も体力も気持ちも準備は良いか?」
「シロは24時間いつでも行けるよー!!!!」
「私もオッケーです!!やってやりまっせぇ!!!!」
「私もいつでも行けます。」
「よし!!じゃあ手を乗せてくれ!!!」
俺が右手を出すと三人が俺の手の上に手を重ねていく。
「誰も死ぬなよ!!俺達の手でこの世界を守るぞ!!!!」
「「「はい!!!!」」」
全員の心が一つになり、俺は転移を発動させクロトワの元へと飛び立った。




