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8-21 紅眼のミルール



 俺に芸能人の適性が無いことを確信しつつ騎士団の人達と別れ、門の横の扉を(くぐ)る。


「うわっ、なんだこの広さは。」


 そこには広大な空間のエントランスがあった。これほんとにエントランスか?舞踏会の会場って言われても何一つ疑わずに踊る自信があるぞ。踊れないけど。


 エントランスには二階へと続く階段が左右にあり、上がると広い踊り場となっておりエントランスを1周見下ろしながら回ることが出来る通路がある。

 そのエントランスを囲んだ二階の通路には二カ所の分岐点があり、そこを曲がると二階を巡る通路になっているようだった。


 アイナも会議中みたいだし、とりあえず1階から見ていく事にして、これまた左右の階段横にある通路の右側から探検する事にした。


 想像していたよりも幅の広い通路を進んでいく。天井もかなりの高さだ。

 ただ通路とは言ってるが簡素なものではなく、壁紙やカーペット、天井飾りまでオシャレに作られ、絵画や装飾品なども飾られている。


 人生初めての城の内部で感動しまくっていると、1つ目の扉を発見した。

 扉は特に派手さがないので、客人向けやお偉いさんに関係のある部屋というより城に従事する者の部屋のように感じた。

 だが、いきなりメイドさんの女子更衣室でラッキースケベでアンハッピー捕縛などは御免なので念のためサーチしておくと無人の部屋なのが確認出来た。


 軽くノックしてから入ってみる。やはり特別なことも無く、ただの物置のような部屋だった。廊下の装飾品や絵画などを定期的に入れ替えたりでもしてるのか、様々な絵画などが保管してあった。


 更に通路を進んでいくと同じような扉が複数あったが、あまり開け閉めしまくっていると怪しい気がするので、的を絞ることにして先へと進んでいく。


 通路は回廊となっているらしく最終的にはエントランスへと戻れる設計になっているようだった。


 ようやく1つ目の曲がり角が現れたが、壁は入り角のように角張っておらず、円を描くように広がっていた。


「階段があるな。」


 そこの壁際には地下へと続く階段があった。地下って気になる。なんかよく分からないロマンがある。


 見付けてしまったからには下りないわけに行かないので地下への階段を下りていく。


 しかし、階段は狭くはないものの先程までの通路とは違い石造りの壁のままで何一つ飾り気は無かった。


 地下牢かとも考えたが、わざわざ罪人を美しい庭園や通路を通って地下牢へと収監しないよなと思ってワクワクが更に高まる。

 だが、下りきったところで鉄の格子扉が現れた。

 やはり牢屋のようなものらしく、鉄の扉のすぐ先に別の階段があるのが見えた。

 恐らく収監する際には別の階段から入るのだろう。


 扉の横には兵士が立っていた。


「すみません。ここは牢屋ですか?」


 突如現れた俺達に一瞬ギョッとした表情をしたが、俺の胸元のプレートを見るなり兵士はあからさまにギョッとした顔をした。


「は、はい!牢屋であります!!」


 ビシッと敬礼を決めて兵士は答えた。俺が興味本位で中へ入れるか聞くと、俺が誰かも知らないのに鉄格子の鍵を開けて中へ入れてくれた。


 扉に鍵がされており兵士もいるということは今も収監されている者がいるのであろう。

 扉を潜り薄暗い通路を進んでいく。やがて両側に牢屋が現れてきた。


 想像だとタトゥーの入ったスキンヘッドが手を伸ばしてきたり、涎を垂らしながら呻く者などがいるのかと思っていたが、収監された者達は一瞥するなり視線を逸らし静かに佇んでいた。


 衛生的にもそこまで劣悪な感じはしなかった。他の国では奴隷制度があるようなので殆どの罪人は奴隷となるらしいが、ハープルム王国では牢屋で過ごさせるのだろうか。


 地下牢は広大な敷地があるようで、中々行き止まりに辿り着かない。

 諦めてそろそろ戻ろうかなと思い始めたところで、格子扉とは違った完全に仕切られた扉が現れた。


 サーチを使ったところ、一人だけ中にいるのが確認出来た。


 ここだけ更に隔離されているということは、余程の重罪人なのか将又(はたまた)普通の牢屋では監禁しきれない能力の持ち主か。


 しかし開けてはならないと思えば思うほどに人は開けてしまう悲しい性を持っている。いや、ここを開けずして帰るわけには行かないという冒険心からか、俺は扉に手を掛けた。


 だがノブを回しても扉は鍵が掛かっていてもちろん開かない。土魔法で土を鍵穴に流して固めれば開くんじゃないかと試してみたが、鍵を回そうとした瞬間に作った鍵はボロボロに崩れてしまった。


 むー。やるな特別製扉め。


 ここは本領発揮するしかない。マジック・クリエイト。


解錠(アンロック)。」


 俺はマジック・クリエイトを使い解錠するためだけの魔法を創り出した。

 すると鍵穴には何も指してはいないが、カチャリと鍵の開いた音がした。


「よし、開けてみるか。」


 再度ノブに手を掛けて扉を開く。すると明らかにそれまでと雰囲気が変わった。

 周りは土で造られていたはずだが、扉の中は様々な色のペンキをぶちまけたかのようなマーブル模様の異質な部屋となっていた。


 扉の前にはすぐに赤錆色の鉄格子が塡められており、中には一人の少女が椅子に座りぬいぐるみのようなものを抱き締めていた。


「……ふふ。客人なんて何十年ぶりだろうか。」


 その少女の瞳は深紅に染まり、まるで見詰められているだけで体が燃えてしまいそうな気がしてきた。


抵抗(レジスト)。」


 もしかしたら既に何かされている可能性があると感じて即座にレジストする。

 すると少女は目を見開き歩み寄ってきた。


「へ?ま、魔眼だぞ!?何故お前は燃えないのだ!!お前は賢者か?!それとも盾の勇者か?!」


 格子を掴み捲し立てるように少女は質問を投げ掛ける。魔眼……漫画では見たことあるけど実物は異世界でも初めてだな。

 賢者や盾の勇者なら魔眼は効かないのか?


「うるさい奴だな。どれも違うし。お前こそ誰だ?」


 俺の態度に何故か驚いたような顔をして少女は格子からよろよろと下がり手を離した。

 少し俯きながらも深紅の瞳で少女は見詰め続ける。


「お、恐ろしくないのか!?紅眼のミルールだぞ!?」


「あ?何言ってんだ?何で聞いたこともないお子ちゃまを怖れねばならんのだ。ミルクだかるるぶだか睾丸だか知らんが面倒だから勝手に喋り倒すな。」


「くっくっく。変わった奴だが……気に入ったぞ。おい、ここから出せ!そうすればお前にこの世界の半分をやろう!!!」


 どこの竜王だよ。懐かしい台詞だな。


 世界の半分をやるから牢屋から出せとか明らかに怪しい交渉を持ちかけてくるので、鑑定パイセンに協力を求める。


 鑑定結果は真っ黒だった。真っ黒といっても鑑定パイセンが弾かれた訳では無い。

 称号の欄に紅眼魔王、魔眼の悪鬼、破壊の象徴と表示されたのだ。これは悪さしてるの確定です。破壊の象徴が世界を守ってるとは思えない。


「おい!何を無視している!!早くここから出すのだ!!」


 鑑定されたことにも気付かない小娘がピーピーと騒いでる。魔王とやらも案外低レベルなのかな。

 鑑定パイセンが表示したステータスを見ても、ルカやシロの相手にはならない。魔眼がヤバいなら目を瞑って闘えばいいだけのことだし。


「出さぬとその小娘共を殺すぞっ!!!!」


 カッチーン。ピーピー騒いでるだけなら許す。だがこいつは言っちゃいけねぇ事を口にしやがった。


「あぁ?」


 怒りに任せて手加減無しの覇王の威圧(コウアーション)をぶち当てる。

 魔力全開で放った一撃に紅眼のミルール様(笑)はブクブクと泡を吹いて失神してしまった。


 コウアーションなんかで失神するレベルだからこんな所に幽閉されるんだよ。

 

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