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2-6 極限の先へ




 ギリギリのタイミングで間に合いそうだが、女を連れて回避している余裕が無い。辿り着くより先にマジッククリエイトで氷の魔法を作り出す。イメージは巨大な氷のドラゴンだ。


「食らい付けぇ!!!!!!」


 超巨大な氷龍が巨大な顎を広げて炎の塊に向かって羽ばたく。まるで怪獣大戦争だ。

 全力の一発でごっそり魔力を持ってかれ眩暈がするが、立ち止まるわけにはいかない。

 

 氷龍が男の魔法に食らいつくと同時に、俺は女の元へと辿り着く。強大な魔法同士がぶつかれば爆風だけで死ぬかも知れないので、急いで全力の結界を使う。


 また全力で魔力を注ぎ込んだ為に、不安になるくらい大量の鼻血が出た。

 

「お父……さま?」


 女が氷龍をみて呟いた。


 俺の放った魔法が、奴の魔法を止められるか心配だったが拮抗している。すると氷龍が炎の塊を呑み込んだ。


 魔法を消し去ったのかと思い、やった!と口にしようとすると、氷龍が大爆発した。


 結界の中とはいえ安心できないので、咄嗟に女を庇おうと覆いかぶさる。

 

 周囲は轟音が鳴り響き、地震のように大地が揺れる。


 これはさすがに駄目かと思ったが、やがて周りが静かになった。恐る恐る目を開けると、氷龍が爆発を起こした所に隕石が落ちたような巨大なクレーターが出来ていた。


 目の前の光景にあっけにとられたが、直ぐさま女へ向き直る。


「大丈夫か?今治してやるからな!」


 いつの間にか魔法の剣は消えていたが、このままいけば間違いなく致死量となる血が流れ出ている。


 俺は残り少ない魔力で回復魔法を使う。


「ヒール!……くっ!」


 魔力の使いすぎでくらくらする。しかもヒールでは回復が間に合わない。


部位再生(リボーン)!!ぐぅっ。」


 魔力欠乏による眩暈が増し、吐血する。これ以上は本当に危険だ。


 今度は魔法の効果も発揮され、胸の穴が埋まっていく。良かった、間に合ったかな。


 折角頑張ったから、生きてるといいな。






 ――その時、背後に気配察知が働いた。――




「いやー、あの爆発はやばかったなぁ!爆風だけで相当飛ばされたよ!あはははは!まさか僕の魔法が負けるとは思わなかったよ!一瞬ヒヤッとしたけど、慌てて爆発させて正解だったね!で、君何者?まぁ、何者でもそいつを庇う以上は死んで貰うからね!出来るだけ痛くないように頑張るよ!」




 目が回ってどんな表情かも分からない。今こいつが何をしようとしてきているのかも分からない。何を言ってるのかもよく分からない。

 だが、ヘラヘラ笑いながら俺と女を殺そうとしてるのだけは分かった。




 なんで、こんなことになったんだろう。


 此処で死ぬのかな。


 異世界で死んでも


 両親の元へといけるのかな。


 嫌だ。


 こんなとこで死にたくない。


 この子も死なせたくない。


 まだ、なにも出来ていない。


 なにも変わっちゃいない。


 こんなところで……





 

「死んでたまるか。」


「あ?死ぬよ。当然。」

 



「ウガァアァァァァーーーー!!!!!!!」


 これ以上魔力を練ったら死ぬかも知れない。魔法を放つだけで二度と目が覚めないかもしれない。


 でも、何もしなければどうせ死ぬ。


 きっとこの方が後悔しない。願わくば、この子だけでも死にませんように。


 MPがない。


 命を捧げて魔力を。


「ぐぁああぁぁーー!!!」

 

 重い。体が熱い。


 血が蒸発するようだ。


 動かない。動かしたくない。動け。


 心臓が、心臓が。焼け焦げていく。


 脳が震える、溶けていく。


 辛い。痛い。苦しい。寒い。怖い。


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


 死ぬ。死ぬ。死。




 それでも、


 もっと、


 もっと魔力を練らなくては間に合わなくなる。



 集中しろ。


 心臓の鼓動が聞こえる。早過ぎる鼓動が命の危機を知らせる。


 たぶん。もうすぐ静かになる音。


 頼むから。あと少しだけ。





「頑張ってるところ、悪いけどタイムオーバーだね。じゃあ、バイバーイ♪」


 男が剣を頭上に振りかぶる。


 今だ!!!!!



「ファイアーランス!!」


 俺は死ぬ気で練った魔力を節約(・・)牽制(・・)の為に放つ。それと共に頭上に魔力を集中させる。少しもミスは出来ない。


 気配察知が働く。予想通り背後に。サーチでも確認済みだ。

 

「残念だったね!なっ……グガァァアァー!!!!」


 魔力を少し放つと一筋の雷へと変わり、振りかぶった男の剣に落ちる。


 男は感電したが一瞬で痺れを無効化させる。でも、この一瞬で充分だ。俺は雷の魔力を全身に纏い、距離を取る。


「金色の…鎧だと……?」


 喋ってるのはいつでも殺せる自信からか。でもその余裕が足元を掬うんだ。


「ろ、ロックハンド。」

 

 本来ならこんな魔法に捕まらないだろう。しかし、男はガッチリ足を摑まれている。


 まずい。意識が飛ぶ。あと、少し。


「うるぁあぁぁあああーー!!!」


 両手を前に突き出し、すべてをこめた。


 20メートル幅の極太の光。触れた物を確実に消し炭にする為の超高温の魔法。


 


 もう。

 

 指一つ動かない。瞼もあかない。


 なにも感じない。


 これが最後の瞬間の…感覚なのかな。



 俺達は結界に包まれながら爆風に攫われた。




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