8-18 間食のモートン
「まさかこの広範囲を一発の魔法で修復し、しかも未知の魔法ときたか!!流石は魔族どもを軽く撃退するだけあるな!!」
軽くは撃退してないけどね。
適当に名付けたサカンアースだったが、アスファルトで舗装された美しい道路が完成してしまった。
試しに馬車を走らせると、土の道に比べて走り心地が余りに滑らかすぎて皆驚いていた。
「ハルトさんだもん!当然ですよ?」
「ご主人様すごーい!!シロの壊したのがもう直った-!!ありがとー!」
「この魔法……サカンアースと言ったな?」
「えぇ、そうですね。俺はそう呼んでます。」
「これだけの魔法だ…誰でも使えるわけではないな?」
「自分で考えて作った魔法なんで何とも。」
「確かに力のある者が独自に生み出した魔法は、教えられたからと言ってそう簡単に使えるようなものではないからな。この魔法があればハープルムは大きく変わるのだが……。」
別に教えたく無いわけでは無いんだけど、教えようがないんだよな。
その後王都の周囲を3人で見回ってみると、思っていたよりも戦いの余波は広がっていた。
それを出来る限り直していたら思ったよりも時間を取られてしまった。
ルカ、待たせてごめんよ。
☆
舗装職人の仕事が終わり、アイナは今回の件のことについて城で会議があるからとムーアさんに連れてかれてしまった。
最後までハルトさーんとか叫んでいたが、勇者なのにあんなんで大丈夫なのかな。面子や体裁など関係ないのだろうか。
その後念話でルカと連絡を取ると、夕泉亭に荷物を置きに戻ったところだったらしくそのまま夕泉亭で待ち合わせすることにした。
夕泉亭の前へ辿り着くとルカは既に部屋を出て夕泉亭の前で待っていた。
「ルカちゃんおまたへー!!」
「シロちゃん、ご苦労さまでした。どうでしたか?」
「ご主人様が一人であっという間に直してくれたのー!格好良かったよ-!!だいちよぉーわがいしにそいー!!ってやってたー!!」
やめろ!やめてくれシロ!!地球人にそれはきついぞ!!
「ハルト様、ご苦労さまでした。少し休みますか?」
「いやっ、全然大丈夫。買い物はどうだった?なんかストックしといたら良さそうなものとかあった?」
「はい。食べ物は新鮮なうちや暖かいうちにインベントリに入れた方がいいかと思い買いませんでした。日用品などは充分に買いそろえられたかと思います。それとこれは私のお金からですが、ハルト様にこれを買ってみたのですが、いかがでしょうか?」
見てみるとそれは腕輪だった。シルバーに赤い石が埋め込まれていて、戦いの為の装備というよりはオシャレの為につけそうなものだ。
早速つけてみるとサイズもピッタリで付け心地も悪くなかった。
「持ち合わせが余り無かったので高価な物は買えませんでしたが、願いが叶うと言われている赤のキルカイトが使われていたので買ってみました。」
「かっこいいなこれ!ルカ、ありがとう!!どうかな?似合う?」
「はい、とっても似合います。」
ルカは本当に気が利くし優しいし思いやりもあるし、最高の女性だな。
「あと、シロちゃんには新しいリボンと髪飾りを買いました。」
「シロにもあるのー?ルカちゃん優しい-!!!」
ルカはシロのツインテールにしているリボンを解き、新たなリボンを結ぶ。そして花のような形をした髪飾りを取り付けた。
「ご主人様-!!似合うー?ルカちゃんみたいになれたー?」
「あぁ、ルカみたいに綺麗だぞ。よかったな!」
「うん!さいこーだよー!!」
シロは嬉しそうに微笑み髪飾りをいじっていた。そういえばシロを人化させるのにルカの腕輪使っちゃったから買ってあげないとな。
☆
3人で食料を確保しがてら昼飯を済ませていると、通りには昨日よりも冒険者が多く見られた。
アイナが帰ったからそのせいもあるのだろう。
道も舗装したし、他に王都を離れるまでにやるべき事はあるだろうか。そんなことを考えているとあることに気が付いた。
王都襲撃の際に一役買っていた結界だ。
あれだけの機能をもった魔道具なのだから、そう簡単に作ったり直したり出来るもんじゃないだろう。俺達のせいで壊れたのでは無いが、あれはあった方がいいので直せるなら直しておこう。
後でアイナにでも確認しておくか。
そういえば王都を出たら何処に行くのかもまだ決めてなかったな。
「二人は王都を出てからどこか行きたい所とかある?」
「シロはプーの牧場かなぁー。プーソフト食べてみたいなぁ。」
プー牧場?そんなのあるのか?
「私はハルト様の行きたい所へ付いて行きます。」
困ったな。プー牧場に行ってもいいんだが、すぐに見終わって次の行き先をプーを眺めながら考えるようになってしまう。
これもまたアイナにでも相談してみよう。
「じゃあ行き先は後で考えるとして、この後はルカの腕輪でも見に行く?」
「腕輪ですか?」
「うん。シロの腕輪創るときに素材として使っちゃったから買いに行こうかなぁって。」
「シロもいく!ルカちゃんの腕輪貰ったから、お礼に一緒にえらぶー!!」
「じゃあ決まりだな。」
「ありがとうございます。」
「ご主人様-!!あれみてー!!モートンのステーキだってー!食べたいなー!!!」
「ずっと食ってたのにまだ食うのか?」
「まだ腹二分目だよー?」
食べたもんは何処に消えたんだよ。体の体積と食べた量が合わないだろ。
「仕方ないか。食えるうちに食えるだけ食っとくか!」
「やたー!!!ありがと-!!!」
仕方なくモートンのステーキとやらを食べていく事にし、屋台の前に向かおうとするとシロは一足先に駆けていった。
「おっちゃん!!モートンください!!」
「可愛いお客さんだな!うちのモートンステーキはデカいけど食い切れるか?」
「余裕だよー!!ご主人様-!何枚買って良いのー?」
声デカイな。すぐ着くんだからから待っててくれよ。
「シロは何枚食べたいんだ?」
「うーん、節約しなきゃだから……10枚!」
おいおい30センチくらいの肉が並んでるが、節約してこれを10枚かよ。
「ギャハハ!!面白い嬢ちゃんだな!よし、オマケで干し肉も付けてやるからな!」
「ありがとー!おっちゃん良い奴だなー!!」
「すみませんね。じゃあモートンのステーキ20枚分を持ち帰りでお願いします。」
「は?」
「あれ。もしかして在庫的に厳しいですか?」
「いや、そうじゃないんだが。個人の客にそんな注文受けたことが無いからな。20枚か……すぐに用意するぜ!」
デカイ鉄板にどんどん肉を敷き詰めタレをかけて焼いていく。焼いてるおやっさんの姿は本気だ。
まさに職人……そんなどうでもいいことを考えていると、案外早く焼き上がるようで最初の五枚が出て来た。
「ほぉ~、こりゃ上手そうだな。俺も少し食べよ。ルカは?」
「では少しだけ頂きます。」
「おやっさん、これカットして下さい。」
一枚分だけサイコロステーキのように一口サイズに切り分けてもらう。それを俺とルカで分け合って食べた。
シロはカットすることなく分厚いステーキに齧りついていた。それにしても幸せそうな顔で食べるな。
今後も食べたいので追加で更に10枚注文し、20枚はインベントリに入れ、シロは見事に9枚をペロリと平らげていた。
「ふぅ。幸せだなぁ~。」
「お嬢ちゃんすげーな!!異常なくらい良い食いっぷりだったぞ!兄ちゃん、銀貨6枚だが嬢ちゃんの幸せそうな顔見れたから値引きしてやる!銀貨5枚と銅貨5枚だ!」
おぉ!シロの満腹笑顔で5000円値引きか!やるなおやっさん!
「ありがとうございます!ほらっ、シロもお礼言えよ!」
「おっちゃんは最高のお肉マンだ!!絶対また来るからね-!!」
「おうよ!またいつでも食いに来いや!!」
でもステーキとはいえ1枚2000円は高いな。
モートンが何なんだか分からんが流通してる魔物なら多く生息してるだろうから、今度モートンサーチでモートンでも狩るかなぁ。
ストックは大分減りましたが、病気も快方に向かい始めたので執筆再開します!きゃっほーい!




