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8-16 怒濤の羊まんせー

手足口病になってしまい執筆活動停止のせいでストックが消えてしまいました……(=_=;)



「あはははっ!ド・ハシビロコウファミリーか!あいつらこそこそとそんなことやってたんだね!!」


「だからルカちゃんと2人でギッタンギッタンにしてきたのー!ルカちゃんの回し蹴り綺麗だったよー!!こうねー、ズバシューンッてお腹に当たって、おじさん折れ曲がりながら飛んでいって-、お尻から壁に刺さってたの-!!!」


「ルカの回し蹴りをお腹にくらうなんて想像するだけで吐き気がするわね!!」


「ハルト様の脅しも素晴らしかったんですよ?あの者ももう二度と王都へ戻りはしないでしょう。」


 昼飯を夕泉亭で食べた後、王都を散策して周り時間を潰した後にアイナと合流して晩飯を食べている。


 アイナがオススメする隠れ家的な居酒屋だ。


「ところでクェンティン達が襲撃してきた時、何で誰も向かい打つ奴がいなかったんだ?」


「それは私も気になって確認したら、単純に出撃出来る程の実力のある冒険者が王都を離れていたことと、結界が発動したために攻撃をするタイミングをうかがっていたみたいで。あとは襲撃が寝静まっていた時間帯だったからってのもあるんでしょうけど。」


 確かに地球で朝方地震来たときは起きるので精一杯だったな。


「そんなに王都の冒険者は少ないのか?」


「うーん……めちゃくちゃ言いにくいんですけどね。私がいなくなったせいで私の捜索部隊を用意したり、仕事の穴埋めなども仕方なく冒険者ギルドに発注していたせいで高ランクの冒険者が王都を離れていたそうなんです。すみません。」


「謝るなよ。それだけアイナの仕事が重要だって事だろ。それにヘタに出て来られてもやりにくいだけだから俺達としてはラッキーだったわけだし。」


「……今日は優しいですね。」


「今日はって何だよ。」


 思い返せばほんとに奇跡的なタイミングだった。あと一日ダンジョン攻略が遅れていたら王都は滅んでいただろうからな。


「そういえば聖教国は新たな勇者の選任を始めたらしいですよ?ハルトさんも立候補してみたらどうです?」


「勇者なんかやだね。俺は出来るだけ自由に過ごしたい。」


「シロはなってもいーよー?でもご主人様と一緒にいないと駄目だからなー。あっ、ご主人様の勇者になればいいんだ!!」


「そうですね。私達はハルト様を守る勇者になりましょうね。」


 2人の戯れは可愛いな。


 聖教国も早く立て直せるといいが、騎士団も壊滅したからな。中々険しい道のりだろう。

 俺がほとんどやったんだけどね。


「そういや剣は持ってきたか?」


「持ってきました!いま直してくれるんですか?」


「うん、やってみるから見せてくれ。」


「お願いします!!あにきー!!!」


「うるさい。兄貴じゃないし。」


 鞘から剣を引き抜くと真ん中からポッキリ折れていた。鞘を逆さにしてみると折れた剣先が出て来た。


「ムーアさんに伝えたら皆に伝えてくれて探してくれたみたいで。私が倒した女のすぐ傍に落ちてたらしいんです。めちゃくちゃ怒られましたけどハルトさんに直して貰えるって言ったら許してくれました!お兄ちゃん!ありがと!!」


「そんなデカい妹いないけどな。」


 兄貴をやめてお兄ちゃんできたか。シロに言われたらヤバそうな台詞だな。


 突然妹ぶるアイナのウインクを無視してマジック・クリエイトを発動させる。


 錬金術?とも違うか。聞いたこと無いけど修復魔法?まぁ何でも良いか。


 剣が元に戻るイメージ。傷だって戻るんだから出来るだろ。とか考えていたら魔力が剣に流れ出した。


「おぉ!まばゆいですな!!」


「ですなー!あー癒されるー。ご主人様の魔力ってなんか癒されるなー。」


 シロがよく分からない事を言っている。するとルカまで心地良さそうな顔をして目を閉じていた。何なんだ?


 剣を包んでいた光が消えると、すっかり元通りになった剣がそこにはあった。


「ハルトさん!!ほんとにありがとうございます!!!」


「王都の勇者を俺の敵と戦わせたんだから、これくらい当たり前だろ。」


 アイナははしゃいでシロの如く横から抱き付きタックルをかましてきた。


 油断して座っていた為、まともにくらってしまって椅子から転げ落ちてしまった。


「ぶふぉ!?」


 ……顔に異常に柔らかい感触が。アイナは着痩せするタイプだったか。


「サービスです。」


 そっと耳元でアイナが囁く。くっ!風の谷の秘宝よ、我の精神を守り我を導け。()でよ蟲笛!!!


 脳内でヒュンヒュン蟲笛を鳴らし煩悩を鎮め、どうにか平静を装って椅子に戻ることが出来た。


「いやー。久々に風の谷のお世話になったわ。」


「何ですかそれ。怖いんですけど。」


 お前のせいだろうが。



 晩飯を食べ終わると、アイナが話があると言い出した。ルカやシロは既に聞いていたようで先に夕泉亭へ戻ると言っていた。


「なんだよ話って。」


 まさか告るとかじゃないだろうな。


「まぁまぁ。少し歩きましょうよ。」


 店の前からアイナについて移動する。なんかアイナと二人きりってのはむず痒い変な緊張がある。


「そういえば、王都の後はどこに向かうんです?」


「まだ決まってないんだ。これから3人で相談して決める感じかな。」


「そうですか…。」


「なんだ、寂しいのか?」


「……。」


 アイナは返事しなかった。


 それからは沈黙のまま、アイナの歩いていく後を付いて行った。アイナも振り返ることもなくただただ歩いて行く。


 どうしたんだろうか。


 だんだんと気まずさは無くなってきたが、何かを思い悩んでいるのではないかと心配になってきた。


 王都の王城へと続くメインストリートを外れて歩いているからか、誰も声をかけてくることはなかった。


 やがて城がよく見える公園のような場所へ辿り着いた。そこで立ち止まったアイナは背を向けながらだが、ようやく喋り出した。


「ハルトさん。ハルトさんは怖くないんですか?」


「怖い?なにがだ?」


「全部です。」


 全部?どういうことだ?


「理解出来ない悪意に…私の大切なものが奪われてしまうのではないかとか、そんな時に私なんかの力でどうにか出来るのかとか。ハルトさんもルカもシロちゃんも……この先無事でいられるかなんて分からない。私……大切なものが多すぎて、突然どうしようもない不安に襲われる時があるんです。今回もハルトさんがいなかったらと思うと……わたし。」


 アイナの肩が震えていた。


 異世界へと突然放り込まれ、死に物狂いで生き延び、そして気付けば自分を助けてくれた人々を守らなくてはいけない大役を背負っていた。


 不安に押し潰されそうになりながらも、それでも気丈に振る舞っていたんだな。


「ガンチュー、ダサっ。」


「……ひどい。いまそういうこ「アイナ。」…!?」


 いやらしい気持ちはほんとに無い。ただ独りで震えているアイナの不安を少しでも落ち着かせてあげたくて、後ろから強く抱き締めた。


「アイナは強いよ。勇者になれるくらいだし、俺達もアイナの強さは認めてる。でも、心はやっぱり羽有藍那のままなんだよな。」


「……。」


「ひとりぼっちで異世界に突然連れて来られて、がむしゃらに生き抜いて。大切なものもたくさん出来て、それを守る勇者になって。………一人で背負うには荷が重すぎるよな。」


「うぅぅ…ぐすっ…。」


「でもさ。いつからアイナは独りで戦ってるんだ?」


 アイナの肩を掴んで振り返らせる。涙でぐちゃぐちゃになってんじゃんよ。


「当たり前のような事を言うけど……アイナと同じようにアイナのことを守りたい奴だって沢山いると思うよ。俺だってアイナのことを守りたいし、アイナが大切にしてるものも守りたい。だからってアイナの不安な気持ちが分かるって言ってるんじゃなくて。うーん、何て言ったらいいか分からないんだけどさ………いつか必ず俺が地球に連れて行くから、それまでは一緒にこの世界を…大切なものを俺達の手でどうにか守り切ろう。な?」


「ふぇぇ~~ん。」


 アイナは俺の胸に顔をうずめて泣きしだした。


「鼻水つくだろー。」


 そう言いながらもアイナの頭を撫でて落ち着かせる。


 挫けないで頑張ろう、アイナ。


 少しそのままにしていると、やがてアイナは泣き止んだ。


「落ち着いたか?ほんとに鼻水つくからいい加減離れろよ。」


「やだ。もう少し。」


 タメ口かよ。いいんだけどさ、突然距離が縮まった感じがして少し照れるな。


「ハルトさん?」


「ん?」


「私……ハルトさんのことが好き。」


「ふーん。」


 ふーん。とか言ったけど、脳内はあわあわしまくっていて、パニック状態で何も考えられていない。これはメダパニをどこかで使った奴がいるな。


「嘘じゃ無いよ?ほんとに好き。ルカにも伝えたの。」


「そうなんだ。」


 今の、そそそそそそうなんだとか言ってないよね?俺落ち着いた雰囲気だったよね!?


「ルカは私の本気の気持ちを伝えたら、皆でハルトさんを愛せば良いって言ってくれた。ハルトさんはそれじゃだめ?私なんかじゃイヤ?」


 ヤバい、怒濤の羊だ!羊じゃない!これは怒濤の言葉攻めだ。どう捌いたらいいんだ?!こんな経験ないからわからん!!


「は、はーれむまんせい。」


 なにテンパって訳分かんねーこと口走ってんだバカヤロウ!!!!


「やった!万歳ってことはOKってことでしょ?ハルトさん、だいすき!!!」


 まだパニクっていて、まんせーしか言えない俺を捨て置いてアイナは自己完結して抱き付いてきた。


「あ、あぁ。」


 最早精神が追いつかない。現実が精神を高速で置き去りにして行きやがった。そもそもアイナのような美人が俺なんかに告白とかおかしいだろ。


 ていうか、まんせーってなんだよ。


 石化したかのように固まってしまった俺の横にアイナは移動した。


「ハルトさん、私を守ってくれてありがとう。私……頑張るね。」


 そういってアイナは俺の頬に軽いキスをした。



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