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8-15 ド・ハシビロコウ



「ド・ハシビロコウファミリー?」


「そうよ…。1年位前から王都に拠点を構えたろくでもない組織よ。私を奴隷にして売る予定だったみたい。」


「王都は奴隷を禁止してるんじゃないのか?」


「もちろんバレないようにやってるに決まってるじゃない。兵に伝えたところで証拠なんて残さないから、後で報復されるだけなの。今じゃ好き勝手やってるわよ。」


「なるほどね。それで何でこいつらに捕まったんだ?」


「何に使うかは分からないけど、両親のやってる宿屋を譲れと脅してきたのの。」


「それを拒んだらこれか。」


「そう。お父さんとお母さんに暴力を振るって、私を無理矢理攫おうとしたのよ。」


 やはり悪はどこかしらで暗躍するもんなんだな。王都程の大きさだとそれもやりやすいってところか。


「ハルト様。」


 今さっき態度の悪い一般人をボコったばかりのルカが視線を向け訴える。

 分かってる。普段はクールなのに、全くもって熱い娘だ。


「そうだね。ド・ハシビロコウファミリーとやらを潰そうか。」


「ご主人様、シロも踏み潰すよー!!跡形も無くー!!」


「ちょっ!あんた達ばっかじゃないの?!相手はド・ハシビロコウファミリーよ?金に物を言わせて強い用心棒を沢山雇ってるのよ!!無理に決まってるじゃない!!!」


「サーチ。」


 俺はド・ハシビロコウファミリーの奴等を限定したサーチで探す。するとマーカーが一際集まっている建物が特定出来た。



「はいー。ということでやってきましたド・ハシビロコウファミリーの隠れ家です。」


「ハルト様、先行致します。」


「えー、シロも活躍したいー!!」


「だめだこりゃ。何なのよあなたたち…。」


 俺達は路地裏からド・ハシビロコウファミリーの隠れ家へとやってきた。


「王都の冒険者や騎士団が束になってもこの2人には勝てないから安心して待ってろ。マジック・クリエイト。」


 俺は黒くてテカテカしてて動きの速い恐ろしい奴ホイホイ的な役割の結界を張る。要するに外からは入れても中からは出れないタイプだ。


「俺はこの子を守ってるから今回は2人にお願いするね。」


 そろそろ暴れたい頃合だろうし。


 俺がそう言うと2人は即座に建物へ入っていった。そして5分も経たずして制圧したようで、全身悪趣味な装飾品で着飾った肥った男を引き摺って出て来た。


「は、離しやがれ!!てめぇら俺が誰だか分かってんのか!!!」


「どうも。お前が頭か?」


「そうだ。俺様がド・ハシビロコウ様だ!!わかったらとっとと離しやがれ!!じゃねーと、痛い目に遭わせるぞ!!!」


「ハルト様の御前です。死にたくなければ黙りなさい。」


 ルカは氷の剣を首筋に当て脅す。でも黙られちゃうと困るんだけどね。


「おい。この子の……あー、そういえば名前聞いてなかったな。」


「このタイミング?……ミーナよ。」


「ミーナの両親の宿屋に用があるようだが、どんな要件だ?」


「てめぇには関係ねぇだろ!!」


「確かに……じゃあ面倒な話し合いはやめてド・ハシビロコウファミリー全員処刑して終わらせるか。いやー、助かったよ。実際全員消した方が話は早いからな。ありがとな、ボス。」


「わ、分かった!!要件だな!あの土地が欲しいだけだ!金だって払うって言ったんだぜ?それなのに譲りやしねぇ!!だから代わりに娘を金にして許してやる事にしただけだ!!」


「なるほど。話は分かった。マジック・クリエイト。」


 俺は魔力を練りイメージを創り上げる。


「ミーナの半径10メートル以内に近付くことを禁止する。お前の仲間もだ。それとミーナとその家族に対して直接でも間接でも悪意ある行動をすることを禁ずる。もちろん仲間もな。」


 ド・ハシビロコウの額に人差し指を突き付け軽めの覇王の威圧を放ち、創り上げた魔法を発動させる。

 演出は大事だ。ついでにホクロが残るようにしよう。


「禁ずるって……破ったらどうなるんだ?!」


「そのホクロが…ボンッ……だ。ということで悪いことは言わないから王都から消えろ。俺は嘘は言わない。だが信じるも信じないもお前の自由だ。伝えたからあとは自己責任で頼む。」


「ひっ!!ひいぃぃぃー!!!」


 ド・ハシビロコウは悪党の頭とは思えない程に狼狽して何度も転びながら走り去っていった。

 アカデミー俳優も真っ青の最高の演出だったからな。


「ド・ハシビロコウが逃げ……た?」


「おう。もう王都には来ないと思うし、来てもミーナや家族には何も出来ないから安心しろ。」


「ほんとに?」


「ハルト様は嘘はつきません。断言します。」


「ご主人様は凄い人なんだよー?色んな人を助けてくれるヒーローなのー!!!」


 それは誤解を生みそうな言い回しだな。俺はあくまでも自分にとって大切な存在を守ってきただけで、他は気分だ。そんな自分勝手なヒーローいないだろ。


「ヒーロー?」


 ミーナの方を見ると目がキラキラと輝いてしまっている。シロめ、余計なことを。


「ハルトさん…ですよね。ほんとにありがとう。この恩は一生忘れません!!!!」


「忘れてくれて構わないから、一つ頼みを聞いてくれ。」


「うん!」


「宿屋を探してるんだが……高級じゃなくて庶民的な宿屋を知らないか?知ってたら教えてくれ。」


「あぁ……じゃあ気に入るかは分からないけど、うち見てみる?一応冒険者が良く泊まるような所だし、高級というより明らかに庶民的だから。お眼鏡にかなわなかったら他を紹介するし。」


「じゃあこれでチャラだな。手当たり次第探すのは大変だから助かるよ。」



「はいー、ということでやってきましたミーナの宿屋です。」


「何言ってんの?両親に説明したいから早く入ってよ。」


 一っ飛びで辿り着いた感を演出してるってのに何だその冷めた反応は。ミーナは仲間には入れられないな。


「夕泉亭ね。あまり響きは良くないけど、外観はバッチリだ。」


「……助けられてなかったら殴ってるところよ?」


 ミーナは青筋を浮かべながら微笑む。


 夕泉亭の扉を開き中へ入ると想像していたよりも広かった。カウンターの横には階段があり、同じ空間に食堂となっていた。上の階が部屋になっていて、1階は受付のカウンター以外全て食堂のようだ。


 まさに冒険者御用達って感じだな。


 しかし食堂は真っ暗で人の気配すらない。大丈夫か?


「いいぞミーナ。まさに俺の理想だ。」


「ふふっ、ありがと!おとーさーん!おかーさーん!!」


 ミーナが大きな声で両親を呼ぶ。だが、両親が出て来る事は無かった。


「まぁ当たり前か。ミーナを探し回ってるんだろう。両親のフルネームを教えてくれ。」


 サーチで出来る範囲が分からないが、マジック・クリエイトならそれも可能だろうと思い、名前からサーチで居場所を探すことにした。


 すると二つの動き回るマーカーが現れた。


「門の近くにいるな。行ってみるか。」


 マーカーを頼りにミーナを連れて歩いて行く。するとマーカーがすぐそばまで来たところでミーナが叫んだ。


「お父さん!!お母さん!!」


「…!?ミーナ!!!!!」


 両親はミーナを見つけるとすぐに走り出し、一目も(はばか)らずに抱き締めわんわん泣き出した。


 愛娘が奴隷にされるかもしれない瀬戸際だったんだから当然か。

 あっ、涙腺がヤバい。涙もろい奴にはきつい絵だな。



「この度はミーナだけでなく私達の宿まで守って頂いたそうで、本当にありがとうございました!高名な冒険者様かとは思いますが、是非ともうちに泊まっていって下さい!!」


「うちは大した宿屋ではないのですが、精一杯お持てなし致しますので寛いでいって下さいね。」


 ミーナは両親との感動の再会を果たした後に俺達との出会いから今までのこと、そして宿屋を探していることを伝えてくれた。

 ミーナの両親は全身に打撲を負っていたので、すぐに怪我を治してあげた。


「ご飯たくさん食べれる-?」


「もちろんですとも!!好きなだけ食べてくださいよ!!」


「いやっ、それは申し訳ないですけどお断りします。一人前以外は出さないで大丈夫です。」


「そうですか……残念です。」


 俺がまるで食事を嫌がってるかのように見えたようで、意気消沈していまった。

 一夜にして宿屋が潰れてしまったら折角助けた意味が無くなってしまう。


 昼飯を食べているとミーナの両親が俺の元に来た。


「お食事中すみませんね。今回の件で、今日は他のお客さんはいません。好きなだけ部屋を使って頂いて構いませんが準備もありますので部屋を決めて頂いて宜しいですか?」


「部屋は3人部屋以上ね-!!一部屋じゃないとだめだよー?」


 すると二部屋でお願いしますと言おうとしていたのだが、シロが持ち前のスピードを活かして決めてしまった。


「かしこまりました!では、ごゆっくりしてって下さいね!」


 はい確定。今から睡眠のことを考えて、ルカがセクシー過ぎない事を祈ろうか祈るまいか悩ましいところだ。


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