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8-11 非常警報発令



 クェンティンを倒し合流した俺とルカは、シロとアイナが心配なので急いで王都へと飛んで戻っていく。


 すると王都から離れた野原にアイナが座り込んでいるのが見えた。


 何かあったのだろうか。


「アイナ、大丈夫か?」


「あ、ハルトさん。へとへとになっちゃいましたけど……体は大丈夫です。それよりも私の勇者の剣が折れちゃって。それがショックでヘコんでるんです。心が怪我してるんです。」


「いやっ、剣よりも左手だろ!うわっ、痛そ-。すぐに治すからな。」


「あぁ、これなら回復魔法かけたんで死にはしないですよ。痛いですけど。それより剣がぁ~。」


 アイナ……左手よりも脳がやられてしまったのだろうか。


 とりあえず脳が壊れてしまったアイナを無視して、左手が無くなってるのを部位再生(リボーン)で治す。


 魔法を発動させるとアイナの腕が光に包まれ、光が消えたときには腕が元通りに戻っていた。


「あっ!凄い!!!やっぱり持つべきものはハルトさんだなぁ。………はぁ。」


 折角腕を治してやったのにアイナの表情は優れない。よっぽど愛剣が折れたのがショックだったのだろう。


「アイナ、剣も直せると思うから元気を出せ。とりあえずシロと合流して安心したいから今は我慢して先へ行こう。」


「確かに。シロちゃんの事が心配ですね!行きましょう!シロちゃんの所へ…急ぎましょう!……あ、あれ?だ、駄目だ。立てないや……。」


 アイナはかなり壮絶な戦いだったのだろうか。魔力も殆ど使い、魔力欠乏の症状も少しだが出てしまっているように見える。


 するとアイナが突然予想だにしない発言をしてきた。


「ハルトさん……おんぶ。」


「アイナ、私が背負いましょうか?」


「やだ。ハルトさんがいい。おんぶ……おんぶを求む。いつもルカばっかずるい。私もおんぶして下さい。」


 アイナが珍しく俺に本気で甘えてきたのを見て、ルカは少し困ったような表情を浮かべていた。

 だけど、それを咎めるような事を言わなかった。


 むぅ。甘えさせてやれってことか?


「はぁ。今回は頑張ったみたいだから特別だぞ。」


「やたー。」


 やたーと言うのも精一杯のようだったので、仕方なく俺が歩み寄りアイナを抱き上げる。


「ひゃ!お、お姫様だっこ?!おんぶ!おんぶでいいです!」


「うるさいぞ。こっちの方が何かあったとき対応しやすいからこうしただけだ。」


「そ、そうですか。じゃあ………お願いします。」


「おうよ。」


 本当は余計なものが背中に当たると煩悩に悩まされるので、それを回避するためにお姫様だっこにしたのだ。


 抱き上げながら集中して魔力をアイナに譲渡していくと、アイナとふと目が合った。


 恥ずかしそうに頬を染めながら俺を見上げるアイナは途轍もない破壊力を持っていた。


 ウゥ~、ウゥ~。


 アラートだ。脳内でアラートが響いている。


 脳内のリトルハルトにお知らせ致します。只今の警報音は確認の結果異常がありませんでした。ご安心下さい。


 自分自身に誤報だと言い聞かせ平静を装い、周囲への注意力が明らかに散漫になりながらもシロの元へと向かうのだった。



「あれ?シロのやつ結界の中にいるぞ。」


 王都の近くまで戻ってきてサーチでシロの居場所を探ると、結界を守ってる筈のシロが結界の中にいた。


「魔族達はいないようですが……シロちゃんに何かあったのでしょうか。」


「さすがにシロちゃんにそれは無いでしょー。」


 確かに多少強いくらいではシロが負けるなど有り得ない。


 だが、リロイ・フェアリーフェイクの幻術のようにシロの天然な部分を攻められるとやられる可能性もあるだろう。


 しかもクェンティンの第一夫人になれる奴が相手だったんだから、狡猾な相手でもおかしくはない。


「まぁ行けば分かるか。」


 そういって王都の大きな門の前へと降りていく。


 すると結界の中からゾロゾロと沢山の人が飛び出してきた。


「勇者だ!勇者アイナ様が戻ってきたぞぉ!!」


「アイナ殿、よくぞご無事で!!」


「勇者様-!!」


 よく見るとみんな同じ鎧を纏っている。王都の騎士団か何かかな。


 するとアイナを囲む鎧野郎共を掻き分けて一人の女が走り寄ってきた。


 同じ形の鎧なのだが一人だけ色が違うな。お偉いさんか?


「アイナ!!」


「あっ!ムーアさん!!」


「アイナが戻り、巨大な化け物と戦っているとマシスから聞いたのだ!きっとアイナなら生きて戻ると信じていたぞ!」


「ありがとうございます!何とか帰って来れました!!」


 二人はガッチリと握手を交わす。ムーアと呼ばれる女は顔は可愛い系なのに立ち居振る舞いが凛々しく格好良い。


 姫将軍か?


「ムーアさん!私の仲間知りません?シロちゃんって名前で小さくて可愛くて強い子なんですけど!」


「シロ殿なら中にいるぞ?」


 シロ殿?シロには似つかわしい呼び方だな。人違いじゃないだろうな。


「シロ殿?シロちゃんですよ?」


 アイナも同感らしい。


「シロ殿には王都を守って頂いたのだ。いくら年が若いと言えども礼儀は尽くさねばならん。そこの二人もアイナの仲間か?」


「相変わらずムーアさんはお堅いですなぁ!二人とも大事な仲間?です!とりあえずシロちゃんの所へ先に行っていいですか?自己紹介は皆が揃ってからにしましょう!!」


「あぁ、では着いてこい!」


 そう言うとムーアは歩き出した。未だ続くアイナを呼ぶ声援を後にして結界の中へと入っていく。


 すると巨大な門を潜ったすぐ脇に騎士団の詰め所があり、その奥には兵舎のようなものが見えた。


 兵舎の戸を開き中へ入っていくと食堂へと通され、シロがテーブルの前に座っているのが見えた。


「あー!!!ご主人たまぁ-!!!!」


「シロ!良かった!無事だったんだな!!」


 シロはイスから降りるとスーパーダッシュで抱き付いてきた。いやっ、これはトライだ。俺をトライするつもりだ。


 吹き飛ばされるのを踏ん張ってキャッチする。するとシロは俺の胸元へ頭をグリグリ擦り付けてから顔を上げて微笑む。


「うん!シロ沢山頑張ったよー!!えらいー?」


「あぁ、偉いぞ!シロの所に強い奴がいったのを聞いたから心配してたんだよ。敵も多かったみたいだしな。」


「エーシェン強かったー!でもシロはもっと強かったー!!」


 褒めてやりながら頭を撫でてやると、シロは気持ち良さそうな表情をしながら再度胸に顔を埋める。


 可愛いな。ほんとシロは可愛いやつだ。

 

 

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