8-6 嫁№1現る
「ちゅりゃ!あー、また出て来たー!!」
全部倒してから影のこと考えようとすると直ぐに湧いて出て来る。もう飽きてきたから倒しながら考えよう。
「ちゅりゃ!うーん…てりゃ!うむむ…とりゃ!」
倒しながら考える作戦を実行してみて分かったこと……全然集中出来なくてだめー。
「もぉいーやー!!割っちゃえー!ちゅりゃ!!!!」
考えるのが面倒になったから、地面を殴って影を壊す作戦に決めた。
早速魔力が浸透するように殴ってみると地面はバッキバキになって、黒い影は蒸発するみたいに消えていった。
「せいこーだぁー!これでいこー!!次は~バーーンッ!!!!!」
今度は最初みたいに遠慮しないで、全力で魔力を込めて殴り付ける。
すると殴ったところを起点に地面が波のように隆起してひっくり返っていった。
「やたー!!!だーいせーいこーう!!!!!……あれー?」
地面はどんどんとひっくり返っていき、影を越えても止まらなかった。
「もしかして……シロ怒られる-?」
慌てて走っていき、反対側から同じようにパンチするとようやく止まった。
「むむぅ。難しいなー。でもご主人様がきっと治してくれる-!!!結界から離れちゃったー!また戻らなきゃ!!」
再度慌てて街の門の結界の前に戻る。するとまた兵士おじさんが話し掛けてきた。
「つ、強いんだね。流石は勇者アイナのお姉ちゃんだな。」
「シロはアイナよりもずっと強いからね-!ご主人様はもっともっともぉーっと強いよー!」
「はぁ?!……き、君より強いのか?」
「当たり前だよー!!」
「そ、そうか!……因みにご主人様という方は勇者アイナのように良い人族かい?」
「ご主人様は1番優しいよー?ルカちゃんも1番優し-!!ルカちゃんはシロと同じくらい強いの-!!!」
「はははっ……勇者アイナが1番下なんだね。まぁ、地面殴っただけで魔族を全て倒したのを見せられたら信じるしか無いが。」
「ご主人様さいきょー!!大好き!!!強いのに可愛いの!!」
シロがご主人様の良いところをどんどん並べていこうとすると、誰かが近寄ってきた。
「全ては討伐してないわ。ね?…そして最強はクェンティン様ですよ?…間違いだらけなので訂正して?ね?」
声のした方へ振り返ると浅黒い肌に角が二本生えている綺麗なお姉さんが立っていた。
黒っぽい髪に所々白髪が束になって三つ編みにしてある。
「お姉ちゃんおしゃれだねー!!」
「あら?小さなお嬢さんは悪い子だと思ってたら良い子だったの?」
「髪が綺麗だし、顔も綺麗~!!おっぱいもアイナみたいに小さくない-!!」
「ありがとう。でもこれ以上誉めては駄目よ?あなたを殺したくなくなっちゃうから。ね?」
「シロを殺すの-?」
「そうなの。ごめんなさいね?」
「シロはご主人様といたいから死にたくないなー。」
「そうよね。死にたくないわよね。じゃあクェンティン様の所へご主人様と謝りに行って、皆で仲良く暮らしましょうか。ね?」
「あれー?……だめ!!!それはだめー!お姉ちゃんはご主人様の敵だからむりー!!」
そこで兵士おじさんが割り込んできた。
「貴様……只者じゃないな。君、そいつは今までの奴とは違うぞ!気をつけろ!!」
「知ってるよー?このお姉ちゃん強そうだよねー!!」
「あら、あなたは本当に良い子ね。クェンティン様に伝えたいから名前を聞いてもいいかしら?ね?」
「シロはシロだよー?」
「シロちゃん?私はエーシェン。クェンティン様が目覚めて最初に出会ったのよ。だからクェンティン様のお世話係の代表をやってるわ。ラッキーでしょう?今のシロちゃんに夜伽は無理でも、もう少し大きくなるまでクェンティン様は待って下さるわ。だから安心して付いてきて。ね?」
「エーシェン?話が長くて名前しか分からなかった-。お姉ちゃんはご主人様の敵だから、シロはだーめー!!ご主人様といたいからむーりー!!」
「残念だわ。そんなに可愛いのに。本当に駄目かしら?あなたを引き取りたいの。ね?」
「おしゃれ美人でもだめー!!悪者はきらーい!!」
「そう。じゃあ死んで。ね?」
おしゃれお姉ちゃんのエーシェンは髪を逆立てながら宙に浮いた。
エーシェン切り替え早いー。
エーシェンは背中に背負っていた鞭を取り出す。鞭は革じゃなくて柔らかい剣みたいだった。
なんで金属なのに曲がるんだろ。不思議だなー。
「とぉっ!」
エーシェンが鞭を打ってきたからジャンプしてギリギリで交わす。
鞭の破裂音が耳元で響く。
「動きが早いのね。」
「エーシェンも鞭じょうずー!!とりゃ!!!」
地面を殴って石礫を飛ばして意識を逸らす。その間に背後に回ってキックだ!
アイナに教わった技だ!アイナにやってみたら石で死ぬからって凄い怒ってた。
「そんなつまらない手段じゃダメよ?」
石礫はエーシェンの手前で皆止まってしまっている。すると石礫は背中に回ったシロめがけて飛んできた。
「とーう!!」
石礫を避けるために後ろに跳ぶ。クルクル跳ぶ。かっこいーから。忍者だから。
「鞭はこういう使い方もあるのよ。」
クルクル回ってたのが空中で突然止まった。
足を見てみると鞭が絡みついてた。
クルクル回ってたけど、シロ凄く早いのになぁー。凄いなー。
「潰れて。ね?」
「うにー!」
エーシェンは鞭を強く引き、シロは地面へと叩き付けられた。
「グララム。」
「あれれ?なんか……重い-?」
叩き付けられる直前に鞭が黒く光ってたのが見えた。多分あれだなー。
「重いでしょう。これはね、どんどん重くなるの。そして直ぐにあなたは潰れて死ぬのよ。怖い?」
「怖くないよー?」
「っ!?離しなさい!!!」
シロが鞭を掴み神力を流すと、鞭の色が元の銀に戻っていく。
それを見たエーシェンは驚き慌てて鞭を無理矢理引っ張って離れようとしていた。




