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8-3 レヴィアデモン



 よくも、よくも、よくも。


 王都にこんなことを。


 ハルトさんがいなければ、王都は確実に滅んでいた。


 私を救ってくれた王都に住む皆が死んでいた。


「その瞳が何より好きよ。憎しみに満ちた瞳がこの世で一番美しいの。そんなにこの都が大事なのかしら。」


「黙れ。」


「そう。言葉は要らないのね。でも言葉は大事よ?あなたを理解出来なかったが故に間違えて王都へ魔法を落としてしまうかもしれないわ。」


「ふぅ。」


 危なっ。……安い挑発に乗ってしまったら相手の思うつぼ。出来るだけ我慢しなきゃ。


「あら、落ち着いてしまったのね。やるじゃない。」


「ハルトさんの日頃の口擊(挑発)のおかげで免疫がついてるの。あんたは挑発に関してはまだまだね!!小細工はやめてとっとと始めるわよ!!」


「ほんとに可愛いわ。じゃあ望み通り小細工はやめて戦いましょうね。でもその前に名前を聞いてもいいかしら?」


「ハープルム王国の勇者、アイナ・ハーリー!」


「あら、勇者だったの。オルタネイトには悪いけど当たり引いちゃったみたいね。私はシャルナ・ラナークレヴィア。種族は少し変わった魔族みたいなものよ。宜しくね、アイナちゃん?」


「少し変わった魔族ねぇ……あんた上級魔族以上なんでしょ?」


「半分正確。昔は魔将だったこともあるわ。でも仕えていた魔王が死んだから何の階級も無いただの魔族よ?」


 魔王が統治する魔国は完全実力主義らしく、階級が上に行くほど強くなっていくらしい。


 魔将といえば魔王率いる軍の統率者だったということ。要するに強い事間違いなしって事ね。


「魔将だったことがある女がただの魔族だなんて謙遜し過ぎでしょ。でも少しだけやる気が出て来たわ!」


「あら、褒めてくれるのかしら?嬉しいわ。これはもっと褒めて貰うために頑張らなくちゃいけないわね。」


「いちいちイライラする女ねー。」


「うふふっ、嫉妬する女にはよく言われるわ。では始めましょう。……オルフラルマ。」


 シャルナが何かを唱える。


 すると見る見るうちに全身が硬い鱗の様な物で覆われていく。


「……ドラゴニュート?」


「うふふっ。私はドラゴニュートじゃないわ。私以外見たことがないから名前は無いのだけれど……そうねぇ、レヴィアデモンって感じかしら。」


大海龍(レヴィア)?……まさかリヴァイアサン?」


「そうともいうわ。レヴィアタン…あなた風に言うならリヴァイアサン魔人ね。素敵でしょ?」


 リヴァイアサン……レジェンドクラスの魔物。そんなものを体に宿しているのなら魔将というのも頷ける。


 ヘタしたら魔王と遜色ない強さを持っている可能性もある。というか魔王でもおかしくない。


「前言撤回しまぁーす!少し所か俄然やる気が出て来たわ!!!女勇者改の力見せてあげる!!!」


「えぇ、是非お願いするわ。」


「ホーリースラッシュ!!」


 手札は出来るだけ隠して様子を見ることにしよう。とりあえずは魔族に有効な光系統の剣技を飛ばして牽制する。


 シャルナが腕で防ぐと甲高い音がしただけでホーリースラッシュは弾かれてしまった。


「流石勇者様ね。下級魔族なら容易く消されていたのでしょうけれど、私には効かないわ。」


 魔族に最も有効とされる光属性の攻撃でさえ無視できるほどの硬度を持っているようだ。


 剣技を防いだ腕にはいつの間にか鮫の背鰭のようなものが生えていた。


「これ?うふふっ、私は体が武器だから剣なんていらないの。素敵でしょ?」


 妖艶な雰囲気を漂わせながらシャルナは微笑み、そして走り出した。


「くっ!!」


 シャルナは腕に生えた鋭いヒレのようなもので絶え間なく攻め続ける。


 スピードもパワーも半端じゃない。


 ダンジョンに行ってルカとシロちゃんに鍛えられて、そしてハルトさんに付加を貰えて無かったらこの猛攻に耐えられず既に死んでいただろう。


 仕方なく短距離転移で一旦距離を取る。


「それだけ強くて、どうしてヴァンパイアの下にいるの?」


「下?勘違いしないでほしいわ。クェンティン様とは常に対等よ?」


「だったらなんで……。」


「単純に私より強い人が好きだからよ?でも、さすがに何も出来ずに負けるなんて思わなかったわ。それ程クェンティン様は強いの。だから妻になったのよ。」


 シャルナが簡単にやられる?そんなにあのヴァンパイアは強いというの?


 ハルトさん、大丈夫かな。


 不安が脳裏を過ぎるが、ハルトさんが負けるのは微塵も想像がつかない。


「でも…残念だけどヴァンパイアはハルトさんには勝てないわ。そしてあんたも私が倒すわよ!!!」


「………それは可愛くないわね。クェンティン様は最強よ。それは決して揺るぐことのない事実。クェンティン様はハルト・キリュウに勝つ。だから私も決してあなたに負けるわけにいかないの。」


「だったらハッキリさせるしかないわね。」


「そうね。じゃあ遊びは終わりにしましょう。マリズエリカルマ」


 怒気と共にシャルナは魔力を高めていく。それはまるで爆発のようだった。


「なっ!?」


 魔力の爆発の後、私が見たものはレヴィアタンの姿をしたシャルナだった。


「ルゥアァァァーッ!!!!!!」


 シャルナは口からレーザー光線のように高圧の水を吹き出す。


 剣で受けるが、剣が吹き飛ばされそうになって慌てて転移する。


「転移ッ!!…って何で威力が変わらないのよー!!」


 転移した先にシャルナはすぐに首を振って狙いを定めてきた。


 高圧の水の魔法は距離が開けば弱くなる筈なのに、シャルナの水は威力が落ちていなかった。


「どういう理屈なのよ!」


 何とか転移を繰り返して上手く背後を取ることが出来たので溜めていた魔力を放ち強力な剣技を繰り出す。


「ウルスラッシュ!!!!!」


 中距離攻撃最大の剣技であるウルスラッシュ。


 間違いなく威力も上がった剣技だったのにも関わらず、ウルスラッシュはシャルナの首筋に当たると弾けてしまい、シャルナは何事も無かったかのように振り返った。


 そしてまるで何かしたのかしら?とでもいうように首を(かし)げ、気付けば巨大な尻尾が目の前に迫っていた。

 


 

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