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7-18 到着前夜




 試しにアラシヤマを鑑定で状態異常を調べてみると失明と衰弱が表示された。

 生まれた時から目が見えないのか、病気かなんかで失明したのかは分からないが、それが原因で餌が取れない為に衰弱しているのだろう。


 こいつの親はどこいったんだ?そもそもアラシヤマってどうやって生まれてくるんだ?


「こんなデカくっちゃ飼えないな。それよりこいつ目が見えないみたいだ。しかも衰弱しているらしい。」


「えーっ!可哀想だよー。ご主人様何とかして-!おねがいー!!!!」


「シロ、所詮この世は弱肉強食。強ければ生き、弱ければ死ぬんだ。」


「だめー!カメッシーは好きだからやー!!!!」


 珍しくシロが本気のわがままを言っている。成長したのかな。親心ってこんな気持ちなのかな。


「ハルトさん、パクってふざけてる場合じゃないですよ。シロちゃん泣いちゃいますから。」


 くっ。アイナは地球出身なのを忘れていたぜ。


「ルカ、この世界で野生の魔物を助けてやるのはアリなのか?」


「本来魔物は害をなすものです。弱っていれば運が良いと考えるものでしょう。見逃すことは有るかも知れませんが、冒険者ならば幼体でも見逃しはしないはずです。しかし、シロちゃんが気に入ってしまっていることですし、人里も近くには無いようなので今回だけと約束して助けて上げてはどうでしょうか?」


「なるほどな。わかった。」


 ルカも助けて良いんじゃないかと言うので、仕方なくアラシヤマを助けてやることにした。


 失明は部位再生で治るだろう。衰弱は回復魔法とさっきからシロとアイナを襲って返り討ちにあってるデカイ魚達をエサにすればいいか。


 考えがまとまったので早速アラシヤマに魔法を放つ。


「ご主人様-?助けてくれるの-?」


「あぁ、助けてやる。すぐに目が見えるようになるだろうから、浮いてる魚を甲板に集めといてくれ。」


「やったぁー!!!ご主人様ありがとー!アイナーいくよー!!」


「お礼はルカに言ってくれ。」


 シロがルカにお礼を良いながら魚の魔物を集めていると、アラシヤマの様子に変化が現れた。


 先程までのぐったりでボーッとしていた姿とは違い、キョロキョロと首を振って周囲を確認しているようだ。


「カメッシー?ママだよ-!!!ママこっちー!!!」


 ママ?シロはママなの?


「キャルルルー。」


 呼び声を聞いたアラシヤマはシロの元へ顔を寄せて甘えたような声をあげた。


 え?もしかして刷り込みですか?


「ハルト様、わがまま言ってすみません。」


「気にしないで。片足も無くしてたみたいだから、ついでにそれも治しておいたよ。シロも嬉しそうで良かった。」


「そうですね。シロちゃん、お母さんになってしまいましたね。」


「そうだな。」


 その後シロとアイナとアラシヤマは日が暮れるまでひたすら湖で遊び回っていた。



「うぇーん、カメッシー!離れたくない-!カメッシー!!」


 日も暮れてきたのでそろそろ出発するから飛空艇に戻れと言うと、別れを惜しんで号泣しだしてしまった。


 シロ……ではなくアイナがだ。


 何故アイナが其程までに悲しんでいるんだ。素材を売り飛ばそうと目論んでたくせに。


「アイナ-?別れはいつか来るんだよー?笑顔で別れないと駄目なー?カメッシー、ママはすぐ戻って来るからねー!!」


「キュルルル-!!!!」


 シロが別れの挨拶をするとアラシヤマも悲しそうに別れの鳴き声をあげる。


 出会いは人を成長させるというが。

 シロよ……いきなり成長し過ぎだろ。ママ効果か?


「ふぇ~ん、ルカー。」


「はいはい。アイナは泣き虫ですね。シロちゃんはあんなにも気丈に振る舞っていますよ?しっかりして下さいね。」


「ぶふぅー。わがったよぉー。」


 アイナは何なんだ?感情移入したか?


 皆でカメッシーに別れの挨拶を済まし、飛空艇へと乗り込む。


 飛び立つまで皆は甲板に残り最後までカメッシーを撫でていた。俺は一人操舵室に向かい波動エンジン笑の出力を上げていく。


「みんなー。飛び立つぞ-。」


 声をかけて魔力を流し込む。


 するとすぐにカメッシーの背中から飛空艇は浮き上がった。


「カメッシー!!大好き-!!!元気でいてねー!!!!」


「キュルルルフー!!!!」


 シロは両手をブンブンと振り大声でカメッシーに叫ぶ。カメッシーもシロに返事を返した。


 シロの為に、必ずこいつに会いに来よう。


 俺がそう心に誓ったところで気配察知が働いた。眼下にはカメッシーが小さくなってはいるがまだ見えている。


 敵によっては不味いな、戻るか?


 そう悩んでいるとすぐに正体は判明した。


「デカ!最早山ですねー!」


「カメッシーのママ-?ということはママのママ-?んー?何だかよく分からないー。」


 カメッシーが小さく見えるほど高度が上がっているのに、ハッキリと姿を確認出来る程の巨体。


 カメッシーママが山を歩いてカメッシーの元へ辿り着き、口で咥えて背中に乗せたのが見えた。


「良かったですね。」


「あぁ。母親が一番だろうからな。」


 するとカメッシーママはこちらをじーっと見詰めていた。


「キュルルルルルフーー!!!」


「声まで馬鹿でかいな!あいつ本気で叫んだぞ。敵認定されたか?」


「違うよー?ありがとー!!!だってー!」


 シロ分かるの?カメッシー語分かるの?


 結局、俺達が見えなくなるまでカメッシーとカメッシーママはずっと俺達を見送っていた。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 王都へは五日を予定していたが、カメッシーと長く戯れていたせいで六日に予定変更となった。


 このまま飛んでいけば五日目の夜中には着くが門が開いていないんじゃないかと思って聞いてみると、門が開いていなくても入るには入れるのだが驚かせて迷惑になりそうなので、王都の手前で待機して六日目の朝に入ることとなった。


 五日目は訓練を止めて、やらないつもりだったアイナのさよならパーティーをした。


 アイナも送別会やれと言っていたくせに、どうせ王都へ辿り着いてもすぐにそのままさよならするわけじゃ無いんだからパーティーはやらなくて良いと言いだしていた。


 しかしそうはいかない。


 ハズいだけだろアイナ。俺はアイナにはっきりそう伝え強行突破でパーティーは行われたのだった。


 夜になり、一つのベッドで四人一緒に眠る最後の夜だからと皆で夜遅くまでたわいも無い事を語り合った。


 しかしシロが寝落ちた為、それを合図に皆眠りに入ったのだった。





 そして寝静まってから数時間後。





 飛空艇は予定通り王都の手前十キロ程の空中で停止した。


 アイナとの別れを胸の中で受け止め、皆は夢の中にいた。


 夜は未だ明けておらず辺りは暗闇に包まれている。


 




 停止して約一時間後の事。






 赤い光が王都へ降り注ぎ、



 夕暮れのように周囲を照らし出し、



 飛空艇が大きく揺れた。

 



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