7-15 創造の錬金術師
二日目となったが特にやることも無いので操舵室で今後のことを考えながらボーッとしている。
ルカ達は今日も戦闘の訓練を行っている。アイナもネックレスの力を使い熟す為に頑張っているようだ。
アイナを王都まで送っていった後はどうしたらいいんだろうか。
リスキアから指示があれば考える必要は無いのだが、それが無い限りはフリーだから自分で考えなくてはいけない。
だがこの世界の地理など殆ど知らない為、どこにどんな場所があるのか分からないので考えようがないのだ。
グナシア達に会いにスカイガーデンへと戻るか、はたまた新天地へと赴くか。訓練の為に強い魔物と戦いに行くか。
まぁ、とりあえず王都で考えるとしよう。すぐに旅立つわけじゃないだろうし、ルカやシロと相談して決めたいからな。
「ご主人様-!喉渇いちゃった-!!」
「あぁ、すぐに持っていくよー!」
「あっ、ハルト様!お飲み物なら私が用意しますので大丈夫ですよ!!」
シロが甲板から大きな声で飲み物を要求してきた。飲み物なら食堂にあるのに。甘えん坊だな。
ルカはしっかり者だ。たまには甘えてくれればいいのに。
『ルカ、暇だからそっち行くついでに持って行くよ。』
『すみません。ありがとうございます。』
使い慣れる為に念話を飛ばすとルカも念話で返してくれた。普通の会話なのに、なんか二人の秘密の会話みたいでドキドキする。
階段を下りて食堂で飲み物を用意して甲板へと向かう。
「あっ、ご主人様~!!ありがとー!!!」
「シロストップ!!飲み物持ってる!!!」
しかしシロに声が届く前に喜びのダッシュタックルが飛んできた。
駄目だ。間に合わない。
そう思った所で、シロが停止していた。
「すごいな。使い熟してるじゃないか。」
「はい!大分慣れてきました!!」
アイナは短距離転移で先回りしてシロを即座にキャッチしていた。便利そうだから俺も使えるようにしよう。
「ご主人様!!アイナ凄いの-!!鬼ごっこっていうのやったらアイナに捕まっちゃった-!!」
「10回やって最初の1回だけですけどね。シロちゃん鬼になったら本気出すからヤバいし。」
「でも中々捕まらなかったよ-?転移だけじゃなくて動きも早くなったし、アイナ成長したー!!」
良かった。ネックレスの付加は無駄にならなかったようだ。
「その調子で頑張れよアイナ。あと三日もあれば王都へ到着するはずだから、ルカとシロから盗めるものは盗んどけ。」
「はい!!!頑張ります!!」
「アイナを強くするー!シロ鬼教官になるー!!!」
「では私もそろそろ厳しく行きたいと思います。」
「え?今まででも充分キツかったけど……魔力が……。」
「じゃあ、昼飯出来たら呼びに来るからもう少しやってていーぞー。」
「はぁーい!アイナ-!!武器なし組み手やろー!!!」
「……あい。がんばります。」
その後昼飯が出来たと甲板へ向かうと、ボディーブローが完璧に決まったアイナの崩れ落ちる姿があった。
飯食えるかな……。
☆
昼飯を食べ終わり、各々自由に食後の休憩をしているとシロが俺の所へやってきた。
「ご主人様-!お願いあります!」
お願い?珍しいな、何だろう。
「あぁ、どうした?」
「ルカちゃんのパジャマおっぱい大きくなってるから苦しいって言ってたのー!だから新しいのあげたいけどシロには出来ないの。ご主人様なら作れるー?」
ぐほぁっ!!ストレートフラッシュだぜ。よく分からないけど、ストレートフラッシュだ!
「作れると思うよ。今来てるパジャマがあれば手っ取り早く完成すると思うから、使って良いかルカに聞いてきてくれるか?」
「わかったー!!ご主人様-、ありがとー!!!」
シロはお礼を良いながらルカのいる甲板へと走って行った。
程なくしてシロは戻ってきた。パジャマを持ったルカと、何故かアイナまで来ていた。
「その、ハルト様。シロちゃんからパジャマを新調して下さると聞いて来たのですが…宜しいのですか?」
「もちろんだよ。上手くできるか分からないけど、やってみる。」
「ありがとうございます。」
ルカが少し恥ずかしそうにしているせいで、俺まで恥ずかしくなってしまった。
ルカからパジャマを受け取り、ルカを見ながらパジャマに魔力を練っていく。
そして魔力が動きだすとパジャマを包み込んだ。
「出来た。どうかな?」
ルカのパジャマがそのまま大きくなるのかと思ったら素材まで変わっていた。
着心地の悪そうな麻っぽいものから、柔らかいボア生地?モコモコ?のような素材になっていた。
魔法とはいえどういう理屈だ?
「すごい……とてもふわふわですね。パジャマだとは思えない程に高価な素材なのではないですか?」
どうやら地球では当たり前の素材もこっちでは珍しい高価な物のように感じるらしい。
こんなにふわふわな素材あまり見ないから当たり前か。
「ハルトさんって……そういうのが好きなんですね。好みが若いなぁ。」
「お前だって歳はそんな変わらんだろ。」
「シロはすごーく可愛いと思うなぁ!いいなー!!!」
それにしても何で素材まで変化したんだろ。俺がルカを見てそういうイメージしてたって事かな。
「とても可愛いのですが……私にこんな可愛らしいものが似合うとはとても……。」
「ピンクと白のボーダー、長めの丈とフード付きで前にはチャック……。100パー似合うでしょ!!それを着ればエロかわ姫よ!!!ハルトさん、ショートパンツナイスですッ!!!」
んー、意図してやったわけじゃ無いのだが。
「ルカちゃん!試着してきてー!!!」
「試着ですか。」
「私もみたーい!!!」
「…分かりました。」
ルカは渋々着替えに行った。
「シロはルカのお下がりだったよな?大きくないか?」
「折ってるからあまり気にならない-。」
「そっか。でも折角だからシロのパジャマもシロサイズに合わせてやろうか?」
「大丈夫だよー?シロはルカちゃんの着てたこれがいいのー。」
シロは健気だな。健気組№1だな。
「ハルトさん!私なんか着の身着のままで攫われて、しかも着てたのが鎧ですよ?」
「可哀想にな。」
「いや、そうじゃなくって。私にもパジャマ作って貰えたりなんて……。」
「ルカに借りてるんだろ?あと二日三日なんだから我慢すればいいだろ。」
「あれはパジャマではありません!チョイ着です!ですからお願いします!」
面倒くさいやつだな。すぐに到着するし、パーティー抜けるんだから良いじゃ無いか。
「下着を素材にしていいならな。」
「ガルルル……。」
「嘘だよ。」
「キシャー!!「ちゅりゃっ!!」……グッ。」
俺を威嚇した途端アイナはシロにボディーブローを貰って踞った。
ルカの教えだな。良い仕上がりだ。
アイナの復活を待つこと無く扉が開かれると、モジモジと恥ずかしそうにルカが戻ってきた。




