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7-10 ハルト VS ガンチュー



 アイナは俺の安い挑発に大分イライラしているようだ。これは更に追い込みをかけてやろう。


「別に喧嘩なんて売ってるつもりは無い。素直な感想だ。間違っているとも思っていない。身も心も雑魚な奴と戦っても腕が鈍るだけだからな。もう戦わなくていーぞ。」


「はぁ。……ハルトさんは大根役者ですなぁ。それにしてもツンデレのツンが過ぎますよ。」


 ちっ、バレたか。デレてはいないけどな。ガンチューのくせに。


「ハルトさんがシャイで優しいのは皆が知ってます。私のことを心配してくれてるのも分かります。でも、何で戦うんですか?」


「面倒くさいから。ボコって黙らしてやろうかなと。」


「…………。」


 俺が執拗に意地悪な事ばかり言っていたら流石のアイナも悲しい表情をしだした。


 やべっ、そろそろ泣くかも。


「はぁ。……アイナが一人で王都に残って死なないかが心配なんだよ。だから力量を知って、足りない部分を補足しておきたい。これが本音だ。」


「ハルトさん……ずるいなぁ。ツンデレの高低差が酷いです。耳がキーンってなります。」


 やべっ、泣いた!アイナ泣いた!


「ツンデレではないけどな。」


「分かりました。ハルトさんの思いやりに答えられるように全力でぶっ飛ばします!!」


「シロもアイナぶっ飛ばすー!!」


「では、私も撫で斬りしましょう。」


「三対一っ!?」


「いや、今回は俺だけだ。俺がミンチにするから二人はゆっくり飯を食べててくれ。アイナ、甲板に来い。疲れるから早めに終わらせよう。」


「え?殺されないですよね?」


「アイナの挽き肉でハンバーグか……。不味そっ。」


「タスケテーー-ッ!!!」



 俺が甲板に出ると、見たことも無い程の綺麗な星空だった。


「よく逃げ出さないで来たな。」


「飛空挺の上じゃ逃げようがないですからね。覚悟も決めましたし。」


「戦いの経験はアイナの方が遙かに上だろうが負けないからなー。きっと負けないぞー。勝つぞー。」


「やる気無さそうなのに勝てる気が全くしないですね。でも私だって努力はしてきましたから、ちょっとは抗って見せますよ。」


 口調はいつも通りだが、瞳からは真剣さが滲み出ている。


「まずはお互い魔法無しで武器を使って戦うか。剣技とかは使っていいけど。」


「私は魔法はそれほど使わないんで、元々剣技主体の戦い方ですけど大丈夫ですか?」


「あぁ、構わないよ。わざわざ手の内を晒してくれてありがとう。」


「ぬぬぅ。」


「テテテテン!ぼーくーとーうー!」


「ふざけてるんですか?!」


 俺は以前も出したアイナの剣では折れない木刀をマジック・クリエイトで創り出した。


「俺様がふざけるものかー。ギッタンギッタンにしてやるからな-。」


「発言とオーラのギャップが凄すぎて有る意味有効ですねそれっ!」


 するとアイナも剣に手を掛け、お互いにタイミングを計り合う。


「来ないなら俺から行くぞ。ていっ!」


 俺はシロから盗んだ手弾の刀バージョンである刀弾を放つ。ほんと便利な技だなぁこれ。


「シロちゃんのやつですね。それは突破済みですっ!」


 すると、視認し難いはずの刀弾をスパッと斬り伏せる。


「やるなぁ。」


「ハルトさんも適当に出した剣技の威力じゃなかったですよ。今度はこっちから行きます!!」


 アイナは剣を鞘に納めると走り出した。そして一気に目前までくると飛び上がり剣を引き抜いた。


「早いな。」


 木刀を振りかざし剣を受け止めようとしたところで気配察知が働いた。


 剣を横凪に振り抜いたアイナを無視して、気配察知が働いた方へと木刀をかざす。


「な、なんで初見で防げるの!?」


 飛び上がり剣を振り抜いたアイナは俺を通り過ぎ消えていった。

 代わりに気配察知が働いた先には本物のアイナがたまげていた。


「この程度の攻撃じゃ俺の相手してきた奴らにはまるで通用しないぞ。ほらほらどんどんいくぞー。」


 受けていたアイナの剣を弾き、魔力は一切使わずに身体能力だけで木刀を振り回して攻めたてていく。


「わわわっ!なんてパワーですか…っと!!」


 その全てをアイナは華麗に受け流して見せた。やはり技術の面では相当な差があるな。


「アイナ。俺にだって苦手な事はあるぞ。」


「ハルトさんの苦手な事?」


「俺は剣術を学んでいない。それに魔法の勉強だってまともにやっていない。デカイ魔法をぶちかますのは得意だが、1対1だと慌ててしまったり場数が足りないせいで自分の能力を活かしきれないんだ。それのせいで何度も死にそうになった。ほぼほぼ死んでた事もある。」


「へー。いつも冷静に見えるのに意外ですね。」


「強さに差が無くなるほど顕著に現れるんだよ。困ったもんだ。」


「私も…正直全てが中途半端で悩んでるんです。ハルトさんには人外的な能力があるし、ルカは全能力が高いけど氷属性は飛び抜けているし戦闘のセンス抜群だし、シロちゃんは魔法以外ヤバいし。私は器用貧乏になっていたのかもなーって。」


 確かに俺も似たような印象をアイナに対して持っている。


 特筆した能力か。


「アイナの得意技はなんだ?」


「んー、色々と学んできてはいますけど一番私に合ってるのは抜刀術のような技でレリズ・ラルグスラッシュというのが最大の剣技ですね。私が考えて発明した剣技なので想いも特別なんです。」


「ミナゴロッシーを倒したやつか?たしか地翔龍閃ちかけるりゅうのひらめきとかいう。」


「いえ、あれはパロディなんで正確にはウルスラッシュですね。あの技は剣閃を飛ばす剣技ですけど、レリズ・ラルグスラッシュは鞘に納めた魔力を剣に纏わせたまま爆発させて推進力を得る抜刀術ですね。カウンターとしてならかなり自信のある技です。」


「なるほどな。かっこいいな。」


「え?ほんとですかっ!?それ、すごく嬉しいです!!」


 素直に誉めたらアイナはかなり嬉しかったようできゃーきゃー騒ぎ出した。

 あの技を相当気に入ってたんだな。


「じゃあ、その技を俺に使って見せてくれ。」


「レリズ・ラルグスラッシュは流石に近距離じゃないと使っても意味が無いんで、ウルスラッシュで良いですか?」


「いや、強力な方でいい。準備が整ったら懐へ入るから遠慮無くやってくれ。」


「……分かりました。」


 するとアイナは剣を鞘に戻し、魔力を練り始めた。


 



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