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7-8 勝手なサプライズ



「ふわぁ。……暗い。寝過ぎちゃったぁ。ふわぁ~。」


 ルカに借りた本で魔法の勉強をしていたら、気付けばぐっすり眠ってしまっていた。


 部屋の中は暗く、窓の外からは月明かりが零れている。


 シロちゃんが傍でゴロゴロとしながらハルトさんに貰ったオヤツを食べていた筈だったけど、シロちゃんは既に部屋にはいなかった。


「今何時なんだろ。夜中だったりして。」


 喉が渇いたのでベッドを降りると、ぐぅ~とお腹が鳴った。腹の虫が飯をよこせーと騒いでる。


 もしかしたら既に夜中で三人とも寝てしまっている可能性も有り得るので、音を立てないように食堂へ向かうことにした。


 廊下へ出たが、操舵室や個人部屋から暗い廊下に光が漏れていない。

 どの部屋も電気が点いていないし、何の音もしないのでやはり皆寝ているようだ。


「やっぱりもう寝てるのね。起こしてくれれば良かったのに。」


 食堂で夜中に一人で食べるなんて寂しいな。折角なら四人で食べたかった。


 二人ともハルトさんと寝てるのかな。


「後で行ったら起きちゃうだろうな。今日は独りかぁ。」


 二人を羨みながら階段を下りていく。ハルトさんは優しいし気の利く人だから、私が起きたときの為に晩ご飯を用意していてくれると確信している。


「強くなりたいばかりじゃなくて、たまには私が皆の為に作らないといけないよね。私は自己中だなぁ。」


 ネガティブな事を口にしたら余計寂しくなってしまった。勇者は勇気ある者だ。しっかりせねば。


「それにしてもハルトさんはボーッとしてるように見えたり冷たい事を言う時もあるのに、突然確信ついてきたり気が利いたり優しかったり。もしかして前の職業ホストだったりして。……流石にないか。でもモテそうなんだよなー。」


 訓練の後も一瞬しか相対していないのにどうした?とか大丈夫か?とか聞いてくるし。


 鈍いのか鋭いのかどっちなんだろう。

 

「あれ?なんで私ハルトさんのことばかり考えてるんだろ。」


 そんなことを考えているうちに食堂の前へと着いた。


「ん?良い匂いだ。やっぱりハルトさんは最高やねー。」


 扉を開けると真っ暗だった。


「電気のスイッチは……えーと、この辺だったかな。あった!」


 ハルトさんが作った飛空挺なだけあってスイッチは地球製のスイッチをイメージされたものだ。


 ちょっと古臭いスイッチだけど、何だか懐かしくて心が和む感じがする。


「…………え?」


 パチッとスイッチを押す音がすると、食堂の中央にあるライトが点灯する。


 明るくなった部屋には、全く予想外の光景があった。



「よし、飾り付けはこんなもんだろ。」


「なんか可愛くできたー!シロ上手だー!」


「はい。とてもよく出来てると思います。」


「後はギリギリのところでインベントリから飯を取り出してセットするだけか。」


「シロが試しに食べてみようかー?」


「なんだそりゃ。シロは一人だけオヤツ食べてたじゃん。シロは小さな英雄なんだからもう少しだけ待てるだろう?」


「小さな英雄?…あれ?やっぱりシロは待てるぞー!」


 チョロいぜシロ。


「アイナ喜ぶかな。逆にうざがられるかも。」


「そんなことありませんよ。心が清らかなアイナは必ず喜んでくれると思います。」


「シロもそう思うなー。シロなら泣くなー。」


「あぁ、そうだな。」


 その時、サーチにアイナが動き出したのが表示された。


「起きたみたいだ。急いで並べるぞ。」


 インベントリから出来たての料理を取り出し、慌てて並べて電気と気配を消してアイナを待った。


 やがてアイナが近付いてくるとボソボソと独り言言ってる声が聞こえてきた。


「ぶすっ。ふすす。」


「シロ!笑うな!我慢だ!ぷすっ。」


「ハルト様も漏れていますよ。我慢です。」


 やばい。サプライズってテンション上がる。独り言言ってるってだけで笑ってしまう。


 何とか気持ちを切り替えて笑いを堪えていると、扉を開く音がした。


「電気のスイッチは……えーと、この辺だったかな。あった!」


 パチッと電気を点ける音と共に、皆でお手製のクラッカーを発射させる。


「…………え?」


「アイナー!おたんじょーびおめでとー!!!!」


「シロちゃん、誕生日じゃないですよ?」


「そうだったー!!」


 うーん……シロ暴走。


「え?何?!何が起きたの?!クラッカー?」


「何が起きたか…ですか?ハルト様の優しさと思いやりが起こした奇跡ですね。分からないのですか?」


「わからんわ!」


 はいー、ルカ暴走。


「ハルトさん、もしかしてサプライズですか?」


「まぁそんなところだ。」


「なるほどー。何のサプライズですか?神力はルカも一緒に手に入れましたし、他には思い浮かばないけどなー。」


「……だめだ。」


「え?何がですか?」


「俺、今、めっちゃ、面倒くさい、思う。」


「は?」


「アイナ、聞こえなかったのですか?」


「聞こえとるわぁ!!!!勝手にサプライズしといて何のサプライズか聞いたら面倒くさいってなんやー!!!!うがー!!!!」


 来たか……アイナまでも暴走。というか狂乱。


「違うんだ。遠回しにやるのが面倒くさくなったって意味だ。」


「ふー!ふー!!」


 アイナは興奮している。


 このままではアイナを倒すしかない。本当にやるしかないのか?いや、ここはもう一踏ん張りだ。


「落ち着け。簡潔に言う。」


「……はい。」


「元気だせや。」


「うがー!!!!!」


 駄目だ、やはり倒すしかないのか?


 いや、暴力は良くないな。


「アイナ、冗談だ。ここからは真面目な話だ。」


「いきなり真剣ぶっても、もう遅いです!!」


「正直みんなアイナが心配なんだ。」


「心配?何がですか?」


「勝手に羨んで……勝手に強くなりたがって……勝手に実践形式の訓練して……勝手に一人で落ち込んでる……そんな勝手なお前をみんな心配してるんだよ。」


「やめてくださいその言い回し。私が勝手な奴みたいじゃないですか!」


「まぁ自己中かどうかは今後の議題と課題にするとして……。」


「えっ?!それ正気ですか?!」


 アイナがいちいちツッコんでくるせいで話が進まないな。自己中め。


「アイナ、ハルト様に失礼ですよ?」


「はぁ、すいませんね。」


「シロねー、仕掛け人なの気付いた-?」


「うん。気付いたね。」


 その時、アイナの腹の虫がグゥ~と鳴き声を上げた。


「アイナ、取り敢えず飯にしようか。」


「……………はい。」


 

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