2-3 盗賊と傭兵
結局俺は何もラドゥカに言えなかった。コミュ障出て来んな。俺は変わるんだ。次からな。
ラドゥカは何も言わない俺に特に答えを求めるわけでも無く、着いてこいと言った。
すると、洞窟の奥に中庭のような結構広い空間があり、集落のような物が出来ていた。
「ここにいる女どもは今は皆既婚者だ。手を出すなよ。」
女の人が洗濯などをしていたり、楽しそうに話をしている姿があった。
「稀に新入りの女が来たり女奴隷を買うこともあるが、それは相性次第だな。早いもん勝ちじゃねぇからよ。元奴隷も結構いるが、ここじゃ関係ねぇ。」
深入りしすぎたな。今更引き返すのも空気的に違う。盗賊にはならないが、とりあえず流れのまま時が来るのを待とう。
「俺らは盗賊だが、実際に盗賊してるのはお前が見た10人だけだ。そして、狙うのはこの森に来る冒険者だが基本的に殺しはしねぇ。金目のもんをもらったら、それ以上はしない。そして、それを商人に売り払って生活費にしている。食い物は魔物を狩ってるがな。」
「そんなことしてて、冒険者ギルドに指名手配されないんですか?」
「いずれされるだろうな。だが、殺さずに金を奪うだけの半端な盗賊にそこまで本気にはなってねぇ。そもそも決闘で負けるようなもんだからな、冒険者も恥ずかしくてわざわざ報告しねぇんじゃねぇか?そもそも生活のメインは魔物の素材だからな。大所帯だから魔物だけじゃ追っつかねぇんだよ。」
ガハハハと笑って恥を素直に認めてるが、やり方が盗賊じゃねぇからか、悪い奴に見えないんだよな。皆を大切にしてるみたいだし、歩いてるだけで子供が寄ってくるし。
「今決めろとは言わねぇ。お前もすぐに目的の場所に行かなくてもいいんなら、ここで少し遊んでいけ。だが、残らねぇんなら外で此処のことを口外だけはするなよ。」
なんだかな、甘っちょろいやつだ。すると、タタタッと足音がして袖口を引っ張られた。
「兄ちゃんは新しい仲間?皆と一緒にボールで遊ばない?」
「俺はまだやることがあるから、また今度遊ぼう。それ綺麗なボールだね。」
「ラドゥカおじさんが誕生日にプレゼントしてくれたんだよ!僕の宝物だよ!ラドゥカさんは優しくて面白くて大好きなんだ!」
ラドゥカめ。やっぱり優しいやつじゃねぇか。いつまで捻くれてやがんだあいつは。
その時、洞窟の入り口から慌てた様子で叫ぶ声が聞こえた。
「ラドゥカさん!大変だ!傭兵みたいなのが大勢この辺うろついてます!おそらく標的は俺らです!」
「ちっ、どこで嗅ぎつけたんだ。女子供は男達で死守しろ!野郎共いくぞぉ!」
ラドゥカはいつもの盗賊メンバーだけを連れて入り口に向かって歩き出した。
俺はラドゥカ達に着いて外へと出た。
まだ傭兵達はここに来ていないので、洞窟の場所は見付かってないようだ。なら穏便に済ます手はある。
「ラドゥカさん。すみませんが、あんたの右腕には俺はなれません。」
「今は忙しいから後にしろ。巻き込まれるたくなかったらお前は逃げろ。落ち着いてからまた顔を出せ。」
ラドゥカ、格好付けすぎだぞ。
「僕を信じて、一旦洞窟に全員で入ってくれませんか?」
「何を言ってやがる。お前一人に何が出来るってんだ!」
「上手くやりますよ。ここの人達の為に、穏便に済ませますから。」
「駄目だ。俺らの問題であってお前には関係ねぇ。それをお前だけに任せるわけにはいかねぇな。何があってもだ。だから、お前は黙って引っ込んでろ!」
はぁ。まぁそうだよね。めんどくさいけどやるか。子供達可愛かったしね。無詠唱はまずいから、適当に唱えよう。
「うにゃむにゃむにゃうにょ…うぃんどうぉーる。」
風の防御壁の用な既存魔法だが、実際は違う。
両サイドに風の障壁で道を作り、正面から風の壁で洞窟まで押し込んでいく。
「てめぇ。何しやがる!やめろ、おい!」
ラドゥカ達はどうにか風を押しかえそうと頑張るが、俺の魔法がそんなショボいわけないので、どんどん押し込まれていく。
やがて全員洞窟内に押し込んだ。ここで、洞窟の入り口に結界を張り、音が漏れないようにして、出入りもできないようにした。
あとは新たにマジッククリエイトを使う。
スキルでは無く魔法の隠蔽だ。これを洞窟の入り口に使って、ただの岩山にする。
「これで完成だ。」
ラドゥカ怒るかな。まぁいいよね。上手くやれば許してくれるだろう。