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7-7 中央作戦会議



 飛空挺ハルルシアに乗った俺達は高高度を巡航中だ。


 眼下には雲海が広がり、時たま地上が顔を覗かせる。


 地上の景色を遠くまで眺めるのも良いがこれはこれで素晴らしい景色だ。


「運転ももう完璧だし、自動操縦に切り替えて俺も外の空気でも吸いに行くか。」


 先に甲板へと飛び出していったシロとアイナは何をするのかと思いきや、またしても戦闘訓練を行っていた。


 それを見たルカもそわそわとしていたので、行ってきなよと言ったら嬉しそうに甲板へ降りていった。


 そんなに彼女達の戦闘訓練は楽しいのだろうか。勉強熱心でよろしい。


 …………いや、そうじゃない。


 三人とも戦闘狂だからだ。間違いない。


 操舵室を出て階段を下りていく。


 そのまま甲板へと出ようかと思ったが、差し入れの飲み物を入れる為にキッチンへと行くことにした。


 俺としてはインベントリに全て収納しておけばいつでも取り出せるから便利なんだが、それだと俺が近くにいないときや寝てしまっているときにコップも使えなくなってしまう。


 それでは皆の使い勝手が悪くなってしまうので、人数分のコップや調理器具は備え付けるようにした。


 因みに掃除道具や風呂で使うようなものなど様々な生活用品をこれからマジック・クリエイトで創っていかなくてはならない。


 ルカの紅茶とアイナとシロの謎フルーツジュース。あと俺のコーヒーを用意した。

 

 それらをお盆に乗せてキッチンから甲板へと向かったら、雄叫びのようなものが聞こえてきた。


「ぐぉぉぉおおおぉぉぉぉー!!!!!」


「逃げちゃ駄目だ!!逃げちゃ駄目だ!!逃げちゃ駄目だっ!!!!」


 甲板へと出て見た物は、シロが両手を広げ雄叫びを上げながらアイナに襲い掛かる姿だった。

 あれ?ルカがいないな。

 


 剣を構えて聞いたことのある台詞を呟くアイナ……訓練じゃなくて遊んでただけだったのか?と思いきや、剣に魔力をしっかり込めているのが分かった。


「邪悪なる者を二刀の下に滅ぼせ!クロス・ホリアス!!!」


 アイナは剣を十字に振るう。すると剣筋から光輝く十字の刃がシロ目掛けて飛んでいった。


 戦闘訓練とは思えない魔力が込められている。シロ大丈夫かな。


「そうはいきません。龍飛剣・一閃!!!」


 ルカが突然どこからか降りてくると、アイナの放った光の十字架へと剣技を放った。


 ぶつかり合った剣技はルカに軍配が上がり、十字架を切り裂きそのままアイナへと向かって飛んでいく。


 だがそこには既にアイナの姿は無かった。


「魔女の首取ったりー!!!!」


 切り裂かれ弾けた十字架の光を隠れ蓑にし移動していたアイナは、突如ルカの背後から現れ剣を振り下ろした。


「目潰しなんかじゃシロの鼻はごまかせないよー。」


 振り下ろした剣を、これまた一瞬で現れたシロが魔力を纏った左手で受け止める。


「させないッ!!マトマ爆弾!!!!」


 アイナは胸元からトマトみたいな野菜であるマトマを取り出すと握り潰しシロへ投げ付けた。


「くぅ!!青臭い~!!」


 シロはマトマの汁を受けて臭そうな顔をしている。やるなアイナ。シロの鼻を潰したか。


「チェックメイトです。」


 マトマでシロと戯れている隙を見逃してくれる程ルカは甘くない。

 いつもより魔力を込めていないっぽい簡易な氷で出来た剣をルカはアイナの首筋へ突きつけた。


「だー!また死んだぁ!!」


「はっはっは、シロ騎士に勝とうだなんて考えが甘いなー!!」


「勇者なのに……勝てる気が全くしないや。」


「良い動きでしたよ。最初に比べてかなり読みにくくなってきましたね。」


「あー!ご主人様だー!!!」


 俺に気が付いたシロが喜び跳ねるように走ってきた。


「三人とも飲み物入れたから休憩にしない?」


「ご主人様ありがとー!!!」


「ハルト様、ありがとうございます。」


「ハルトさん、ありがとう!!」


 むっ、アイナの様子がいつもと違う気がする。なんか無理してるような、空元気のような。


「アイナどうした?大丈夫か?」


 くっ……突然過ぎて気の利いた言葉が何も思い浮かばん。


「えっ?」


「いや、なんか無理してないかなぁと思って。」


「ぜ、全然ですよ!!私は元気いっぱいです!!」


「そうか。ならいいんだけど。」


「じゃあ、いっただっきまぁーす!!!」


「シロもー!!!!」


「頂きます。」


 四人で座って休憩しながら雑談して、戦闘訓練はそのまま終了した。



 夕方になり、晩飯の支度をしようとしているとキッチンに誰かが入ってきた。


「ハルト様、お手伝い致します。」


「ルカか。すぐに終わるからゆっくりしてて良かったのに。」


「そのようなわけにはいきません。本来ならハルト様に休んでいて頂きたいくらいです。」


「じゃあ折角だからお願いしようかな。そっちに回ってくれる?カウンターに置いていくからテーブルに並べてって。」


「はい。」


 コップや水瓶、箸やスプーンなどをキッチンから食堂側のカウンターへ出していく。


「なぁ、ルカ。」


「はい。何でしょうか?」


「アイナの様子がおかしく感じたんだが、ルカは分かる?」


「ハルト様は普段鈍感な様に思えるときもありますが、大切な者が辛く苦しく悩んでいるときの機微にはとても敏感な反応を示して下さいますね。本当にお優しい方なんだなと感じてしまいます。」


「そんなこと無いけどね。なんとなくしか分からないし。」


「それだけでも嬉しいものです。アイナは……恐らく自信を喪失しているように見えます。」


「自信?」


「はい。私達の戦闘を見てから(しき)りに強くなりたいって言っていました。ダンジョンを出てからは時間があれば稽古だと言っていますし。」


「なるほど。それで実際に戦ってみたら更に力の差を感じたってところか。」


「はい。態度には出さないようにしているようですが……。」


「んー、分かった。なんか考えてみる。」


 すると廊下を駆けてくる音が聞こえてきた。


「ごはん出来たー?」


 ガチャリと扉を開けてシロが顔を出してきた。


「シロか。まだだぞ。」


「シロも手伝う-?」


「どうしよっかなぁ。アイナは?」


「さっきまでルカちゃんの魔法の本読んでてそのまま寝ちゃったよー。起こす-?」


「いや、丁度良いか。二人とも今からサクサクッと作戦会議だ!」


「作戦会議ー?楽しそう-!!!」


 アイナがいないので何ともタイミングがいい。


「ゴホンッ。では、これより中央作戦会議を行う。議題はアイナについてだ。」


 こうして急遽アイナにリラックスしてもらおう作戦会議が始まった。

 

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