7-1 ダンジョンからの帰還
「やっぱりハルトさんが言っていたリスキアっていうのは、創造神のリスキア様だったんですね!!無許可飛び入り参加で試練を受けたのにも関わらず、手当てまでしてくれておまけに神力とやらまでくれるなんて太っ腹な神様なんですね!ん?これうまいですね!!」
「太っ腹かどうかは知らないけど、変わったやつではあるな。」
「リスキア様は優しいよー?美味しいねー!」
「シロちゃんが言うんなら優しいんだろうね!!おかわり下さい!」
アイナが目を覚まし、俺達は寝ている間の事を伝えながら飯にしていた。
「はい、アイナ。リスキア様がお優しい方で良かったですね。」
「ルカありがと!いただきまーす!!」
アイナはよく食べるなぁ。シロは次元が違うから抜きにして。
「そういえば、アイナの試練はどんなんだったんだ?」
「試練?んー、リロイ・フェアリーフェイクの亜種に幻術かけられて酷い目に遭いましたよー!!でもハルトさんのおかげで幻術が解けたんです!あっ!お礼まだでしたね!!ハルトさん、本当にありがとっ!!!」
「居ないところでも助けるなんて流石はご主人様だなー。」
何が俺のおかげかよく分からないけど、知らぬ間に役に立てたようだ。
「しかも……命まで救ってくれて。」
ん?なんだそのモジモジとした感じは。
「アイナの癖に女みたいだな。」
「なっ!?もう!!ハルトさんの鬼畜!!悪魔!!サタン!!」
「ご主人様のヒヨコ!!お魚!!あとー、うーんと-、好き-!!!」
アイナは分かる。シロよ、我が道を行き過ぎだぞ。
「アイナ、失礼ですよ。訂正しなさい。シロちゃんは良い感じですね。」
ルカがアイナを説教するかと思ったら、予想に反して柔らかく注意しただけだった。
シロは何故か褒められていた。ルカも己の道を歩むなぁ。
「ところでアイナはこの後王都に向かうんだよな?」
「えぇ。そうですが?何か?」
アイナはいじけている。
ここはインベントリから最強のアイテムを取り出すか……。
「アイナ、食後に甘くてふわふわなケーキはどうだ?」
「な、なんだと……?!」
アイナが異常に食いついた。容易い。チョロインめ。
「シロもー!!!シロもシロも-!!!」
チョロキングシロも食いついて来たので、女性陣にケーキを用意してあげた。
「ハルト様、私も宜しいのですか?」
「え?ルカがダメなわけないよ。はい、ルカも座って食べて。」
三人とも嬉しそうな顔で食べ出した……と思ったらシロのお皿には既に何も乗ってなかった。
食べるの早いなぁ。
「あむあむ……はぁ、旨すぎて太るのも厭わないほど幾らでも食べられますなぁ!」
「柔らかくてふわふわしてて美味しいですね。」
「シロはケーキにもなりたいなぁー!!」
「気に入って貰えて良かった。ところでさっきの続きだが、アイナは王都に向かうんだよな?」
「はい!一応こんなんでも王都の勇者ですし、攫われてしまったので生きてることを伝えに行かないと心配かけてしまいますからね。」
「じゃあ、俺達も王都に行こうかと思うんだけど、どう思う?」
「はい。ハルト様に付いていくと決めていますから。」
「シロもいいと思う-!!」
俺が二人の意思を確認すると、俺に付いて王都まできてくれると言ってくれた。
「え?途中じゃなくって、王都まで付いてきてくれるんですか?」
「二人も良いって言ってるしな。駄目か?」
「だ、駄目なわけない!!……ですよ。」
アイナは予想外だったのか驚き、そして恥ずかしそうにしながら快諾してくれた。
アイナは美人だがデレると可愛いな。
「よし。じゃあ行き先も確定した事だし、そろそろ出発にしますかー。」
三人とも元気よく返事をしてくれたので、俺達はダンジョンを去る準備を始めた。
☆
「じゃあ、皆で手を繋いでいくぞー。」
「やたー!!!つなぐー!!!!!」
「はい。」
「シロちゃん私と繋ご-よー!!」
俺達は食事の後片づけを終え、荷物をまとめ(インベントリに放り込み)終わるとリスキアが帰っていった扉の前へと立つ。
リスキアが教えてくれたのだが、扉を通れば地上まで直通となっており簡単に出られるらしい。
やっぱりどこでも扉だったようだ。
「じゃあいくぞー。」
扉のノブに手を掛けて、押し開ける。
「うわっ、眩しいな。」
扉を潜り抜け、外へ出てみるとそこはダンジョンの入り口だった。
時間はわからないが日が昇っており、日の光が周囲の氷に反射してやたらと眩しい。
全員が外に出て扉が閉まったところで扉は消えていった。きっとノラえもんの四次元ポッケに仕舞われたのだろう。
「久しぶりの外の空気は新鮮だねー!!」
「そうですね。なんだかとても長い間ダンジョンに滞在していた気がしてしまいますね。冷たくて心地良い空気ですね。」
「そうだな。」
「ていうか、ここ何処なんです???」
「そうか。アイナはテイムされてる時に来たから知らないんだったな。ここは氷の極地だ。」
「へ?氷の極地ですと?」
アイナは驚きのあまり目を見開いていた。
「確かに仲間に入れて貰うとき、一人だと厳しいから連れてってとは言いましたけど……。着の身着のままでダンジョンの、しかも最高難度らしいダンジョンの深い階層から脱出後に何処かも知らないまま氷の極地から王都まで帰還とかクエスト難度高すぎですよ。死ねって言ってるようなもんですよ。あー、ほんと出会ったのがハルトさんで良かったぁ!!!!まさかテイミング状態から解き放ってくれた以外にも命を救われていたとは……私もハルト様って呼んだ方がいいですね。」
「いえ、大丈夫です。」
俺が即お断りを入れるとムキーッとアイナは怒っていた。元気いっぱいで何よりだ。
「それよりもアイナ。後ろにアイスマンティスがいるぞ。」
「ぴゃっ!!」
アイナは突然のエンカウントに驚き振り向き様抜刀しアイスマンティスを切り裂いた。
ぴゃっなんて可愛い掛け声で真っ二つか……やるな。
「いつも戦うときはぴゃっなんて言うのか?」
「言うわけ無いじゃないですか!!気を抜いてて驚いただけです!!」
「アイナはかわいーぴゃ!シロ気に入ったぴゃ!」
「シロちゃんまで!!もー、勇者をからかうなんて罰当たりだぞぉ!!」
アイナはふざけながらシロをくすぐり倒していた。美人姉妹の戯れのようで最高だな。
何が罰当たりなのかは分からないが。




