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6-32 レリズ・ラルグスラッシュ



リロイ・ナイトメアは醜い顔で雄叫びを上げると走り出した。


「スピードも中々!でも驚くほどじゃないっ!」


 剣技を放とうと魔力を練ろうとしたが一旦止めて、ナイトメアの攻撃を素のままの剣で受け止める。


「くぅ~、流石にキツいかぁ。」


 長い爪を力任せに振り抜いてきただけだったが、見た目によらずパワーがあった。


 剣が弾き飛ばされる程では無いが、手が痺れる位には衝撃がある。


 体勢を整えるため距離を取ろうと後ろに飛び退いたが、ナイトメアは追撃の手を休めるつもりはないようだ。


「しつこい奴ね!!!」


 畳み掛けるようにラッシュしてくるナイトメアの攻撃を何とか剣で受けていく。


 受けきれなかった攻撃も鎧が切り裂かれるまではいかないが体の芯に響いてくる。


 今のところ無傷ではあるが、このまま行くと不利な展開に持ち込まれる可能性が高い。


 もし油断してクリーンヒットでも貰えばそのまま御陀仏だって有り得る。


 やはり賭けの要素はあるが早い段階で攻めに転じた方がいいだろう。

 リスクは高いが、いずれはやらなくてはいけないのだから。

 

「隙を見付けたら行こうと思ってたのに、これだけ攻撃され続けてたら隙を見付けるどころじゃないわね。今度はこっちから行きますか!!光の波動!」


 近距離から目潰し効果のある光の波をぶち当てて、その間に距離を取り準備を開始する。


 剣を鞘に収め、全力で魔力を流し込んでいく。


 残りの魔力を考えるとチャンスは一度きり。


 しかも戦闘がメインじゃない魔物とはいえSランクとなると生半可な攻撃では仕留めきれないだろう。


 となると私がやるべきことはただ一つ。全身全霊の力でナイトメアを一刀のもとに切り伏すだけ。


「光の刃で今ここにナイトメアを断ち切る!!」


「ググゥ……グゥゥアアァァーーー!!!!!!」


 残り少ない魔力で使う剣技では、少しでも押されたらそのまま押し通されるだろう。


 だからこそ一瞬の閃きを生む得意な抜刀術で私はいく。


 勝負は一瞬。


 すぐに目潰しから復活し、ナイトメアがすぐ傍まで走り寄ってきた。


 まだ。


 眼前に迫るナイトメアの爪が振り下ろされようとしている。


 まだだ。


 普通の剣術なら致命的な距離。


 だけどまだ早い。


 鞘からは光が今か今かと漏れ出している。


 ガタガタと震え爆発しそうな剣を押さえつける。


 あと少し。


 爪が前髪に触れる程の距離。だが私の瞳に映るのはナイトメアの首だけ。


 溢れる程の光の魔力が刃に乗り、解放とともに爆発的にスピードを乗せる私の最大の剣技。


 レリズ・ラルグスラッシュ。


 無理矢理押さえ付け溜め続けた魔力を解放するのは………………今だ。


「ハァァァァーーーッ!!!!!!」


 弾丸のように鞘から剣が抜き出され、ナイトメアの爪が額を掠める寸前に体を捻りながら一歩踏み出す。


 交差し通り過ぎた私とナイトメア。


 


 手応えはあった筈なのに。


 先に両の膝をついたのは私だった。




 もう…魔力が空っぽだ。


 魔力欠乏で体が動かない。


 剣を握っているのも限界だ。


 弱い魔物でさえも今の私なら食い殺せるだろうな。


「ググゥー!」


 背後からナイトメアの嬉々とした声が聞こえた。勝ち鬨のつもりだろうか。


 折角ハルトさんのおかげで幻術を解けたのに……結局は私の力不足で死ぬのか。


 ……死にたくない。


 まだまだこれからなのに…死にたくないよ。


「グブゥ…?」


 その時先ほどの喜びの声を上げたナイトメアとは違ったくぐもった声が聞こえた。


 それに続いて、ドサッと重たい何かが落ちた音。


 膝立ちが限界を迎えて前に倒れると、首が転げ落ちたナイトメアの姿が目に映る。


「ハハッ、何とか……やれた…みたい。」


 体力も魔力も限界を越えナイトメアを倒した安心感が訪れると、眠るように私は意識を失った。





「アイナ遅いー。大丈夫かなー。これはシロの助け求めてるなーきっと。」


「シロちゃん、落ち着いて下さい。アイナも頑張ってるからもう少し待ちましょう?」


 シロはウロウロと落ち着き無く動き回っていた。ルカがそれを捕まえて膝の上に座らせる。


「確かに遅いな……無事だといいんだが。」


 ルカの話だと相当壮絶な試練のようだから、心配するなってのが無理な話なんだが。


 今にも動き出してしまいそうな足を押さえつけて座ってアイナの帰還を待つ。


 すると暫くしてルカの時と同じように扉が光り出した。


「ご主人さ「アイナ!!」…ふにゃ!」


 シロが扉の光を見つけると俺の方を見て何かを言おうとしたが、ルカがシロを膝の上に乗せているのも忘れて急に立ち上がってしまった。


 ルカの膝の上から落ちたシロは尻もちをついている。


 ルカも本当は心配でたまらなかったんだな。


「あっ…シロちゃんごめんなさい!」


「大丈夫-!それよりルカちゃん!アイナが帰ってくるー!!!」


 ルカがシロの手を取り起き上がらせ扉へ向かったので、俺も立ち上がり移動する。


 すると、光を放つ扉がゆっくりと開かれた。


「え?」





 そこから出て来たのはアイナでは無かった。


「皆さん頑張りましたね。ダンジョン踏破見事でした。」


「リスキア、アイナはどうした?」


 俺は嫌な想像をしてしまっている。そのせいでリスキアの話など耳に入らずアイナの行方を質問した。


 するとリスキアに続いて扉からイケメンが現れた。翼があるし恐らく人間では無いな。


「……ゼバル。」


 ルカは男を知っているようで名前を呟く。


「リスキア様……。」


 ゼバルはリスキアにボソボソと何かを話しているが聞き取れなかった。


「おい、早く答えろリスキア!!」


 焦らしに苛々した俺はついついリスキアに怒りをぶつけてしまった。


 するとゼバルがジロリと俺を睨み、背中の槍に手を掛ける。


「地上の生物風情が我等が創造神であるリスキア様に何て口の利き方を……この絶世槍の錆にしてくれる!!!」


「ゼバル……貴方こそハルト様に何を言ってるのですか?その槍をハルト様に少しでも向ければ今度こそトドメを刺して差し上げましょう。」


 バチバチと視線がぶつかり合う。ヤバい…ルカが怖い。


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