大切な、なにか
俺の名前は和樹。
中条和樹高校2年生。
都内の高校に通っていて、部活はサッカー部に所属。
そして、もう一人の主人公がいる。
そいつの名は長谷川麗奈
同じく高校2年生で部活は帰宅部。
産まれる前からお互いの家族同士が仲良くて家も隣同士の正真正銘の幼馴染みだ。
幼稚園から現在までずっと一緒。
17年間の仲だからお互いに下の名前で呼び合っている。
麗奈は俺とは正反対で群を抜いて頭が良い。
もはや天才に近い。
俺は勉強嫌いでマヌケでいつも友達からは馬鹿にされてるけど、麗奈だけは俺を馬鹿にしたりはせず
叱ったり説教したり、生意気な奴だけど優しい時もある。
麗奈は歌う事が好きで、いつも突然大声で歌い出したりして、俺が周りから白い目で見られてても気にせず歌い続ける。
むしろ一緒にと強要される事もある。
基本的に運動も楽器も勉強も何でも出来る麗奈は
何故か中学から部活には入らず、帰宅したら毎日続けている事があるらしい。
それを今になっても教えてくれない。
そんなある日の放課後の出来事だが
俺が部活に行こうとした時、麗奈から着信が来た。
「今どこにいる?」
「教室。これから部活に行くところ。」
「音楽室に来て!!」
ガチャッ(電話が切れる音)
「突然音楽室に来てって、これから部活だって言ってんのに。何なんだよ。」
と、若干イラついた俺は、仕方なく音楽室へ向かった。
3階と4階の階段の踊り場の所まで上ってくると、歌声が聴こえてくる。
紛れもなく、直ぐに誰が歌っているか分かったけど信じられなかった。
麗奈が歌い終わるまで俺は音楽室の隣の部屋に入って、暫く歌を聴いていた。
すると、麗奈は歌い終わり
「はぁ。和樹遅いな〜。いい加減待たせ過ぎだから電話するか!」
と、大声で言ってるのが聞こえたから、電話が鳴る前に音楽室に行った。
「あっ!遅いよもう!!何してたのよ!」
「つーか、これから部活だって言ったにも関わらず呼び出しておいてその態度か?」
「私の方が偉いんだから当然でしょ!」
「・・・。てか、今歌ってた曲って・・・」
「憶えてる?5歳の時に和樹が口ずさんでいた曲を私が気に入って、続きを作ったの!」
「だよな。 やっと完成したんだな。もう11年も経ってんじゃん。」
「えへへ。そうだね。私ったら、11年間もサボってたんだな〜!
ってゆうのは冗談!! 長年かけて作ったんだよ!!」
「え?そうなの? でも何で俺なんかが口ずさんだだけの・・・」
言いかけた所で、麗奈は俺の口に手を当てた。
続きを言わせないかのように。
「和樹。私は本当は、音楽が好きなの。 あと、歌う事も。」
「突然改まってどうしたんだよ?お前が歌が好きなのは重々承知してるけど。」
「・・・・・・でも・・・」
長い沈黙のあと、一言なにか言おうとしたところで麗奈は、《亡き王女のためのパヴァーヌ》を弾き出した。
なにか哀しい事があると決まってこの曲を弾く麗奈。
けど俺は、その時、麗奈が心の奥底で何を想っているのか、まったく気付けなかった。