表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣導水  作者: うちょん
4/4

おまけ①【和樹のこと】




 「なあなあ、信」

 「なんだよ、亜緋人」

 「和樹って、なんであんなクールなわけ?もっとテンション高い時があっても良いと思うんだけど」

 「それは和樹の自由だろ」

 「けどさー」

 とある街に着き、信達は三人同じ部屋に泊まっていた。

 信と亜緋人はすで風呂に入ってきて、テレビを見ながらだらだらしていた。

 面白いのがないと、チャンネルを次々回していた信のもとに寄ってきた亜緋人が、和樹のことを話し出した。

 亜緋人が言うように、和樹はあまり感情を表には出さない。

 無口だし、一々突っかかるようなこともしない。

 「それに、なんで一緒に風呂に入ってくれないんだ?なんで裸の付き合いが出来ないんだ?」

 「知らないよ。別にいいだろ。和樹が嫌だって言うんだから、無理に一緒に入る必要なんかないだろ」

 「もしかして、お腹が出てるとか」

 「ないだろ」

 「じゃあ、・・・小さい?」

 「お前なァ、どうでもいいだろ、そんなこと。和樹の好きなようにさせてやれよ」

 「えー?信は気にならないのか?」

 信からしてみれば、和樹も亜緋人も変わっているのだ。

 和樹は一人が好きなのだろうし、亜緋人はワイワイやるのが好きなのだと思う。

 だからといって、無理矢理同じ空間にいるというのはどうなのだろうか。

 そこは放任主義の信にとって、そこまで土足で入る必要はないと思っている。

 だが、亜緋人は気になるようで。

 「でもよー、俺見たことあんだ」

 「何が」

 「和樹が、村の女の子から手紙貰ってるとこ」

 「ぶっ!!!」

 亜緋人の言葉に、信は飲もうとしていたお茶を吐きだしてしまった。

 「きったねー」

 「お前のせいだろ!」

 手ぬぐいで口元を拭っていると、亜緋人がニヤニヤしながら近づいてきた。

 「興味ない?」

 「あ?」

 「手紙の内容だよ。もしかして、ラブレターかもしれないだろ?」

 「そうだとしても、和樹なら捨てたんじゃないのか?」

 「実はさ」

 亜緋人が言うには、手紙を貰った和樹を見つけ、手紙を奪い取ったのだそうだ。

 どこまで最悪な性格をしているんだ、なんて言う気力はないが。

 それでも和樹は眉のひとつも動かさず、亜緋人のことなど見なかったかのように、その場を去って行ったようだ。

 「どんだけ嫌われてんだ、お前・・・」

 「で、その手紙がこれなんだけど」

 信の話など気にせず、亜緋人は和樹から奪った手紙をひらりと出した。

 「おいおい、勝手に見るつもりか?」

 「なら信は見なくて良いよ。俺が勝手に一人で見るから」

 そう言って、ぴりっと手紙の封を破った亜緋人は、躊躇なく手紙を読む。

 「・・・・・・」

 「亜緋人?どうした?」

 茶化したりするのかと思っていた信だが、亜緋人が動かなくなってしまったことを不思議に思い、声をかけてみる。

 その時、がらっと部屋のドアが開いて、和樹が入ってきた。

 思わず信はびくっと身体を震わせてしまうが、亜緋人はまだ硬着状態だ。

 「(おい亜緋人!亜緋人!)」

 必死になって、亜緋人の肩を掴み、ブンブンと揺すり続けている。

 無言で二人を見ている和樹の視線に、余計に居心地が悪くなったとき、亜緋人が急に立ち上がった。

 ようやくいつもの亜緋人になったかと思っていると、手紙をビリビリ破いて、雄叫びをあげながら部屋を出て行った。

 「?」

 その様子を、和樹はただ見ていた。


 「くっそ!くっそ!あんな情熱的な手紙をもらえるなんて!くっそーーーー!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ