6 決意
《かくれんぼ》便利だけど自分の聞きたくないことをたくさん教えてくれた。私がそばにいる事を知らない人達は平気で噂話を聞かせてくれる。
私はこの世界では異物。もっと早く出て行った方が良かったのでしょうか?
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「よし、明日出て行こう」
侍女達のいなくなった部屋で決意する。
憐れみの目で見られるのは嫌だから早めに出て行く方が良い。サイラス様も部屋を用意しなくていいしね。
泣くのは布団に入ってからとずっと前に決めている。だから寝るまでは泣かない。
明日の用意をしないと。ステータスを開いてアイテムボックスに物を入れていく。ほとんど使うことのなかったお小遣いを1番先に入れた。王の妾に贈られてきた宝石を入れた宝石箱も少し考えた後に持っていくことにした。
お金がないと生きていけない。誰も頼れない世界にいるのだから、遠慮してる場合じゃない。洋服はシンプルなデザインのものだけ選んだ。靴も何足か入れておいた。
ステータスの中には粗末な服が一枚ある。異世界から着てきた服ではない。あの時の服はサイラス様がどこかに持って行ったので処分されたのだと思う。
この服は1年くらい前にサイラス様とお忍びで城下に遊びに行った時に着た服です。目立たないようにと渡された服は粗末な作りだったがとても着やすく動きやすい服で気に入っている。この時のためにアイテムボックスに隠していた。
アイテムボックスには今は使うことのできないスマートフォンが入っている。ここに連れてこられた時持っていたものだ。迷子だと思った時なぜかスマートフォンのことを思い出すことができなかった。ポケットの中に入れてあったのに。まあ気づいてたとしても異世界に来てたんだから、役には立たなかっただろうけど。
スマートフォンをサイラス様に見せた時とても驚いていた。家族の写真を見て泣く私を膝に乗せて慰めてくれた。その後、
「これからは俺が家族になってやる」
と言ってくれて2人で写真と動画を撮った。残念ながら今では見ることは出来なくなったけど、思い出だけは消すことが出来ない。
「攫われたと勘違いしたら大変だから手紙を書いておかないと」
今日は眠れないかもしれません。サイラス様に初めてで最後になる手紙を書くのだから。