【番外編】出逢い-サイラスside
私がまだ皇太子だった頃彼女に出逢った。
出逢いは必然。彼女は私と出逢う為に異世界から転移してこの世界に、私の元に現れた。
だが私は長いこと気付かずにいた。それは彼女があまりにも幼かったから。彼女が今の姿で現れていたら直ぐに自分の気持ちに気付いただろうに。もちろん彼女の美しさだけに惚れてるわけではない。彼女の本当の美しさは内面にある。そして恐ろしく強い心を持っている。
彼女の名前はヤマモト・カホ。明日にはカホ・ベリートリアになる。そして私はサイラス・ベリートリア。ベリートリア国の国王だ。
明日には妻になるカホの事を思い出しながら寝るとしよう。カホとの出逢いは街にお忍びで探索に出てた時だった......。
「サイラス様、アレに見えるは黒髪の娘に見えるのですが私の見間違いでしょうか」
宰相の息子であり私の護衛を勤めるロイ・オンダルが指差す方向に確かに黒髪の少女が立っている。そこだけ結界がはっているかのように誰もが避けて歩いている。どうして今まで少女の存在に気づかなかったのか。その位少女は目立っている。黒く艶のある真っ直ぐな長い髪。小首を傾げるのを見て人形ではないことが分かったが、人形のように小顔で肌が白い。
「君はいつからここにいる? 黒い髪に黒い瞳。迷いびとか? でも突然現れたような......迷い人は突然現れると聞くが、こんな街中に突然現れるなんて聞いたことないが.....」
少女に話しかけたが、私を見た少女と目があった途端動揺して意味のないことまでブツブツと呟く羽目になった。黒い瞳など見るのは初めてだ。私の心の中全てを暴かれるかのような吸い込まれるような黒い瞳。
「だいぶ前からここにいるよ。でもここどこ?日本じゃないの?」
少女の声は不安なのだろう。心なしか震えているようだ。寒そうな少女に上着をかけてやった。気づくのが遅れたが少女の姿はこの国では考えられないほどスカートの丈が短い。これでは寒いはずだ。私の上着は小女には長く膝のあたりまで隠してくれる。白い足は少女の足とはいえ邪な考えで見るものもいるだろう。隠せたことにホッと息を吐く。
「ニホン? やっぱり異世界人か。困ったな。父上に知れたら大変なことになるぞ」
ニホンという国から迷い人が現れると聞いた事がある。我が国には現れた事はないが万が一現れた時は保護する事になっている。ニホンは勇者様の故郷。確か今回召喚された勇者様もニホンから来たと聞いている。
「そうですね。陛下知れると側室に召し上げると思われます」
保護するのは良いが父上に任せるわけにはいかない。下手を打つと反対に勇者様を怒らせてしまう可能性もある。父上は幼女趣味はないと思うが、珍しいものが大好きなのだ。
「そんなことになったら私まで母上に睨まれるではないか、どうしたものか」
我が国の王族は一夫多妻制だから側室に召し上げる事が悪いわけではない。だが母上は嫉妬深い。側妃の話が出るだけで機嫌が悪くなるため今の所側室はいない。子供も私だけだから側室をと言う宰相の言い分もわかるもだが。とは言うもののこのいたいけな少女を側室にするわけにはいかないだろう。そんな事をすれば女神さまの怒りは今度こそ我が国を滅亡に導く気がする。
黒髪の少女は珍しそうにキョロキョロと周りを観察している。そういえばまだ名前も聞いてないな。
「君の名は?」
思わず聞いていた。少女はビクッとして振り向くと私の目と目を合わせてから笑った。
「ヤマモトカホ。カホっていうの」




