【番外編】プリーモショップ・ベリートリア 1
私の名前はプリーモ。プリーモ商会の会長である。今回はベリートリア国に念願の店を持つことに成功した。王家御用達にも任命され、勇者とは名ばかりの魔王のようなタケル様に命令された事を必死に叶えてきて良かったと心から思った。
王家から用意された店舗も広くて綺麗だ。これなら沢山の商品を売ることが出来そうだ。
「でも『マジックショップナナミ』の商品を結構置くことになりそうですね」
息子であるアルヴィンが呟く。確かに『マジックショップナナミ』の商品は原価が高いからあまり儲からない。だがそれなら数を売ればいいのだ。
「サイラス王の目当ては『マジックショップナナミ』の商品だからな。それがなかったら他国のプリーモ商会が店を持つのはもっと時間がかかっただろう」
「『マジックショップナナミ』様々ですか」
「そういう事だ。絶対にナナミさんを怒らせることはするんじゃないぞ! この国の王妃さまと仲が良いそうだから気をつけるように」
この店はアルヴィンに任せることにしたが、不安もある。
「大丈夫ですよ。ここは遠いですからね。ナナミさんと会う機会はなさそうです」
「そうだな。ナナミさんへのご機嫌伺いは私が行く事にしよう。サイラス王の事は任せるからな」
「えっ? 普通は王様の方を気にかけるでしょう。ナナミさんって普通の女の子って感じでしたよ。そんなに気にしなくていいと思うけどなあ」
確かにナナミさんは普通の女の子だ。だが彼女の頭の中は普通ではない。かき氷機や冷凍庫のドアをガラス張りにするなど普通の女の子は思いつかない。
「お前はまだまだだな......」
私が呟くとアルヴィンは不満そうな顔をした。
開店の前日。
「わざわざ来ていただいてすみません」
「いいえ、一度見ておかないとって言ってたんです。結構うちの商品のスペースがあるんですね」
ナナミさんは不思議そうだが、サイラス王の望みなのだからこの位は当たり前のことだ。
「ところでタケル様はどこに行かれたのですか?」
あのタケル様がナナミさんを置いて姿を消したのだ。とても嫌な予感がする。
「タケルなら....」
ナナミさんが答えようとした所で突然多数の人が店に現れた。またタケル様が魔法で誰かを転移させたようだ。いったい誰をと見て直ぐに跪く。非常識だ。いくら何でも非常識すぎる。国王と王妃を連れて来るなら一言断ってからにしてくれ。
「ああ、プリーモ。立ち上がってくれ。これは無礼講で良い。従者も連れてきている。彼らも開店前に商品を買いたいそうだから頼む」
どうやら明日の開店より前に商品を購入しに来たらしい。
「明日の開店の時に来るって言うから反対したんだ」
タケル様、非常識とか言って済みません。助かりました。開店の時に来られたらどうなっていたことか、王様だから非常識でも何も言えない。
「カホ様、結婚式以来ですね〜」
「はい、会いたかったです。沢山買ってたのにもう食べるものがなくなったんですよ〜」
「アハッ! カホ様は私じゃなくて食べ物に会いたかったんですね〜」
「そんなことないですよ〜」
本当に仲が良い。王妃様にこの言葉使いで良いのだろうかと私の方が気が気じゃない。
このままでは私の心臓がもたない。誰か変わってくれ......。




