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47 国王の妾は王妃になる

    


 結婚式当日。

 助け出されてから今日まで、本当に忙しかった。

 ナナミさんとタケル様に会えるのも夕食の時だけ。もっと話がしたかったけれど仕方がない。結婚式で失敗するわけにはいかないのだから。


「カホ様、おめでとうございます」


「ありがとう、ナナミさん。次はあなたの番ですね」


 私がにっこり笑って言うと


「まだまだですよ〜」


と手を振って否定された。タケル様は何をしてるのかしら。日本では行き遅れといってもそれほど気にならないけど、この世界では二十歳を過ぎたら結婚はどんどん遠のいていくと聞いている。ナナミさんの歳から考えると急いだ方が良い。キッっとタケル様を睨む。タケル様は首を傾げる。なぜ睨まれたか分かっていないようだ。


「白いドレスなんですね。カホ様、とっても綺麗」


 ウエディングドレスは作り直すか検討された。クリスティーナ様がデザインしたドレスは不吉ではないかと言われた。何か仕掛けされてる可能性もあるからとタケル様が確認したが何も出てこなかった。私が気に入ってることと時間もない事からこのドレスをそのまま着ることになった。


「ドキドキして落ち着かないです。マリー、大丈夫かしら......失敗したら」


「大丈夫ですよ。サイラス様が助けてくださいます」


 マリーに励まされながらなんとか神殿まで来ることができた。ここからは守ってくれるものはいない。隣にいるタケル様だけだ。


「カホ様は勇者の為に異世界人が神によって連れてこられてると聞いたことがあるか?」


 突然タケル様がそんな事を聞いてくる。


「ええ。サイラス様がそんな噂を聞いたことがあると言ってました。でもそれは噂だけで本当のことではないと言われました」


「そうだな。俺が知ってる異世界から連れてこられた奴で10年前に来たのもいるから、本当のことではないと思う。だが俺はカホ様がこの国の王の妾になってるという話を聞いた時、ものすごく責任を感じた。助けなければと正義感に駆られてサイラス様に会いに来た。噂とは違ってサイラス様はいい奴でカホ様を無理やり妾にした悪い奴ではなかった。それでも何かあれば助けようと思っていた。だから手紙を渡したんだ。でもこれからはサイラス様に任せようと思う」


「はい。今までありがとうございました」


 タケル様はホッとしたような顔で笑った。

 話が終わったと同時に扉が開いた。

 他国の王族の方々は昨日には全て到着されたと聞いてる。皆に注目されながら後見人であるタケル様に手を引かれて歩く距離がとてつもなく長い。ナナミさんは先に行ってるねと言ってた。おそらくこの神殿の中のどこかで見ているのだろう。

 『レイナーダ』というピアノとオルガンを合わせたような音が出る楽器で神を讃える曲が流れる。

 さっきタケル様に言われたようにこれからはサイラス様と二人でこの世界で暮らしていくことになる。もう家出なんてしない。私は王妃としてサイラス様の隣に立つのだから.......。

 サイラス様が私を見てる。そして手を差し伸べてくる。この手をとれば本当にこの世界で生きていく事になるのだ。私はタケル様の手を離してサイラス様の手を取った。盛大な拍手が聞こえる。歓声がすごくて何も聞こえない。

 そして国王の妾は王妃になった。






最終回です。今まで読んでくださってありがとうございました。新婚旅行編は番外編で書きたいと思ってます。

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