40 誘拐ーナナミside
夢遊病ってこういうのかな〜って思いながら歩いてる自分がいる。慣れないベットが落ち着かなくて眠れなかったはずなのに何をしてるのか。
目的もなくただ歩いてる。途中で二人ほど見回りの兵士に出会ったが、私も慌てなかったし、相手も私をスルーしてたから見えてなかったのだろう。これって『かくれんぼ』に似てる。でも違うものだってわかる。
歩いていると白く光ってる怪しいドアがあった。そんな不気味なドアに関わりたくないと思ってるのに、なぜか近づいていく。そして光の中に飲み込まれていく。
部屋の中は暗かった。でもガサゴソする音が聞こえてくる。ここはカホ様の部屋だったはず。ベットの横に二人ほど立ってるのがわかる。
『誰?』
私は声をかけた。でも聞こえてないようだ。それもそうだ。私もベットの横に立ってるのに全然気づかれてないのだから。
「早く運びましょう。朝まで誰も来ないと思うけど何があるかわからないわ」
「へい。このお嬢さんを運べばいいだがや」
「そうよ。それほど重くないから簡単にはこべるでしょう? でもこのことは他言無用よ」
「わかってやす。あっしはお金さえいただければ故郷に帰れるんだ。朝が来たらすぐ出発することになってるから誰にも言わねーだ」
「分かってるでしょうけど、あなたも共犯になるんだから誰にも言わないことね。私は処刑される事はないけど、あなたは処刑されるわよ」
男は黙って頷いている。きっと何度も聞かされて聞き飽きているのだろう。男はカホ様を荷物を抱えるように抱き上げた。
『きゃー! 何してるのよ〜離しなさいよ〜』
横で騒いでみたが、やっぱり彼らには見えてないようで全く効果がない。カホ様を抱えてる男の腕をつかもうとしたが、これも効果がなくすり抜けるだけ。彼らは暖炉の横にある大きな空洞に向かっていく。あんな大きな穴なんてあったかな? 一緒について行こうとした私は残念ながら穴に入ろうとしたところを何かに弾き飛ばされそのまま意識を失った。
「わーっ!」
起き上がってバクバクしてる心臓を腕で抑える。今のはなんだったんだろう。夢? 目が覚めたらベッドの上なんだから夢だと思うのに何かが違うといってる気がする。どうしよう。
「おい、何かあったのか?」
いつの間にかベッドの横にタケルが立っていた。
「どうしたの?」
「どうしたのジャないだろ? 今、大きな声出しただろ。何かあったかと思って来たんだよ」
タケルの髪が寝起きで慌てて来たのを表現している。思わず笑ってしまった。
「なんだよ。寝ぼけてただけか。人騒がせだな。帰るぞ」
「わーっ!待って、違うんだよ。夢だけど夢じゃない気がするんだよ」
私は夢で見たことを伝えた。タケルは少し考えていたが、
「今からサイラス様に会ってくる。カホ様が本当に攫われてたら、話を聞くことになるだろうから着替えて待っててくれ」
と言って消えた。サイラス様の部屋に転移したのだろう。
もしかしたらただの夢だったのかもしれない。でもタケルに言ってホッとした。これで大丈夫。なぜだかそんな気がした。




