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39 誘拐

   


 目が覚めたら知らない場所だった。もしかして今までのことは夢だったのだろうか? サイラス様との結婚も夢でまだ家出真っ最中? ううん。そんなことないわ。この寝巻きは昨日寝たときと変わってない。

 ここはいったいどこなんだろう。誰に連れてこられたのかしら。ドキドキする。なんだかとんでも無いことが起きたみたい。


「ステータス」


 タケル様に助けを求めようと思ったがステータスが反応しない。今までこんなことなかったのに。これじゃあ手紙もかけない。


「魔法は使えないですよ」


 声をかけてきたのは知らない人だった。


「ここは何処なの? それにあなたは誰?」


「私はあなた様を世話するために雇われた侍女です。これから一生ここで生活してもらいます」


「え?」


「本当に王様と結婚できると思ったのですか? 陛下も人が悪い。こんな子供を騙すなんて」


 この侍女はマリーと違ってとても意地が悪そうだ。陛下が私を騙す? 信じられない。私なんかを騙しても何の得にもならない。それにタケル様も騙す事になる。そんなリスクを負うだろうか。


「信じられませんか? でも陛下の協力がなければあなた様を攫うなんて無理ですよ。ふふ、顔色が変わりましたね。まあ、時間はたくさんあるのですからゆっくり考えるといいですよ」


 意地の悪い笑いを隠そうともしないで朝ごはんをテーブルに置くと部屋から出て行った。

 悔しいけどあの侍女の言ってることは当たってる。

私の部屋から騒ぎを起こさずにどうやってここに連れてきたのだろう。サイラス様ならできる。他にできる人はタケル様? でもタケル様がするとは思えない。もちろんサイラス様のことも信じてる。

 サイラス様を疑わせることがあの侍女の狙いなのだ。


「ステータスが使えないってことは魔法が使えないってことかな。ということは『かくれんぼ』も使えないのかも。どうしたものか」


 誰がいるわけでもないのに独り言を呟く。

 誰もいないから着替えないで朝ごはんを食べることにした。温かいうちに食べたほうが美味しいはずだ。助けが来た時に動けるように食事はとっておかないとね。


「うん、ケーキ以外には毒が入ってないね」


 毒が入ってるかどうかもわからないかと思ってたけど、ケーキを見てこれは食べられないと思った時毒が入ってることに気づいた。これは魔法ではなく女神様の加護にあたるからだろうか。

 殺す気はないのかと思ってたけど違ったのかな。

 ケーキ以外は美味しくいただいた。


「あら、毒がわかると聞いてたけど本当だったみたいね。ケーキだけ残すなんて、どうしてわかったのかしら」


 皿を下げに来た侍女は首を傾げて笑った。嫌な笑いだ。この毒を混入したのはこの侍女の独断ではないだろうか。


「泣もしないのね。いつまで強気でいられるかしら」


 ここで泣き喚いたところでこの侍女を喜ばせるだけなのに泣くわけがない。

 泣くのはサイラス様に次に会えた時だ。きっとまた会える。それまで生きてないと悲しませてしまう。そう私をここに連れてきたのは絶対にサイラス様じゃない。絶対に.....。



 



 









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