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33 お茶会ーサイラスside



「お茶会に呼んでくれてありがとう」


クリスティーナは侯爵令嬢らしい仕草で挨拶をしてる。


「忙しいから来てくれないかと思ってたよ」


「でもカホ様はどこなの? カホ様も来るのでしょう?」


クリスティーナはカホの事を気に入っている。カホがいないのが気になるのだろう。


「少し遅れているが後から来るよ。始めていて欲しいそうだ」


「久しぶりに会えるのね。ふふ、楽しみだわ」


侍女のメリーがお茶を配ってる。私とカホのカップに入れると首をかしげた。


「どうした?」


「お茶が少なかったようです。取りに行ってきます」


「そうか。カホはまだ時間がかかるのだろう? このお茶はクリスティーナに飲んでもらおう」


「え?」


クリスティーナの侍女から驚きの声があがった。


「そのようなカホ様のお下がりをクリスティーナ様に......」


「メアリー、いいのよ。まだ手をつけてないのだから構わないわ」


クリスティーナは気にしないというように侍女を下がらせた。

メリーはカホのティーカップをクリスティーナのと入れ替えた。


クリスティーナは紅茶をチラッと見たが手をつけようとはしなかった。

先ほど声を荒げた侍女はそれを見てホッとしてるようだ。


「それで今日の集まりは結婚の報告かしら?」


「そうだ....と言いたいが、プロポーズのやり直しが必要みたいなんだ」


「あら? この間成功したって言ってなかったかしら?」


「全然通じてなかったらしい」


私が言うとクリスティーナは呆れた表情で


「困るわ。もうウエディングドレスは作ってるのよ。最高のものが出来そうなのにプロポーズさえしてないなんて!」


と言った。興奮したのか喉が渇いたようで紅茶に手が伸びる。


「クリスティーナ様、飲んではいけません」


メアリーという侍女がクリスティーナから取り上げようとする。あり得ないことだ。


「何をするの?」


クリスティーナもさすがにおかしいと思ったのか強引に飲もうとする。だがメアリーはティーカップを奪うと床に投げ捨てた。


ティーカップの割れる音とその後の静寂。誰も言葉を発することができなかった。


「どうやら間違いないようだな。毒を入れたのはメアリー、君だな」


「え? 毒ってどういうことなの?」


クリスティーナが聞いてくる。状況が分かってないようだ。


「カホを毒殺しようとした犯人だよ」


「メアリーがどうしてそんな事をするの?」


「彼女が君の侍女になったのは君が彼女の髪が気に入ったからだそうだね。彼女の髪は黒髪に近い。カホと違って完全に黒ではないがこの国では珍しい」


「ええ、私は昔から黒髪の人が欲しかったから、メアリーを見てすぐ私の専属侍女になってもらったの。あなた達はいつもカホ様を見てるから彼女のこと全く気にならないみたいだったけど、メアリーはどこでも目立ってたわ」


「メアリーが怪しいと気付いた時、クリスティーナの事も疑わなくてはならなかった。接点のない彼女に動機があるとは思えなかったからね。調べても調べても彼女には動機がない。あるのは君への忠誠心だけ。そこで今日は芝居をさせてもらった」


「芝居?」


「そうだ。カホはここには来ない。来ると思わせただけだ。まさか本当にカホのティーカップに毒を入れるとは、思い切ったことをする」


「でもメアリーには毒をいれる事はできないわ。だってずっと私の後ろにいたのよ」


「彼女は特殊な魔法を持っているようだ。君なら知ってるだろう。この部屋はカホの部屋とは違う。ここではどんな魔法の動きも俺にはわかるんだよ。そういう部屋の作りになってる。メアリーが魔法を使ってカホのティーカップに毒を入れてるのが見えたよ」


「そんな.....どうして、どうしてそんな事をしたの?」


クリスティーナは床に跪いてるメアリーに聞いた。


「あの人が死ねば、私は昔みたいにクリスティーナ様に可愛がってもらえると思ったんです。最近はカホ様のことばかりで、前は私の髪も褒めてくださってたのに.....それに彼女さえいなければクリスティーナ様が王妃になれると......ごめんなさい」


あとは泣くだけで言葉にならなくなった。


「私の侍女がそんな理由で人を殺そうとしたなんて信じたくない。カホ様に会わせる顔がないわ」


「クリスティーナ、君が関わってないのが分かって良かったよ。君が犯人だったらカホはとても傷つくところだった。まだカホは妾という存在だ。これが王妃候補だったら君の侍女も、そしてその主人である君も処分しなくてはならなかった。君の侍女には魔法の使えない呪具をつけてもらって修道院に入ってもらう」


本来ならカホを殺そうとしたのだから処刑したいくらいだ。だが、メアリーを処刑すればノヴァーク侯爵家の処分も考えなくてはいけなくなる。妾を殺そうとした位では難しいのだ。それだけ妾の立場は弱いと言う事だ。

事件は解決したが、カホは帰ってきてくれるだろうか?

プロポーズの言葉はどうしたらいいんだ? 事件解決より難しいな。




























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