32 カレーうどんを上手に食べよう
朝の光が泣いた目にしみる。でもなんかスッキリしたよ。いっぱい寝て、いっぱい泣いた。
私はこの世界に来て何年にもなるのにどっち付かずだった。要するに甘えてたのだ。
私に激甘のサイラス様がいたから甘えられた。いつまでも子供のままでいられた。
でもそれだといつまでたっても成長できない。家出したのもサイラス様の為とか言ってたけど、単なる我儘。自分が可哀想だったから当て付けの家出だったんだって今ならわかる。
情けないよね。こんな私に着いてきてくれたマリーには申し訳ない。
「カホ様。おはようございます。大丈夫ですか?」
マリーが心配そうに聞いてくる。
「はい。スッキリです」
「それは良かったです」
「今日は畑に行きます。それから私を殺そうとしてる人が捕まったら行きたいところがあります。今は迷惑をかけるので捕まるまではここにいます」
「行きたいところですか? どこか聞いてもいいですか?」
「その時が来たら言います。いろいろ考えて決めた事です。多分マリーは賛成してくれると思います」
まだ聞きたそうな顔で私を見てたけど、言い出したら聞かない事を知ってるから諦めたようだ。
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「今日のお昼はカレーうどんよ。服を汚さないように気をつけて食べてね」
あの大泣きした日から2ヶ月がたった。タケル様は時々日本の食べ物を持ってきてくれる。その中から今日はレトルトのカレーと乾麺のうどんでカレーうどんを作ってみた。
カレーはやっぱりいい匂い。食欲をそそるなんとも言えない匂いだ。
「このカレーはこの間も食べたけど、美味しいですね」
マリーが目を輝かせてます。今日のランチは私とルドリアさんとマリー、そしてノアとリリーの5人で食べてます。
「今日はうどんの上に乗せてみました。前回はごはんの上にカレーだったからスプーンでよかったけど、今日はフォークですから気をつけてくださいね」
「「「「「はーい」」」」」
返事は元気だったけど、食べ始めると苦労してます。
「あうぅ、エプロンが汚れちゃった」
「私もです」
「......あっ、失敗です」
私は箸を上手に使いながら、皆が楽しそうに食べてるのを意地悪く眺めてます。ふふ。
でも残念。やっぱり元貴族のルドリアさんは動揺した様子もなく優雅に食べてます。ちぇっ。
すると突然風が、と言っても強いわけではなくそよ風くらいの風がまって、タケル様が現れました。
「犯人が捕まったと連絡があった。カホ様はどうされますか?」
目を合わせて返事を待つタケル様はとても真剣な顔をしてた。




