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31 神に見捨てられた国(後編)



「サイラス様は私には何も教えてくれなかった」


「自国の恥ですから、知られたくなかったんでしょう」


マリーはサイラス様を庇うように言う。それはわかる。誰だって嫌な所はなるべく隠すだろう。


「私はいつまでたってもお客さんだったのですね」


でも信頼されてなかった。そんな気がして泣きたくなる。


「そんな......そんなことありません」


マリーは拳を強く握って俯く。マリーにそんな顔をさせたかったわけではないのに責めてしまった。いけない、このままではもっと酷い事を言ってしまう。


「でも今のベリートリア国は黒髪の人は少ないみたいだけどいますよね。サイラス様付きの騎士の中にも1人見かけたことがあります。それに麦の実ってる黄金の輝きも見たことありますよ」


麦が黄金色に輝いてとても感動した。サイラス様と見に行ったのだから間違いない。今のベリートリア国は神に見放されてるようには見えない。


「当時の王様は責任をとって息子に地位を譲り、神殿に入られました。神に祈りを捧げて許しをこうたと言われてます。それで許されたという話です。ただ歴史家の中には本当に神の祟りだったのか、偶々不幸な出来事が重なっただけではないかと言う人もいます」


それはどうなんだろう。この世界は日本と違って神がとても近い気がする。その分、恩恵もあるけど....逆もあるだろう。


「神様に許されたのに黒髪の人は帰ってこなかったの?」


「黒髪の人に対する差別をなくしていくようになったのですが、どうしても黒髪の人には腫れ物に触るような対応になったりしてかえって暮らしにくいみたいです。でも段々と良くなってきてます。何事も急激に変えていくのは危険ですからね」


なんかサイラス様が私を表に出さなかった理由がわかった気がする。この黒い髪と黒い瞳のせいだったんだ。いつもこの黒髪の事を褒めてくれてたから気づかなかったよ。


「私は家出したのに......どうしてもこんなに気になるのでしょうか? もう私には関係のない国の話なのに......関係ないはずなのに.....どうしてこんなに心が痛むのかしら」


涙が止まらない。誰のための涙なのか。それすらもわからない。ただ今は思いっきり泣きたい。


「きっとベリートリア国がカホ様の故郷なんですよ。だから悲しいのです」


マリーは私をそっと抱きしめてくれた。




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