29 本を読もう
今日は雨が降っているから本を読みたいと言ったらルドリアさんが図書室に案内してくれた。マリーは侍女としての仕事が忙しいみたいで来れなかった。
「すごい。こんなに本があるなんて!」
正直あまり期待してなかったので嬉しい。
「ほとんどタケル様があらゆる国から買ってこられたものです。私には読むことができない本が多数ありますが、異世界人であるカホ様なら全て読めるでしょう」
そう私たち異世界人はなぜかこの世界のあらゆる言語に対する翻訳機能を持っている。いつもはあまり思わないけど、こういう時は便利だなって思う。
「タケル様はいろんな国に行かれたんですね。少し羨ましいです」
「そうですね。でもカホ様はこの国にも来たし、セルビアナ国にも行かれたんでしょう? 私はこの国から出たことがないので羨ましいですよ」
ルドリアさんに言われて気づいたけど、私はこの家出で旅をしてる。でも観光もしてないから旅をしたような気にならないけどね。
「もっと見て回りたいなぁ。この国の王都にも行ってみたいわ」
「今度タケル様が帰ってこられた時にでも相談してみましょう。命の危険があると聞いてるのでしばらくは控えてください」
そうだった。あまりに平和だから忘れてたけど命を狙われてたんだった。
ルドリアさんが退出すると私は大好きな本の匂いに囲まれて微笑んでた。
「どの本から読もうかしら」
王宮でも本はあったけど私に渡される本には制限があった。読んでいい本といけない本があった。ここでは何を読んでもいいのだ。何から読もうかしら。私は端からどんな本があるのか確かめてみることにした。
どうやら全く整理されてないみたい。魔法の本の横に恋愛の本があったり、歴史の本があったかと思ったら料理の本がある。適当すぎて何が何だか。
「あら、この本ベリートリア国の歴史だわ」
ベリートリア国はサイラス様が治めてる国で私が5年暮らした国だ。
家庭教師にベリートリア国の歴史は習ったけど何故か本を読んだことはなかった。この本は他国から見たベリートリア国の歴史みたい。なんだか楽しそう。この本を読もう。ベリートリア国で黒い髪が珍しい理由がわかるかも知れない。マリーはサイラス様に聞いた方が良いって言ってたけどわざわざ聞かなくてもこの本を読んだらきっとわかると思う。
私はその本を取ると部屋の中にある机に置いて読むことにする。とにかく本が重い。厚い本だから全部読み終えるまでかなり時間がかかりそう。
まあ、時間はいっぱいあるからいいかな。




