28 ホットケーキを食べよう
「このホットケーキというのは本当に美味しいですね」
「このシロップというのが甘くていいですよ」
侍女たちはとても美味しそうにホットケーキを食べている。
ホットケーキミックスをマジックショップナナミで見つけた時は、買うべきか悩んだ。料理をあまりしたことのない私に作れるか不安だったから。でも買ってきて正解だった。初めて作った時はちょっと焦がしてしまったけど、今ではキツネ色の美味しいホットケーキが作れるようになった。
作り方のところに書いてある、ドーナツもそのうち挑戦したいと思っている。
城にいるときは気づかなかったけどこの世界では甘いものは手に入らない貴重なものらしい。みんなが喜んでくれて嬉しい。
「カホ様。昨夜タケル様が戻られました。忙しいようで今朝また何処かへ行かれたのですがアイスクリームを預かってます」
ルドリアさんはホットケーキを食べ終えると思い出したように言う。
「アイスクリームですか? 暑くなったから嬉しいです」
手に入りにくいと聞いてたのでとても嬉しい。城では夏になると毎日のように食べていた。知らなかったとはいえ悪いことをした。日本では簡単に手に入ってたからみんなが食べていると思っていた。
「皆のもありますか?」
私が聞くとルドリアさんはにっこり笑った。
「皆で食べなさいとたくさん置いて行かれたので大丈夫ですよ」
タケル様はさすがに気が利いてる。
「後、こちらも渡してくださいと言われました」
驚いた。渡されたのはスマホの充電器だった。スマホが見れないのが残念だってこの間愚痴ったけどこの世界で手に入るとは思ってなかった。
『懐かしい顔を見るとホームシックになるだろう。使うかどうかは自分で決めるといい』
日本語で書かれたメモがついていた。この日本語の文字でホームシックになりそうなんですが?もう何年も見たことのない文字。ずっと使ってなかったのに覚えてるもんですね
渡された充電器。確かに見れないのが残念だって言ったけど、手に入るとは思ってなかった。どうしたものか。もう何年も使ってない。両親や友達の顔の記憶も薄れてきてる。もう帰ることができないんだったら見ないほうがいいのかもしれない。でもやっぱり見たいな。それにサイラス様の動画もある。
「悩んでるんだったらゆっくり考えたらいいですよ。今日も畑に行くんでしょう? 」
そうだった。畑に行かなければ。充電器は逃げないんだからゆっくり考えよう。
スイカは順調に育ってる。毎日行く必要はないけど、する事もないので通ってる。
ふふん。昨日花が咲いたんですよ。あと少しです。




