15 手紙
「カホ様これからどうしますか?」
だいぶ離れたところに来たとはいえ、まだ『かくれんぼ』はしたままです。とても『マジックショップナナミ』に行く気にはなりません。
「宿も知ってるみたいだし困ったわね」
しばらく考えて決意しました。
「どこか人の多い食堂にでも行きましょう」
「それなら昨日のウータイ焼きの店にしませんか? ここから近いし、大勢の人がいます」
「そうね。そこだと分かりやすいからいいかも知れないわ」
様子を見ながら『かくれんぼ』をといていく。急に現れるのではなく、徐々に現れる感じだから気づかれない。
【青の海月亭】の宿屋に着くとホッとした。食堂の方に入っていく。
「カホ様。ここの宿屋に泊まりませんか? 昨日まで泊まってたところは前払いで10日分払ってるから、そのままにしときましょう。きっとあの宿屋を監視してるから、当分気づかれないです」
「空いてるかしら? 人気あるみたいだけど」
「ここでお待ちください。聞いてきます」
マリーもショックから立ち直ったみたいです。いつものようにテキパキしてます。
店員さんが注文に来たので
「お好み焼きのスペシャルを2つお願い」
と頼んだ。その後アイテムボックスから封筒と便箋を取り出した。勇者タケルに直接届く封筒です。 急いで助けを求める手紙を書きます。なるべく迷惑はかけたくなかったけど、マリーも一緒にいるのだからそうも言ってられません。
【突然ですみません。カホです。今はタケル様に紹介されたウータイの青の海月亭にいます。先ほど命を狙われました。侍女も一緒なので、彼女を巻きこみたくないです。どうか助けてください。お願いします】
一方的な手紙です。来てくれないかもしれません。でも他に頼れる人はいないのです。わずかな望みをかけて封筒に封をしました。手紙は封をするといつものように消えました。
「一部屋空いてました。10日ほど泊まる事にしてます」
マリーが帰ってきました。同時にお好み焼きも出来たので食べることにします。
「ソースがウータイ焼きと同じなんですね。このマヨネーズとかいうのかけると違った味になるんですね。半分はソースだけで、もう半分はマヨネーズもかけて食べます」
マリーはお好み焼きも気にいったようです。私も久しぶりのお好み焼きに嬉しさを隠せません。
「おいおい、呑気だな。女ってのは命を狙われてても食欲あるんだから本当にすごいよ」
頭上からタケル様の声がします。今手紙を出したのに早いです。口にソースがべったり付いた間抜けな顔で久しぶりの再会をする事になりました。