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12 マリッジブルー?ーサイラスside



「どこにいるかわかったのか?」


俺は侍女のメリーに聞く。メリーは少し考えた後に


「海の上のようです」


と言った。この双子はどこに相手がいるのかわかるらしい。前は笑ってそんな事は信じないと言ってたが今は藁にもすがる思いだ。


カホがいなくなって2日になる。騒ぎになるとカホが帰れなくなるから、いなくなったことは内緒にしている。誘拐ではない事は置き手紙で証明されているし、侍女のマリーが付いて行ってるから家出した事は事実のようだ。


女というのは本当にわからない。プロポーズを承諾したと思ったらいなくなる。どういう事なんだ。俺をからかってるのかっと揺さぶってやりたい。


メリーに言わせると結婚前も女性にはよくあることらしい。


「マリッジブルーとかそういうものですよ。女は結婚が決まると不安になるんです。そっと見守る事も必要です。特に彼女は5年も籠の中にいたようなものなんですから、結婚前に息抜きさせてあげるのも男の甲斐性ですよ」


確かにずっと王宮の一室に閉じ込めていたのだ。もちろん本当に一室に閉じ込めていたわけじゃない。庭にも出れるし、たまに街にお忍びで行くこともあった。でも狭い世界にいたことも事実だ。学校に通わせることもしなかった。


勇者タケルに最後に言われた言葉を思い出す。


「こんなとこに閉じ込めてお前だけしか見ないようにして、それで自分を選ばせることが正しいことなのか? それで満足なのか? そんな事してるといつか逃げられるぞ」


勇者タケルが同じ世界から来たカホに会いに来た時、俺は初めてカホに愛情を持ってることに気づいた。それまでは妹のように思っていると勘違いしていた。ーー勇者タケルに攫われるのではないかと不安に思って、初めて気づいたのだ。


最後に言われた言葉に内心ビクッとした。だがカホが勇者タケルの所に行こうとしなかったから安心してた。自分を選んでくれたと思ってた。間違いだったのか?


「クリスティーナ様には連絡しなくていいんですか?」


メリーが尋ねてくる。


「いい。彼女はカホのウェディングドレスを作るので忙しいから、しばらくは大人しいだろう」


侯爵令嬢の趣味がドレスをデザインして作ることだと誰が思うだろう。しかもカホのドレスを自分に作らせてくれってパーティーで会うたびに言ってきて、俺がどれほど苦労した事か。結局一枚だけということでデザインされたドレスはカホによく似合ってた。それでカホの服はどれもこれもクリスティーナのデザインになった。とうとうウェディングドレスまで自分にデザインさせろって言ってきて余計にうるさくなった。まあ、ある事を条件に認めたのだがね。そんな俺たちを見て結婚が間近だと勘違いしてくれた人が多くいて助かったのは事実だ。隠れ蓑にうってつけだった。


「今はここにいない方がカホ様も安全です。命が狙われてるんですから。まだ犯人は特定できないんですか?」


「俺がカホと結婚するって事を知ってるのはごく少数の人間だ。それなのに誰が彼女の命を狙ってるのか全くわからない。ーー確かに今はここにいない方が安全かもしれないな」


俺が呟くと


「そうです。犯人がわかってから迎えに行く方がいいです。きっと迎えに行かれたら喜ばれます」


とメリーは答えてくれた。

本当に? 2日前が何年も前に思えてくる。あの時は幸せの絶頂にいたのに.......。

考えても仕方ないことだ。それよりも彼女の安全のためにも早く犯人を見つけないとだめだ。










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