10 セルビアナ国ウータイ
船の旅は思ってたよりは快適でした。服を着替えると私たちに対する冷たい視線もなくなり、従業員の態度も全然違うものになったのです。
「カホ様。もうすぐウータイにつきますよ」
「もう様付けはやめてって言ってるのに......マリーも頑固よね」
「これはもう癖みたいなものだから治りませんよ。侍女役は目立つので友人同士で旅をしてる感じでいきましょう」
「だったらやっぱり様は変だと思うわ」
「そうですね。人がいるときはさん付けにしてみます」
それなら人がいない時も変えたほうが慣れると思うけどね。本当に頑固なんだから。
マリーとメリーとは城で家庭教師に勉強を習い始めた時からの付き合いです。1人で勉強するのは嫌だなぁ。日本だったら学友が沢山いたのにと言って愚図る私の為にサイラス様が用意してくれた学友なのです。だから2人とはタメ口で話すほど仲が良かったのにいつの間にか侍女になっていて、その途端他人行儀になって寂しかったのです。友達として用意されたクリスティーナ様とはマリーやメリーほどには打ち解ける事が出来なかった。この世界で初めてできた友達は何者にも代えられないのです。
「わー。ここがウータイなのね。活気のある街ね」
「迷子にならないでくださいよ」
キョロキョロしてる私を不安げに見てます。いくら何でもこの歳で迷子にはならないですよ。
「大丈夫よ。心配性ねマリーは」
私が笑って言うとやれやれという感じでため息をついてます。
「はじめに宿を探しましょう」
本当にマリーが一緒にいてくれて良かった。私1人だったら、ここに無事につけたかわからない。
「行きますよ」
動かない私に再度声をかけてきます。
「そうね。早く宿をとらないとウータイ焼きに辿り着けないものね」
サイラス様のいない街。ここで暮らすことになるのだろうか?