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魔力でお金チャージ

「これがリースか」


「はい!」


 大喜びで頷くニーナ。


 彼女から受け取ったものを見つめる。


 米粒大の白い塊で、揺らすと中から水音がした。


「なんか入ってるのか?」


「そりゃ入ってるよ、リースだからね」


 マイヤはおれの手のひらからそれを取り上げて、前歯を使って器用に割った。


 綺麗に真っ二つになったリース、殻の中から透明の水みたいなのがあふれた。


「こうやって割って、味を楽しむものさ。中の水は甘いけど、殻はとんでもなく苦いんだ」


「へえ、どれどれ」


「あっ――」


 リースを一粒口の中に放り込んで、かみ砕いてみた。


「――――――ッッッッ!」


 瞬間、この世のものとは思えない味が口の中に広がった。


 いや味なのかもわからない。


 何かが口の中で爆発して口を占拠した。


 何もないのに、何かがでっかいものがそこにあるような感じ。


 プシニーを口の中に詰め込んだ、そんな感じだ。


「――――」


 しばらく経ってもうめき声すら出なかった。


「あーあー、いわんこっちゃない」


「ご主人様!」


 ミラが慌てて水を持ってきた。


 ひったくるようにして、一気に飲み干す。


 それでも足りない、ミラに目配せしてもっともってきてもらう。


 水を五杯、一気飲みしてようやく人心地ついた。


「なんじゃこりゃ」


 あまりの苦しさにあふれてしまった涙を拭う。


「そういうものさ。ただし殻を上手く割れた時に出てきた汁は甘くおいしいのさ。それを使って作ったのがマガタン伝統の酒ってこさ」


「なるほど……」


 深呼吸する。


 気を取り直して、ニーナをみた。


「これを生産するのに成功したのか」


「うん! えっと、半分くらい?」


「半分くらいってどういうことだ」


 もったいぶった言い回しに、おれは首をかしげた。


     ☆


 ミラ、ニーナの二人と一緒にリベックの外に出た。


 泉に代わるおれの銅像の加護範囲を出た直後のそこに、大きなたるがいくつもあった。


 近づいて、たるの中をのぞき込む。


「なんだこれ……水か?」


 指ですくって舐めてみた。


 無臭無味の、綺麗な水だ。


「これがどうしたんだ?」


「第二奴隷様」


「うん。いいかな、ご主人様」


 ニーナ、ミラ、おれという遠回りをした。


 ミラは奴隷カードを取り出して、地面に魔法陣をはった。


 そこにニーナが一粒のリースを置いて、更にたる二つ分、多分100リットルくらいはある水を注いだ。


 水を注いだあと、魔法陣が光る。


 リースの粒と水を包み込んで……植物になった。


 盆栽のようなミニチュアサイズの木に、びっしりとリースが生えてる。


「ふむ、これで出来たのか」


「ちがうよ王様、ここから一日待つの」


「うん?」


「よく見て、リースが灰色でしょ」


「ああそうだな」


「収穫するのは白になってからだから。これで作ってから一日待たないといけないんだ」


「なるほど」


 頷く。


 リースの一粒と大量の水で、収穫直前のリースの木。


「これは何回でも収穫出来るのか?」


「ごめんなさい、何故か収穫したら木の方が枯れちゃうの」


「そうか。いや別にいい」


 シュンとするニーナの頭を撫でてやった。


「よくやった。生産できるだけで大したもんだ」


「ほんとう?」


「ああ、褒美に一枚やる」


 折り紙メダルを一枚、彼女に渡した。


 ニーナは大喜びする。


「ご主人様」


 ミラが話しかけてきた。


「これ、あんまり良くないと思うんだ」


「なんでだ」


「だって、使う水が多すぎるよ」


「確かにな」


 目測だけど今のに必要な水は100リットルくらいだった。


 試しに作ってみる分にはいいけど、大量生産するとなるとまずは水を確保するところからはじめる必要がある。


「そういえば魔力は?」


「そっちは普通、これ一個で500」


「ふむ」


 ミラの返事をDORECAでも確認した。


 今のところ、銅像をのぞいて造れるものは全部おれのDORECAでも確認できる。


 リースの木、確かに必要魔力は500で、たいしたことはない。


「水を確保せんといかんか」


「そうだご主人様! 海だよ、海」


 興奮気味に、さも妙案だとばかりに話すミラ。


「海か……」


 言いたい事はわかるが、それムリな気がする。


 なぜなら、DORECAに表示されてる素材は「真水」だからだ。


     ☆


 マガタンの町の外に三種類の魔法陣をはった。


 魔物を防ぐカカシ兼任のイリヤの泉。


 大量生産するためのリースの木。


 そして、水を安定して大量供給するためのわき水(特大)。


 わき水(大)そのものを素材にするわき水(特大)はかなりの勢いで水をふきだしている。


 リースが大量消費してもびくともしない程の量だ。


 畑を作るのは最初の町にちょこっとやって以来だな。


 それをなんとなく思ってると。


「アキトさんすごい。こんな事もできるんだ」


「流石王様」


「いつみてもその魔術的手腕にほれぼれじゃ」


 町長ゲラシムに率いられてる町民は口々に言った。


 感謝の大合唱だ。


「とりあえずこんな感じでやれば明日には収穫できる。ただし一回限りだ。収穫後は新しい魔法陣を張らねばならん」


「はい!」


「ちなみに金をとるぞ、これは基本的な衣食住じゃないからな」


 いうと、ゲラシムも他の町民達もはっとした。


 はっとして、「そういえばそうか」と口々に言い合う。


 おれの基本スタンスが浸透してて何よりだ。


「どれくらいですか?」


「リースの原価、その三割でいい。魔法陣を張った後はそっちの仕事だからな」


 ゲラシムは背後にいる町民をみた。全員が無言で頷いた。


 決まりだな。


「はい! ありがとうございます! アキトさん」


「「「ありがとうございます!」」」


 これで一件落着、だな。

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