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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第十章 ブラックとノーマル
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二枚のカード

 王都リベック。


 宮殿の中、おれの前にライサがいた。


「お呼びですかご主人様」


「ああ、お前にやるものがある」


「わたしに?」


「これだ」


 ミラとリリヤ、二人に作らせた首輪を差し出した。


 ライサのためのワンオフ品、紫色の宝石が輝く首輪。


 それを彼女の目の前に突き出した。


「これは……みんなと同じの?」


「そうだ。これをお前にやる」


「――っ」


 ライサは息をのんだ。


 口元を両手で押さえて、涙がにじみ出ている。


 うれし涙――なのは言うまでもないことだ。


 普通の奴隷ならこのまま押しつけたが、彼女の場合儀式が一つ必要だ。


「ただし、条件が二つある」


「な、なんですか?」


 食い気味のライサ。


「一つ。お前の娘もおれの奴隷にする事」


「いいのですか!?」


 更なる驚きと喜びを見せる。


 エターナルスレイブとして望んでること、彼女も例外ではないみたいだ。


「本当だ。どうだ」


「もちろんです! 娘も奴隷にしてください!」


 しなかったら一生呪ってやるから、くらいの勢いで言われた。


 こっちは予想がつく、言う前からこうなるってわかってた。


 彼女はエターナルスレイブ、奴隷達の思考はいい加減わかってきた。


 だからおれは二つ目の――本命となる踏み絵を突きつけた。


「一つ。聖夜を完全にきること」


「――っ」


 また息を飲んだ、今度は違うヤツだ。


 元のご主人様である聖夜。それを完全に見限って、裏切っておれのものになる。


 これはわからない。


 エターナルスレイブにとって、前のご主人様(聖夜)今のご主人様(おれ)、とっちを取るのかはわからない。


 目を見開いたままおれをじっと見つめるライサ。


 おれは待った。


 答えを促すことなく、首輪を持ったまま待った。


 こっちが無理矢理出させた答えじゃない、奴隷の心からの答えが欲しい。


 だから待った。


 永遠ににも思える一瞬のあと、ライサは真剣な顔でおれの手から首輪を受け取った。


 それを、自らの首につける。


 宝石が光って、体と一体化する。


 いいんだな――とは聞かなかった。


 ここまでした奴隷、疑う必要もあえて確認する必要もない。


 それがエターナルスレイブ――この世界の奴隷だった。


「よし。早速だが仕事だ」


「はい!」


 おれは何事もなかったかのように、奴隷のライサに命令をした。


 彼女も何事もなかったかのように、頷いておれの命令を遂行した。


 何もなかった。


 魔力のチャージが一秒間で2に上がった以外、何も変わらなかった。


 ご主人様と奴隷、その、ありふれた日常の光景があるだけだった。


     ☆


 事は、ライサの知らないところですすめられた。


 夜、リベックの外。


 駐屯してる女達のもとにおれはやってきて、マイヤと密会した。


「犯人を捕まえたよ。あそこにいる」


 マイヤが離れた所にある檻をさした。


 遠目からじゃよく分からない。男がひとり入っている事くらいしかわからない。


「証拠は?」


「現行犯でつかまったのさ。宮殿のまわりに火をつけようとしてるところをね」


「自白は?」


「支離滅裂だけど、あんたにくさでやったってのが強く伝わってきた」


 そうか。


 おれは檻の方をみた。


 向こうもこっちに気づいて、檻をガッシャンガッシャンならしてきた。


 無視した。――もういい。


「悪いが、後は任せていいか?」


「いいのかい?」


「ああ、それでいい」


「わかった。後はあたいがやっとく」


「わるいな。あんた達との約束、今度果たさせてくれ」


「期待してるよ」


 マイヤはにこりと笑った。


 いい女だ。


 おれは立ち去ろうとした。もうここにいる必要はない。


「そうだ、これを渡しとくよ」


 マイヤはそう言って、一枚のカードを渡してきた。


 ノーマルの――DORECA。


「取り上げといた」


 どうやらおれの答えは予想されてたみたいだ。


「これ、あんたが持ってた方がいいんじゃないのか」


「そうだな、そうする」


 おれはDORECAを受け取った。


 DORECAは光って、しかし何も変わらなかった。


「メニューオープン」


--------------------------

種別:ノーマルカード

魔力値:0

アイテム作成数:0

奴隷数:0

--------------------------


 新しい、まっさらなDORECA。


 これが何の役に立つのか、今はまだわからない。


 おれはそれをポケットに入れた。


「じゃあ、後は任せる」


「まかせな」


 そう言って、おれはその場を後にした。


 背後でわめく男の声を最後まで無視して。


 これで、DORECAを持つの(ご主人様)はおれだけになった。

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