母娘奴隷
「ミラ、ジュース取ってきてくれ」
「はい!」
――魔力を5,000チャージしました。
「リリヤは何をすればいいのですの?」
「リリヤはそうだな……マッサージを頼む」
「はいですの!」
――魔力を30,000チャージしました。
よく晴れた砂浜で、おれは二人の奴隷をこき使っていた。
前回の、リーシャと一緒に来たときの反省点を踏まえて、今回は最初から二人をこき使った。
おれは浜辺に寝っ転がったまま何もしない。
「ご主人様! ジュース持ってきました!」
「飲ませろ」
「はい!」
――魔力を5,000チャージしました。
何から何まで奴隷にやらせて、おれ自身は指一つ動かさなかった。
その間、二人から魔力がどんどんチャージされる。
命令すればするほど二人は喜んだ。
奴隷として動き回る事を喜ぶ二人、おれは次から次へと命令する。
ミラとリリヤ。
二人とも朝から一刻たりとも休んでいない。
なのに顔は喜んでる。汗だくになりながらも笑顔のままだ。
「おにーちゃん、風が出てきたですの」
「うん? いわれてみると……雲も来てるな」
空を見上げた。
風がかなり吹いてるせいか、雲がものすごい勢いで流れてくる。
遠くに黒い雨雲も見えてる。
雨が降りそうになって、風が冷えてきた。
「……リリヤ」
「はいですの?」
「こっちに来い」
そういって手招きする。
リリヤは首をかしげつつも素直にやってきた。
手を引いて、バランスを崩してきたリリヤを抱き留めた。
「おにーちゃん?」
「じっとしてろ」
「え、えええ? どうしたんですのいきなり」
「あったかい」
抱き留めたリリヤの耳元でささやく。
すると、体を強ばらせていたのが、ふっと力が抜けていった。
――魔力を100,000チャージしました。
「……」
「リリヤの体、温かいですの?」
「ああ、それに……」
スンスン、と鼻を鳴らした。
「いいにおいだ」
「そ、それは……汗臭いですの」
「そうか?」
おれは更に匂いを嗅いだ。
「汗のにおいなのか? これって」
「え? はいですの、リリヤには――」
自分でもスンスン、と鼻を鳴らすリリヤ。
「汗の臭いに感じますの」
「そうか」
おれの鼻だと汗の――いわゆる汗の臭いに感じなかった。
森の……草花のいいにおいだ。
エターナルスレイブはこんないいにおいをするのか。
「いいにおいだ」
素直な感想を口にした。
「本当ですの?」
「ああ、おれは好きだ」
「……良かったですの」
ほっとするリリヤ。
しばらくリリヤを抱きしめた。
風が冷たくて、でもリリヤの体は温かくて。
エターナルスレイブのいいにおいもして、心地よかった。
「そういえば」
おれはふと、思いついたままのことを口にだした。
「エターナルスレイブってどうやって子供を産むんだ?」
言ってから「しまった」と思った。
この状況でその質問だと「そういうつもり」に聞こえる。
慌てて言い換えようとしたが、リリヤは普通に答えた。
「普通に産みますの。殿方と生殖行為をして、子供ができて、それで産みますの」
「……そうか」
露骨すぎる言い方のおかげで、おれは冷静になった。
「ただし」
「ただし?」
「エターナルスレイブからはエターナルスレイブしか生まれませんの」
「そうなのか?」
「はいですの」
それは驚きだ。
リリヤが冗談を言ってる様には聞こえない。もともと奴隷達はおれに嘘なんかつかない。
どういうメカニズムになってるのかは知らないがそういうことらしい。
「なるほどな」
「リリヤもそのうち子供を産みますの。産んだ子供もおにーちゃんの奴隷にして頂くのが夢ですの」
「へえ」
「親子二代で同じご主人様の奴隷にしてもらうのが夢ですの」
珍しく「ご主人様」って言葉を使ったリリヤ。
その分の気持ちが伝わってくる。
「リリヤはそう思ってるのか」
「違いますの」
「うん?」
「みんなですの。リーシャお姉様とミラお姉様、それにユーリアお姉様。みんなそう思ってますの」
「……へえ」
「おにーちゃんは最高のご主人様だから、自分の子供も仕えさせたいですの」
「エターナルスレイブはそう思うのか?」
「はいですの! 母娘で同時に奴隷になるのが最高の名誉で喜びなんですの」
「そうか」
健気な奴隷だ。
正直驚いた、そういう発想はなかった。
だが彼女達らしい、いかにもエターナルスレイブらしい。
だから、すぐに納得して――同時に快く思った。
「わかった、子供ができたらその子も奴隷にしてやる」
「本当ですの?」
「ああ、約束する」
「……」
「リリヤ?」
呆けるリリヤ、どうしたんだろう。
疑問に思ったが、理由はすぐにわかった。
――魔力を1,000,000チャージしました。




