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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第十章 ブラックとノーマル
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鼻血の錬金術師

 リベックの町、最初に作った公園。


 そこに、待ち合わせの相手が既に来ていた。


「会いたかったです王様プーー」


 おれの顔をみるなり小走りでやってきたニーナが途中で鼻血を吹いて、そのままの勢いでヘッドスライディングした。


 いきなりの事で反応できなかった、鼻血を出して顔から地面に突っ込むニーナを見て困った。


「えっと……」


「らいひょうふれふおうはま!」


「いや大丈夫じゃないだろ……とりあえずこれ飲んどけ」


 常備してる万能薬をニーナに渡した。


 受け取って、ごくごくと一気に飲み干す。


 怪我や病気をあっという間に直してしまう魔法アイテム、万能薬。


 それはもちろんニーナにも効いた。


「ありがとうございまプーーーー」


 直った直後からまた鼻血を吹く、クジラの潮吹きの如く大量に赤い血をまき散らした。


「ごめんなさい王様、ボク王様と会うの久しぶりだったからつい」


「いいからいいから、とりあえず落ち着け、な」


「うん!」


 また鼻血を吹いた、わかってない。


「とりあえず深呼吸してみろ」


「わかりました!」


 スーハースーハーと深呼吸した。


「……落ち着いたか」


「はい!」


 全然落ち着いてなさそうだが、鼻血は止まったしとりあえず良しとするか。


「それで、ミラから話を聞いたけど、消火用のアイテムを開発したみたいだな」


「はい!」


「どんなのだ?」


「これです!」


 ニーナからそれをもらった。


 小さな四角い箱、その上に乗っかってる丸くて赤いボタン。


 そして、どくろマーク。


「……これは?」


「それが消火用のアイテムです」


「いやこれってどう見ても」


 ……アレだよな。


「これをこうするんです」


 ニーナはそれを受け取って、近くの民家に駆けていった。


 ノックをして、出てきた住民に何かをいう。


 おれの方をさして何か言ってる。


 住民は頷く、何かを受け入れたのか?


 ニーナは隣の家にもノックして、同じように出てきた住民に交渉した。


 何をするつもりなんだ?


 しばらくして、ニーナが戻ってくる。


「交渉終わりました王様」


「交渉? 何をするつもりなんだ」


「みててください」


 ニーナが再び戻っていき、交渉した二軒の家のうち、片方にさっきのスイッチつきの箱を取り付けた。


 そしてもう片方の家に――火をつけた!


 そして戻ってくるニーナ。


「おいおい、何をするつもりなんだ?」


「消火です、実際に試した方がわかりやすいと思います」


「そりゃそうだが」


 ニーナが交渉した住民達をみる。


 目が合った苦笑いをされてしまった。


 そりゃ……苦笑いもするよな。


 後で建て直してやらんと。


 そうしてるうちに火がますます燃え上がった。つけた方の家はもう手の施しようがないくらい炎上してる。


 もう片方の家にも延焼する勢いだ。


「やりますね」


「ああ」


 ニーナが取り付けた装置の方に向かっていった。


 さて、そのスイッチを押したらどうなるんだ?


 ちょっと期待して、それを見守った。


 ニーナがスイッチを押す。


 次の瞬間、家が砕け散った。


 光の粒子になって立ち上っていき、元から存在してなかったかのように綺麗さっぱりなくなった。


 立ち退きされた住民達がそれを見て「おお」と歓声を上げた。


 ニーナが戻ってくる。


「どうですか王様! ボクが見つけた王様のアイテム」


「えっと、どういうことだ?」


「ほら! あれで燃え移らないですよ」


 得意げになって燃えてる家を指す。


 ああ、なるほど、破壊消火か。


「第二奴隷様から聞きました、もし火事になったとき王様か、奴隷様のどっちかいないと対処できないって」


「……ああ、そんな事いったな」


「なのでこれがあれば大丈夫です! 色々試して見ました、これは王様たちが作ったものだけを壊すアイテムです! 他の物は壊れません! これを大量につくって皆さんに配れば火事の心配がなくなります!」


「……」


 おれは苦笑いした。


 なるほど、そういうアイテムで、そういう用途か。


 アイテムの外観も、いきさつも全部わかった。


 それでも苦笑いを禁じ得ない。予想、期待してた物と違うからだ。


「どうですか王様!」


 ニーナはキラキラした目でおれを見つめた。


 ボクガンバったよね、褒めて褒めて、っていう目だ。


 とりあえず、これはこれですごい、そして便利で使いでのあるアイテムだから、発明(みつけた)ニーナを褒めてやることにした。


「よくやったなニーナ」


「ボク、王様のお役に立てた?」


「ああ、よくやった」


「――やったぁ、王様のお役に立てたプーー」


 興奮してまた鼻血を吹いた。


 ヘタに褒めちゃだめな子だな、ニーナは。


 ニーナは手慣れた様子で止血して、更に話しかけてきた。


「あの、王様」


 もじもじして、おれを見あげるように言ってくる。


「どうした」


「ボク、頑張ったよね。お役にたてたよね」


「ああ」


 それは間違いない。


「じゃ、じゃあ……」


「うん?」


「王様のメダル……ボクも欲しいな」


「メダル?」


「うん、ご褒美のメダル……」


 消え入りそうな声でいう。


「これの事か?」


 何個か常備するようになった折り紙のメダルを取りだした。


 瞬間、目を輝かせるニーナ。


「それです!」


 ……こんなのでいいのか?


「じゃあ、ほら」


 ニーナに渡す。


「やったあああ!」


 ものすごく喜んだ。折り紙のメダルを抱えて踊り出した。


 そんなに嬉しい物なのか、それ。


「ありがとうございます! 王様。これ、ボクの家宝にしますね!」


「お、おう」


 そこまで喜ばれるとちょっと困る。


 大したものじゃないのに。


 ……でも、悪い気はしない。


「家宝にしなくていい」


「えー、でも――」


「その代わり、もっと色々発明してくれ。いいものができたらまたくれてやる」


「――うん!」


 ニーナが頷く、満面の笑顔で頷いた。


「ボク、もっともっと、もっともっと頑張るプ――」


 興奮しすぎてまた鼻血が出た。


 なんか、鼻血吹いてる姿の方がかわいく見えてきた。

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