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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第十章 ブラックとノーマル
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支援or侵略?

「ふう、これで三匹目、と」


 町から相当離れた荒野、ドラゴンの巨体が崩れ落ちていく。


 真・エターナルスレイブから、念のために連れてきたユーリアを解放する。


「す、すごい……」


 背後からスベトラーナの驚嘆する声が聞こえてきた。


 念のため、というのは彼女の事だ。


 どうしてもついてくると聞かないから、いざって時なんとかできるようにユーリアを連れてきた。


 ユーリアが真・エターナルスレイブの中にあれば色々と先読みできる。


 まわりの人間を守るのに適した能力だ。


「それで、これをどうするのだ?」


「まってろ」


 ドラゴンを解体して、竜の血を手に入れる。


 DORECAを取り出して、魔法陣を張って、竜の血を投入。


 すると、札束ができた。


 単位を「エン」にした、おれの国で流通してるお金だ。


「すごい……」


 またまた驚嘆するスベトラーナ。


「そんなにいちいち驚いてたらキリがないぞ。


「いや、しかし」


「それよりも、ほれ」


 札束を一つ取って、彼女に放り投げる。


 慌ててキャッチする。


「それが欲しかったんだろ」


「あ、ああ」


 頷くスベトラーナ。


「しかし……これは、うーん」


 スベトラーナは困っていた。


「どうした」


「頼んでおいてなんだが、これはものすごく貴重なものではないのか? その、ドラゴンで作るのだから」


「なるほど」


 スベトラーナの言いたいことはわかった。


 彼女が持ってきた女王の親書は交易を頼む物だが、その理由は国内の貨幣事情にあった。


 どうやら国を作った後貨幣を造ったらしい。


 それも中世の様な、銅貨、銀貨、金貨という形でだ。


 それを作ったのはいいが、そもそも再生途上のこの世界で、普通の手段で硬貨を作るとかなりのコストがつく。


 銅貨でさえ――一枚当たりおれの国での一万円以上の価値を持つ。


 大口の取引にしか使われなくて、ほとんどが国民の家に眠ったまま。


 高いコストを払って採掘して、鋳造までしたのに使い物にならない。なるには更にコストをかけて大量に生産しないと行けない。


 そんな余力が国のどこにもない。


 そこで聞きつけたのが、おれの国のお金だ。


 今、世界で唯一潤沢に流通して、貨幣経済が成り立ってるのがおれの国。


「気にするな、見ての通りドラゴンは問題なく狩れる。それよりもこれであんたらからものをかえばいいんだな」


「そうだ……」


 交易というのも方便で、自分の国におれの「エン」を導入したい。


 そういう「懇願」だ。


「ありがとう。たすかる」


「交易だろ。こっちが金をだす、そっちは品物をくれる。それだけの話だ」


「ああ、ありがとう」


 それでもお礼を言われる。


     ☆


 翌日、リベックの宮殿、執務室の中。


 リリヤが部屋に入ってきて、報告をした。


「おにーちゃん、あの女が帰ったですの」


「スベトラーナか」


「はいですの、おにーちゃんの命令通り親衛隊を護衛につけましたの」


「それでいい。一億エン渡したからな、何かあったら大変だ」


「……」


 リリヤがおれをじっと見つめてくる」


「なんだ?」


「おにーちゃんはあのお金で何を買うつもりですの?」


「まだ決まってないな」


「決まってないんですの? なのに前払いしちゃうなんて……正気の沙汰じゃありませんの」


「そう思うか?」


「はいですの。おにーちゃんはお人好しですの」


「……そうでもないぞ」


「はいですの?」


 きょとんと小首を傾げるリリヤ。


 彼女はわかっていないようだ、国にとって、貨幣を自前で生産できないのがどれだけまずい事なのかを。


 その気になれば実質侵略する事もできる。


 というか……そうなればいいかなと思ってる。


「なんでもない。まっ、食糧か衣類を輸入すればいいと思ってる」


「衣食住なんですの? なるほどいつものおにーちゃんですの。少しは安心しましたの」


「それか」


「それか?」


「金で侵略するか、国ごとかってしまうか、という選択肢もあるな」


 リリヤは一瞬きょとんとしてから。


「それがいいです!」


 と、食いついてきた。


「おにーちゃんの国民になった方が向こうの人も幸せですの! うん、まちがいないの」


 おれが苦笑いするほど、リリヤはそれに食いついてきた。

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