初めての手作り
次の日の朝、おれは紙を作って、そこにあみだくじを書いた。
縦の線を四本まず書いて、間に適当な横線を引いて、そこを折りたたむ。
書いたおれでもどこがどれに繋がってるのかわからないようにしてから、下の方に文字を書き込んだ。
それをリーシャに見せる。
「1から4番、どれがいい?」
「わたしが選ぶのですか?」
「ああ、これで今日のお前の水着が決まる」
「じゃあ一番で――えええ?」
「一番だな、よし分かった」
おれはあみだくじをやろうとしたが、止められる。
「ちょ、ちょっと待ってくださいご主人様。水着ってどういうことですか?」
「だからお前が着る水着の事だよ。メニューオープン」
DORECAからリストを出して、リーシャに見せる。
「ほら、女物の水着が四種類あるだろ? この中のどれかを着るためのあみだくじだ」
「そんな、わたしなんかが水着を――」
「あの砂浜は水着以外立ち入り禁止な」
変に遠慮しだしそうだから無理矢理そう言った。
「えええええ?」
「それじゃいくぞ、一番一番っと」
「ま、待ってくださいご主人様」
リーシャは慌てておれを止めた。
「どうした?」
「その、一番ってどの水着なのですか? もしかしてこれじゃ……ないですよね」
おそるおそるおれに聞くリーシャ。
DORECAで出したリストに動画が流れてて、そこに水着が映し出されてる。
流れてるのはV字型のほとんど紐のような水着。
露出度が高くてかなりグッドなやつだ。
「それをこのあみだくじで決めるんだ。こんな風に」
リーシャが選んで一番のスタートから指でなぞって、折り目のところまで進ませる。
「これをやって下まで行って、よっつの内のどれかをきめるんだ。ちなみにおれももうどこがどこに行くのかわからない。完全ランダムだ」
「そんな……あの、ご主人様、他の三つはどんな水着なのですか?」
「それは当ったときの楽しみだな。ああ心配するな、他の三つはどれもこいつよりは布地が多い」
「そうなんですね……」
リーシャは見るからにほっとした。
やっぱり紐水着の布地の面積が気になるんだな。
「ふむ。もう一回選ぶか? どっちにしろあみだくじだからランダムだけど」
だまし討ちみたいなやり方だったからな。
一回くらいは選び直すチャンスをあたえてやろう。
「……いえ」
リーシャはちょっと考えたが、首を横に振った。
さっきまで慌ててたのが嘘だったかのように、落ち着き払った、真顔で答えた。
「これを選んだのはご主人様のご恩寵。だからこのまま行きます」
「そうか」
微笑み返してやった。
相変わらず健気でいい子だ。
「じゃあはじめるぞ」
「はい」
「あみっだくじ、あっみだくじ……」
口ずさみながら、指でなぞっていく。
折り目を少しずつ開いて、あみだくじを降りていく。
ごくり、って音が横から聞こえた。
やがて、指がゴールにたどりつく。
「ふむ」
「どうですかご主人様」
「喜べリーシャ。四つの内で一番布面積が多いヤツだ」
リーシャはほっとした。
「さて、作るか」
DORECAからそれを選んで、魔力のみで生産する。
女物の中でもダントツの布面積を誇るもの――スクール水着を。
☆
青い空、白い砂浜。
海パン一丁のおれは魔力でパラソルを生産した。
まわりにヤシの木を植え付けたこともあって、昨日やってきたときの荒涼な感じは完全になくなってて、一気に南国の砂浜っぽくなった。
かなりいい感じだ。後でジュースとか出せばもっといい感じになりそうだ。
他になにか必要なものは――。
「ご、ご主人様」
リーシャの声が聞こえた。
おずおずとおれに話しかける、恥じらいのこもった声。
ふりむく、リーシャがいた。
格好がエロかった。
上はシャツ一枚である。いつも着てるドレスはおれが没収したが、どうやらおれがおいてったシャツを羽織ったようだ。
それで大分隠れたけど、股の間から水着の布地がちらちらと見える。
丸見えより大分エロかった。
「なんだそれは」
「その……」
もじもじするリーシャ、いかにも恥ずかしそうって反応だ。
「は、恥ずかしい、です」
「そうか、わかった」
リーシャはほっとした。
「なら上を脱げ」
「えええええ」
「それはおれのシャツだ、貸すともやるとも言ってない」
ちょっと強めに言ってやった。
もちろん怒ってはない、むしろ逆だ。
水着の上にシャツを重ね着というのをナチュラルにやったリーシャを褒めてやりたいが、それはそれ、これはこれだ。
じっと見つめて、目で促す。
リーシャは恥ずかしそうにもじもじしながら、シャツを脱いで水着姿になった。
紺色の生地に、胸もとに「りいしゃ」と書いた白い布が縫い込まれてる。
完璧な、非の打ち所がないくらいのスクール水着だ。
スタイルのいいリーシャとスクール水着、そのアンバランスさがかなりイイ感じ。
いつまでもじっと見てたいくらい素晴しい光景だ。
「そ、そんなにじろじろ見ないでください」
「見ちゃダメなのか? ご主人様が奴隷を見ちゃだめなのか?」
「そ、そんな事はありませんけど……」
頬を染めてうつむくリーシャ。
普段ならば「ご主人様と奴隷」を持ち出すとすぐに陥落するんだけど、今日はそうはならないで、思いっきり恥ずかしがった。
それが新鮮で、楽しかった。
「よし、じゃあはじめるか」
「はい」
頷くリーシャ。
おれはその場でごろん、と横になった。
さらさらの砂、べっとりしてないそこはそのまま寝っ転がっても気持ち良かった。
寝っ転がって、目を閉じて、海の音を聞く。
結構安らぐな。
「あの……ご主人様?」
寝っ転がったまま見あげる。リーシャが不思議そうにおれを見ていた。
「なんだ?」
「はじめるん……じゃないんですか」
「はじめてるぞ。休むのをはじめたんだ」
「なにかしないのですか?」
「しない、このまま休んでるだけ」
「はあ……」
リーシャはわからないって顔をした。
だったらわからせてやるまでだ。
「リーシャ。そこに座れ」
「はい」
リーシャは言われた通り座った。
おれは体をずらして、頭を太ももに乗っけた。
膝枕だ。
「じっとしてろよ」
「……はい」
――魔力を5,000チャージしました。
リーシャは優しく微笑んだ。さっきまでの恥じらいはどこへやらだ。
膝枕したまま、聞く。
「その水着は恥ずかしいか?」
「その、ちょっとだけ」
「他のにするか?」
「えっと……」
「うん?」
「その……できればこれと、紐みたいなの以外のがいいです」
「ふむ。メニューオープン」
DORECAを取り出して、水着を見た。
残った二つの水着、どれがいいのかと考える。
片方は普通のビキニで、もう片方はパレオ――腰布がついたタイプだ。
どっちもいいけど……どっちにしようか。
「あ、貝殻」
「うん?」
リーシャの視線を追いかけた。
波打ち際にホタテのような貝殻があった。
おれは体を起こした。
「リーシャ。あれを拾ってこい。三枚くらいだ」
「わかりました」
リーシャは何の疑問も持たないまま拾いに行った。
待ってる間魔力で紐を作った。
「これでいいですかご主人様」
「貸してみろ。うん、丁度いい」
「それをどうするんですか?」
「見てな」
貝殻に穴を開けて、紐を通した。あっという間に貝殻のビキニができあがった。
「ほら、これやるよ」
「ありがとうございます」
受け取ったリーシャ。
最初はキョトンとしたが、受け取った物を二度見して、やがて頬が緩んだ。
「ご主人様が作って下さった物……」
とつぶやいて、貝殻ビキニを愛おしげに抱きしめた。
――魔力を100,000チャージしました。
「嬉しそうだな」
顔もそうだし、魔力も多めだ。
「ご主人様が作って下さったものだから……カードでじゃないものははじめてだから」
うん? そうだったかな。
そうかもしれない。
「まあ喜んでもらえてこっちも作った甲斐がある」
「ありがとうございます!」
「それよりも着替えてきてくれ」
「着替える、ですか?」
きょとんとするリーシャ、何の事かわかってないって顔だ。
貝殻ビキニを指して、言った。
「それ、水着だから」
「えええ?」
「せっかくだから着替えてみろ」
「で、でも……」
リーシャは躊躇したが、やがて観念して、貝殻ビキニに着替えた、
「ご主人様の……」
――魔力を50,000チャージしました。
スク水ほどエロくはならなくて、その分リーシャが微妙に嬉しそうだったから、それでよしとした。




