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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第八章 小国編

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開通

 リベックに戻ってくる。大分遅い夜になった。


 イリヤの泉の範囲外、町のすぐ外で、リリヤに見守られる中、他の素材が揃った魔法陣の中に集めてきた玉を入れる。


 見慣れた光景のあと、列車ができた。


 二十人くらいが乗れる、ミニバス程度の小さな列車が一両。


「できましたの」


「ああ、できたな」


「これがあれの上で走るんですの?」


「そうだ」


 リリヤと一緒に「あれ」をみた。


 おれがリリヤと一緒に素材を取りに行ってる間、残った奴隷の三人に作らせておいたレール。


 一つあたり三メートルくらいのレールが延々と続いていた。


「よし、いくか」


 列車を持ち上げて、レールの上に置く。


 レールを作った後に解禁された列車。


 その経緯があってか、元々ワンセットだ、と言わんばかりに車輪がぴったりレールにはまっていた。


「乗るぞ」


「はいですの」


 リリヤと一緒に乗り込んだ。


 操縦席に向かった。そこはものすごくシンプルで、レバーが一つしかなかった。


 レバーの根元には目盛がついてある。図形から判断して、止まる、低速、中速、高速って感じだ。


 おれはレバーを止るから低速に入れた。


 ガタッ、となった後、列車がゆっくりと動き出す。


 静かに走り出して、窓の景色が後ろに流れていく。


 レバーから手を離した。


「わああ!」


 リリヤが目を輝かせた。


 窓を開ける、穏やかな風が吹き込んでくる。


「すごいですの、これ自分で走ってるんですの」


「そう言うものだからな」


「おにーちゃん、あれを見るですの」


「うん?」


 リリヤがさす方を見る。


 車体の外。玉が残光を引いていた。


 片方の車体につき二つずつ、車両全体で四つ。


 四筋の光をひいて、列車が走っていた。


「素敵ですの」


「そうだな」


 きらきら目のリリヤに相づちをうちながら、おれはレバーを切り替えて、列車の速度を試した。


 メーターとかはついてないから、あくまで体感で。


 低は自転車をかなり強めに漕いだ、時速20キロくらい。


 中は坂道を思いっきり下るうえに漕ぐのを追加した速度って感じだから、時速30キロはある。


 高は同じペースで速度が上がってる感じがして、時速40キロってところだ。


 低だとあの二足歩行の馬とどっこいどっこいなスピードで、中以上ともなるとこの異世界でみてきた中で一番速い乗り物になった。


「リリヤ、どっかつかまってろ」


「え? ハイですの」


 リリヤが近くの手すりにつかまったのを見て、レバーを止めるに入れる。


 列車が止った、割とすんなり止った。


 発進する、高まで入れて速度を上げてから――一気に止る。


 それも止った、最高速度から一気に止った。


「慣性も無視か」


「カンセイですの?」


「いま急に止ったけど、リリヤはつかまってなくても大丈夫だったろ?」


「はいですの」


 それがどうしたのかって顔をする。


 速い乗り物がないこの異世界の住民であるリリヤには、急ブレーキで慣性がどう作用するのかわかってないんだろう。


 だがおれはわかる。


 時速40キロからの急ブレーキでも乗ってる人間はつんのめりもしない。


 DORECAと魔力で作った列車だから、そういう物だとは納得できる。


 できるが……すげえって思った。


 思いながら再び列車を走らせる。


 夜空の下、リリヤと二人で列車に乗る。


「そういえば……」


「どうしましたの?」


「他の三人の姿が見えないな」


 線路はずっと続いていた。


 かなりの確率で途中で線路が切れて三人と出くわすのかなって思ってたけど、そうはなってない。


 線路が続き、列車が走り、三人の姿が見えない。


「おにーちゃんが命令したからですの」


「うん?」


 リリヤを見る。


 彼女は腰に手を当てて、「えっへん」って感じの格好で話す。


「ご主人様として三人にアキトの町までレールをつなぐように命じましたの。だったらレールはきっともう向こうまで続いてますの」


「開通……完成してるって事か」


「はいですの」


「なるほど」


「だから三人のお姉様はアキトの町で待ってるですの」


「そうか」


 そうかもしれないな。


 なんとなくその光景が目に浮かぶようだ。


 三人が一生懸命になって、レールの敷設を頑張ってる姿を。


 もしも本当にもうアキトの町まで繋がってるのなら。


「なんかご褒美をやらないといけないな」


「次の仕事を下さるだけでいいですの」


 リリヤがいかにもエターナルスレイブらしい発言をした。


 優等生の様にも聞こえる、だけど紛れもない本心からの発言。


 彼女達はそういう種族。


 それはそれでいいけど、だからって何もしないというのはあり得ない。


 エターナルスレイブは奴隷としてご主人様に尽くせるだけで喜びを感じる種族。


 それと同じように、おれも全力で尽くしてくれた奴隷をめでてやりたいと思う人間だ。


 絶対に何かやって褒めるし愛でる。絶対にだ。


 やがて遠くから明かりが見えてきた。


 人々が集まってできた町が放つ明かり。


 レールが続いている。


 速度を「低」に落とす。


 ゆっくりと進む。


「――っ!」


「わあ」


 おれは驚き、リリヤが目を輝かせた。


 列車の終点、アキトの町の入り口。


 そこに大勢の人々がいた。


 横断幕が掲げられてる。


 楽器を持つもの達が音楽を奏で始めた。


 歓声があがった、「アキト王バンザイ」と大合唱される。


 熱烈な歓迎だった。


 セレモニー。


 そんな言葉が頭の中をよぎる。


 「止」に入れて、列車を止める。


 列車から降りる。熱烈歓迎! って感じの町民の中からマドウェイが出てくる。


 マドウェイは首に下げるタイプの花輪を持ってる、明らかにおれに使うためのものだ。


 一瞬戸惑って、離れたところにいる三人の奴隷の姿を見つけた。


 おれはピン来た、これは彼女達がしかけた物だと。


 マドウェイ達、民たちをみる。


 わるい気分じゃない、というか逆だ。


 特に楽器。


 あれはおれは作ってない、形がちょっと歪なものもあるから、みんなが自分で作ったものだろう。


 おれの望む町作りが進んでる。


 最低限の環境を整備して、人々が自分の手でよりよい環境に作っていくという方針が形になってきてる。


 だからいい気持ちだ。


「国王陛下」


 マドウェイが進み出て、おれの首に花輪をかけた。


 おれはそれをうけた、ますます気分がいい。


 いいのだけど、不意を突かれたのはちょっとご主人様の沽券に関わる。


 後で、全力で愛でてやる。


 おれはそう、心のなかで誓った。

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