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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第七章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
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決断

 リベックの町、領主の舘。


 会議室に町の長達が集まっていた。


 アキトの町、マドウェイ。


 ビースクの町、アガフォン

 マガタンの町、ゲラシム。


 カザンの町、マルタ。


 ブラガダリューの町、ザハール。


 ペルミの町、マイヤ。


 マドウェイ、アガフォン、ゲラシムはマラートの時からの顔見知りだが、マルタとザハールはここにいる者達とほとんど初顔合わせだった。


 ペルミの町は復興が遅れてて、それが軌道に乗るまでマイヤに代行してもらってる。


 集まったみんなは落ち着いてる。ザハールだけ町長に任命されたばかりで、見るからに緊張してる様子だ。


「報告、はじめて」


 おれの横で進行役を務めるユーリアが促す。


 真っ先にマドウェイに立ち上がって、言った。


「マクシムに襲撃されて壊された場所はほとんど全部直した。最近はその残党が近くに流れてきてる」


「マクシムの残党か」


「やけくそで何回か襲ってきてたけど、全部撃退した。それで今は投降して町に入れて欲しいって言ってきてるけど、どうしたら良い?」


「任せる。町の生活になじめるんならいつも通り最低限の衣食住を与えて、あとはゆっくりと生活に溶け込めるように誘導する。そういうのが難しくてマクシムの略奪癖が抜けないようなら……マイヤに連絡しろ」


「……わかった」


 連絡してのその先は言わなかった、マドウェイも聞かなかった。


 なるべくそうならない様にはするが、本人たち次第なところがある。


 マドウェイが座り、今度はアガフォンが立ち上がった。


「ビースクは最近特に交易が活発になってる。ただお金が、特に紙幣が足りなくなって、それで全部硬貨で払うケースもでてる、紙幣をもっと増やして欲しい」


「わかった、作っておく」


 竜の血がまた大量に必要になるな。


「マガタンは比較的に紙幣の余裕があるかも知れない。と言うのも次のシーズンの税は金で払いたいと九割近い住民から要望が来てるんだ」


「金で払える人はそれでいい」


「それだとアキトさんの所にお金が出戻りする形になっちゃうけど……」


「問題ない」


 むしろこっちが貨幣をどんどん造って流す方が不健全だ。


 税金としておさめて、こっちもその分を使った方がいい。


 そうして、長達が次々と町の現状を報告した。


 ほとんどが一言でまとめれば「順調」って感じで、どの町も軌道に乗りだしたって感じだ。


 DORECAで確認すると、領民の数が七千人を超えている。


 新たに傘下に加わった町が二つ、それにマクシムの残党から吸収した分と、シュレービジュの不定期討伐で増えた分を加えて、会議を始める直前に七千を突破したようだ。


「報告は、以上」


「ごくろう」


「次に、議題が二つ」


 ユーリアが粛々と進行する。


「一つ目は?」


「法律がほしい、ってあっちこっちから意見があがってる」


「法律?」


 きょとんとなって、代表達をみた。


 ほとんど全員がおれを見つめ返して、小さく頷いた。


 マイヤが特に真顔で言った。


「法は必要だよ。あたいら親衛隊が特にそう感じてる。人が増えて、いざこざも増えた。あたいたらはあっちこっちに流れて、たまに逮捕したり仲裁したりっていう事もやるから、そのための法がほしいのさ」


「なるほど」


「それだけではありません。町を維持していく上でどうしても必要になります。今まではみんな生きるのに必死でしたけど、余裕もでてきたので、色々とそういうことが」


 今度はゲラシムが言った。


 マドウェイとアガフォンも同じように街の現状を報告して、法律の必要性を訴えてきた。


「なるほど、話はわかった」


 わかったが、同時に困った。


 法律かあ。


 確かにみんなの言うとおり、そろそろ法律ってのが必要になってくる時期だ。


 七千人もいれば、きっちりした何かが必要だ。むしろもっと早い段階に必要だったのかもしれない。


 だが、おれには作れない。


 DORECAをだして、作成リストを見る。


 当然のことながら法律なんてものはない。


 DORECAには作れないもの、だから丸投げした。


 えっと、こういうのにふさわしいのは……。


「ユーリア」


「はい」


「みんなと相談して作ってくれ。出来た物をおれが最終的にどうするのか決める」


「わかった」


 ユーリアは顔色一つ変えずに頷く。


 法律の策定という面倒臭い事を丸投げされたのに顔色一つかえない。


 他の長たちをくるりと見回す。


「それでどうだ?」


 全員が頷き、声を揃えて「問題ない」と言った。


「それでもう一つの議題は?」


 確か最初に二つあるって言ってたな。


「それはあたしから話す」


 今までずっと静かだったマルタが言った。


 マルタはおれを見つめた。


 ものすごく、出会ってからで一番真剣な顔で見つめた。


 おれも釣られて真顔になった。


 何がくる、と身構える。


「そろそろいい頃だから、アキト、王を名乗ってくんない?」


「……は?」


 身構えてたけど、それは一つ目以上に、予想外で、衝撃的な議題だった。


     ☆


 夜、領主の舘の自室。


 おれはベッドに寝っ転がって、天井を見あげていた。


「王か」


 口にだしてみる。


 異世界転移した時、女神の場所にいた時からその単語はちょこちょこでてた。


 世界を再生して、その王として君臨するという目標を決めて、この世界に降り立った。


 今までずっと再生した後の世界で王になると思っていた。


 それを目標にして頑張ってきた。


 でもよく考えると、それはおかしい。


 戦記物の物語とか、元いた世界の歴史とかみても、世界統一してから王になるというのはあまりなくて、むしろ途中で王になって、さらに世界統一に向かっていくというのがほとんどだ。


 だから七千人を超えて、一万人くらいになるからそろそろ王になって良いんじゃない? というのはわかる。


 逆になんで今までそこに頭が回らなかったんだろう、って気分にさせられた。


 まさに目から鱗状態だった。


 さて、ここで王になるべきか。


 仕事が終わった後、おれは一人で考え続けたが、答えはなかなか出せずにいる。


 こんこん、ドアがノックされた。


「入れ」


「こんばんはですの」


 リリヤだった。


 四人目の奴隷は滑るように部屋に入ってきて、おれの前に立った。


 持ってるトレイの上にコップを乗せている。


「どうした」


「ご主人様にお茶を持ってきましたの」


「お茶?」


「リーシャお姉様が淹れたものですの」


「そうか」


 体を起こして、コップを受け取る

 茶を一口すする……結構うまかった。


 さっぱりして、いくらでも飲めるすっきりした後味のお茶だ。


「茶葉なんてあったんだな」


「ビースクの町の税、現物で納入されたものですの」


「へえ」


 ちょっとビックリ。


 一応報告で順調なのは知ってたけど、こういうのが作れるくらい復興してたのか。


「納入した人がいってましたの。今から一週間くらいが一番のみ頃だから、ぜひおにーちゃん――領主様に飲んでほしいですの、って」


「そうなのか」


 もう一口飲んだ。うん、言われてみると美味いかもしれない。


「お前達も飲んだのか?」


「それはおにーちゃんのためのものですの。奴隷が勝手に飲むわけにはいきませんの」


 にこりと答えるリリヤ。


 なるほど、それもそうか。


 ならばとおれは許可をだす。


「あとで飲んどけ、なかなかうまい」


「ありがとうございますの」


 温かいお茶を何回かにわけてゆっくり飲んだ。


 リリヤはトレイを持ったままおれの前に立って、見守っていた。


 リリヤに話を振ってみることにした。


「話は聞いてるか?」


「何をですの?」


「王になれって話」


「ああ、それですの」


「どう思う? 賛成か反対かで言ったら?」


「リリヤは反対ですの」


「へえ?」


 ちょっとビックリ、まさか反対されるとは思わなかった。


 てっきり「おにーちゃんは王になるのが当たり前ですの」とか言われるのかと予想してた。


「理由は?」


「だっておにーちゃんは神になるのが当たり前ですの。わざわざ王なんかになる必要はありませんの」


 リリヤの理由は予想の斜め上だった。


 流石に神になることは一度も考えた事はない。


「神か」


「はいですの。世界を再生した神がふさわしいですの。王なんて小物になる必要はありませんの」


 リリヤは当たり前の様に言う。自分が話すそれが間違ってるとはまったく思ってない口調だ。


「さすがに神になるつもりはないな」


「そうなんですの?」


「ああ」


「だったらリリヤは賛成ですの。神じゃなかったら王様でガマンしますの」


「そこはガマンなんだな」


 なんかおかしかった。


 茶を飲み干して、コップを返す。


 リリヤは部屋から出て行き、おれは更に考え続けたのだった。


     ☆


 次の日、舘の執政室。


 呼び出されたユーリアが入ってきて、ぺこりと一礼した。


「ユーリア」


「はい」


「みんなに連絡してくれ。王になる」


「わかりました」


 ユーリアは平然と頷き、手元に何かをかきこんだ。


 いつも通り、通常運転だ。


「王にはなる、ただし今までと変わらないし、細かい話は全部任せる。その線ですすめてくれ」


「うん」


 ユーリアが部屋から出て行った。


 王か。なんか実感がないな。


 ユーリア無反応さがそれに拍車をかけてるんだろうな。


 まあ、そのうちなんか実感が出るようになるだろ。


 そう思っていると。


 ――魔力を100,000チャージしました。


 ――魔力を75,000チャージしました。


 ――魔力を180,000チャージしました。


 急に三人分チャージした。


 タイミングからして……ユーリアが他の三人に伝えたのかな。


 四人の奴隷が顔をつきあわせて喜んでる姿が簡単に想像できたのだった。

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