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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第七章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
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町がにょきにょき

 リベックの町、領主の舘。


 おれはDORECAを持って、メニューを眺めながらユーリアから報告を受けていた。


「マクシムのところから救出した一般人。元いた町はばらばらだし、もうない。話をしたら、ご主人様の町に住みたいって言ってる」


「どこかに住まわせるか? それとも新しい町を作った方がいいか?」


「あたらしい町がいい。みんなぼろぼろ、体も心も。別のところにしたほうがいい」


「そうか」


 頷く。


 ユーリアの報告を頭の中でまとめて、整理して、指示をする。


「しばらく町の外れに住まわせとけ、いつものあそこだ。新しい町の場所が決まったらおれが出向いて最初の下地を作る」


「わかった。難民町に移動させる」


 頷くユーリア、手元の紙に何かを書き込む。


 最近はよく一時的に住民を受け入れてて、同じ区画に移動させてるけど、そこに難民町って名前がついたのか。


 というか別の事が気になった。


 ペルミの時と、今回の連中。


 今リベックにいる難民って、元の住民何割になるんだ?


 なんか、普通にやってたら町が破綻する数字になってそう。


 DORECAの魔力残量を確認する。しばらくは破綻する事はないか。


「次、ペルミの人達。町に戻っても、ご主人様についていきたいって代表の人が」


「ついてくるって、ビースクとかと同じで、おれの統治下に入りたいって事か」


「そう」


「わかった。なら基本のルールと、今までの町のことを教えてやれ。おれのやり方はこうだからって教えて、本当に良いのかって最後に念押しで確認しろ。それでも良いのなら今まで通りだ」


「わかった」


 更に手元にかき込むユーリア。


 ユーリアが整理したものを報告してくる、それをおれが判断して、ユーリアに指示して実行させる。


 いつも通りのやりとりだ。


 これでマクシムの一件が終わり、大体の戦後処理が終わった。


 この一件で人口が1000人も増え、町も二つくらい増える事になった。


 ますます規模が大きくなった

「ご主人様、これ」


 ユーリアはそう言って、一枚の紙をおれに渡してきた

「これはなんだ?」


「地図」


「へえ」


 そういえばこの世界にやってきてはじめて地図なんてものを見たな。


 渡されたものをじっと見つめる。


「地図なのは良いけど、この塗りつぶされてるのはなんだ?」


「そこが、ご主人様の領土」


「へえ」


 言われて、それでもう一回地図を見る。


 山やら谷やらいろんな地形をかき込まれた地図は、その大半が同じ色に塗りつぶされていた。


 これが領土だというのならかなり大きいが……実際はどんなものなんだ?

 おれは少し考えて、ユーリアに聞いた。


「リベックはどこにある?」


「ここ」


 近づき、指でさした。


「広さは?」


「……これくらい」


 今度はペンをもって、地図の上に枠を書いた。


 南端が広がってる台形、リベックの町の形。


 その大きさと、領土とされる大きさから推測する。


 面積だと、大体東京都の4分の1くらいになるか。


 人口が6000人と少ないし、ほとんどが荒野のままだけど、純粋に面積で言ったらそれくらいはある。


 意外とあるもんだな、とおれは思ったのだった。


      ☆


 太陽が真上に来てる昼頃。


 第四奴隷リリヤ、そしてマクシムのところから助け出した一般人達。


 地図で示された領土の中から、比較的隙間になってるところに、全員を連れて移動した。


 そこで街作りを開始する。


「メニューオープン」


 円状にひろがる人々に囲まれ、おれはDORECAで魔法陣をだした。


「リリヤ、聖なる雫と、その他の素材を」


「はいですの」


 可愛い奴隷があらかじめ持ってきた素材を魔法陣に入れる。


 それは一瞬にしてイリヤの泉になった。


 町作りで最重要なアイテム、モンスターの侵入を拒むイリヤの泉。


 それができた途端「安心感」を覚えて、人々から感嘆の声があがった。


「イリヤの泉だ」


「この感じ、本物だ」


「こんなに簡単にできるなんて……」


 連れてきた数百人がざわざわしだした。


 これはデモンストレーションだ。


 今連れてきたのは、おれの事をほとんどしらない知らない人達。おれの能力をまったく知らない人達だ。


 それを安心させるため、この後の作業をスムーズに進めるために、一発目をガツーンとかますための作業だ。


 それが効果的だったから、次の予定に進んだ。


「リリヤ、あそこに魔法陣を」


「はいですの」


 事前の打ち合わせ通り、リリヤは十数メートル離れた先にいって、奴隷カードで魔法陣をだした。


 そこから出た矢印は一斉に同じ方向を指す。


 台車があって、素材が山ほど積み上げられてる。


 あらかじめ持ってきた素材だ。


「みんな、その矢印が指してるものを魔法陣に入れてみてくれ」


 またざわつく。


 難民達が戸惑ってる、何人かはやっても良いかもしれないって表情をしてるけど、ためらって最後の一歩が踏み出せない。


「や、やってみる」


 そんな中、一人の青年が名乗り出た。


 髪の毛を短く刈り込んだ、ガタイが良くて、さっぱりした感じの青年だ。


「やってみろ。光ってるものを魔法陣の中に置くだけでいい」


「わかった」


 青年はうなずき、素材に向かっていく。


 おれが指示したとおり、矢印が指して光ってる素材を運んで魔法陣に入れる。


 青年は一人で何往復もしてそれをやった。


 待ってる最中に、イリヤの泉をちらっと見る。


 なんとなく、シム○ティで最初に発電所を作るような気分だ。


 アキトの町は最初で、右も左もわからなくてバタバタしてたけど、今は色々経験を積んで、作る順番とか、効率の良いやり方がわかってきてる。


 考えれば考える程あのゲームをやってるような気分になる。碁盤状の町にならないように気をつけよう。


 ――おおおおお!

 歓声があがって、思考から現実に引き戻された。


 視線を戻す、青年の前に木の家ができた。


 まわりの人達もそうだが、実際に素材を運び入れた青年も驚いてる。


 デモンストレーションで、人々に対するチュートリアルだ。


 それが成功したのをみて、おれは男に向かっていき、話しかけた。


「じゃあこれがあんたの家だ」


「お、おれの?」


「いま自分で作っただろ? だからこれはお前の家だ」


「おれの家……」


 男は木の家をみて感動した。


「家を持ったのははじめてだ……」


「場所はどうする? どこか良いところがあるんなら移してやるぞ。まだ他に誰の家もない、今なら場所選びたい放題だ」


「泉の真っ正面でもいいのか!?」


「ああ。リリヤ」


「はいですの」


 リリヤがひょいと木の家を持ち上げて、泉の正面に移した。


 ドアを開けたら泉の真っ正面にでるという配置だ。


「ここでいいですの?」


「あ、ああ」


 木の家が男の希望通りの場所に置かれる。


 まわりからため息とどよめきが聞こえてくる。


 その場所は何か特別な意味があるみたいだな。


 それは都合が良い、デモンストレーションをやるとい意味で。


 男が家の中に入る、「うっひゃあ!」っていう喜びの声が聞こえる。


 その反応もまた都合が良い。


 難民の間にうらやましさが広がる、おれは声を張り上げた。


「これがおれの力だ、おれはこうして町を作ってきた」


 ざわざわ、がやがや。


「この力を貸す。それでみんなの町を作っていこうじゃないか!」


 扇動気味にいうと、人々――町民から歓声が上がったのだった。


     ☆


 おれとリリヤで手分けして、家とか、服とか、布団のような家具とか。


 基本となるものを次々に魔法陣で出して、あとはそれぞれに任せた。


 イリヤの泉の効果ぎりぎりのところ、全体の見えるところから見渡す。


 デモンストレーションで男が素材を入れた家を作ったのをみていて、それでやり方と成果をみんなが目撃してる。


 それで全員がやる気をかなり出てきた。


 あっちこっちに魔法陣が広がっていたのが、瞬く間に家がぽこぽこ建っていった。


「なんだか面白い光景ですの」


「リリヤは町をこうやって育てていくのははじめてか」


「はいですの。お姉様たちはみんな経験ありますの?」


「リーシャとミラはある、ユーリアはないな」


「なるほどですの」


 遠くから一人の女が走ってきた。


「アキト様、となりの家との間隔が狭すぎるんですけど」


「リリヤ」


「はいですの」


 リリヤが女と一緒にいった。


 遠くで家が持ち上げられ、移動される光景が目に入った。


 しばらくしてリリヤが戻ってきて、おれの横に立った。


 それとほとんど同じタイミングで今度は別の男がやってきた。


「領主様、食べ物は……どうにかなるんですかね」


「それは手間かかるから先に作ってある。リリヤ」


「はいですの」


 リリヤが男を連れて行った。


 あらかじめ持ってきたものの中に倉庫があって、その中からプシニーを出して男に与えた。


 そしてまたリリヤが戻ってくる。


 今度は子供がやってきた、新品だがぶかぶかの服を着てる。


「おじちゃん、この服ちょっと大きいよ」


「リリヤ」


「はいですの。小さいサイズの魔法陣を出してあげるですの」


 リリヤは子供連れて行った。


 さっきからせわしなく動き回るリリヤ、その顔は嬉しそうだった。


 奴隷として働ける喜びだ。


 大して忙しくもないので、おれはほとんどをリリヤに任せて、そこに立ったまま町の成長を眺めた。


 町は、圧倒的な速度で成長していった。

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