表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第七章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
57/172

一つの決着

 山の中腹、開けた場所にそれがあった。


 それを見た瞬間、サムライアリのコロニー、という言葉が頭に浮かんできた。


 兵隊蟻が威張り散らし、ぼろぼろな格好をした毛色の違う働き蟻が必死に働いてる。


 まったくそんな感じだった。


「何あれ、ひどい!」


 ミラがプンプン怒り出した。


 おれの前では控えめだけど、おれと関係ないことでは一番感情をストレートに出すのがミラだ。


 エターナルスレイブでもないのに、まるで奴隷の様に働かされている人達に同情したんだろう。


「ペルミの人達も、あのまま連れて行かれたらああなってたって事だな」


「ひどい!」


「それよりもどうしますかご主人様、このまま攻め込みますか?」


「そうだな……」


 おれは考えた。このまま攻め込んでも別にいい。


 が、もうちょっとスマートに行きたい。


 マラートの時と同じだ、あるいはおれ自身にもいえることだ。


 この世界はおそらく、大将が倒れた時点で勝負は九割方決まってしまう。


 すくなくともマクシム軍もそうだ。


 下っ端の兵隊は既におれの兵器を体で思い知ってる、あとはマクシムさえ倒せれば話は一気に片付く。


 マクシムを倒せればいい、だからスマートにいける方法を考えた。


「ご主人様、あれ」


 ユーリアが言ってきた。


 彼女がさした方角をみた、マクシム軍の一部が武装して、どこかに出発するところだ。


「どこかに行くところですの?」


「働きアリの、略奪」


「ペルミみたいなあれだね!」


 なるほど、更に略奪にいって戦力を回復させるつもりか。


 それで数百人が出て行って、マクシムの本拠から人が大分減った。


 おれはそこをみて、色々考える。


 ふと、ある事を考えついた。


「砲撃しよう」


「砲撃ですか? でもニートカは持ってきてませんよ?」


「こうする」


 DORECAを取り出して、メニューをオープン。


 木の家を選び、普段の魔力の十倍である25000を払って、魔力だけによる緊急生産をする。


 それを、五軒。


 おれはそのうちの一個を持ち上げて、奴隷達に言う。


「ほら、一人一個持って」


 促す。四人はどういう事かわからない様子だったが、それでもおれの命令通り木の家を持ち上げた。


 傍から見れば、男女五人全員が家を片手で持ち上げてる不思議な光景だ。


「いっせいのっせで投げるぞ」


「う、うん」


「ああ! そういうことか」


「わかった」


「リリヤにお任せですの」


 四人が頷く、理解したみたいだ。


 おれは軽く振りかぶって――家を投げた!

 木の家がすっ飛んでいく。


 奴隷たちも次々と投げた。


 合計五つの木の家がすっ飛んでいく。


 柵を越えて、マクシムの陣地内に「着弾」する。


 木の家が轟音を立てて破裂四散し、悲鳴と怒号が巻き起こった。


「行くぞ」


「「「「はい」」」」


 応じる四人を剣に取り込んで、全力で駆け出す。


「て、敵襲!」


 門番が反応したが、対応はできてない。


 おれはミラだけを使った氷の刀身をふって、そいつらの足元を凍らせた。


 中に入って、突進を続ける。


 ほとんどの兵は腰が引けてたから、先制攻撃で足元を凍らせて動きを封じた。


 足止めと、家が降ってくる事による混乱。


 大した抵抗もなく、おれは一番豪華な建物の前にたどりつく。


 ドアを破って中に入る、中にはマクシムがいた。


「アキトォ……」


 マクシムは血走った目でおれをにらみつけた。


「とうとうここまで来たか」


「何回も言ったけど、もう一度言う。協力して、一緒にこの世界を再生させよう」


「くどい!」


 マクシムは両刀を抜いて、立ち上がり、構えた。


「そうか」


 おれはそれ以上何も言わなかった。


 ここまで来ると、もはや意味はない。


 おれは三回も誘って、そして三回も断られた。


 もう、良いだろう。


 剣を構え直す。


 四つの宝石、真なる奴隷剣。


 四つの力を手に、マクシムに飛びかかっていった。


 マクシムはさすがに強かった。


 しかしそれは追い詰められたねずみの強さだった。


 氷炎の火力、先読みの光、闇のバリヤ。


 四人の力をフルに駆使したら、あれほど強かったマクシムは五分も持たなかった。


 両刀を砕き、剣で胸を貫く。


 マクシムは地面に膝をついた。黄金の馬に乗ってきた時の威風堂々とした姿は見る影もない。


「クフッ!」


「これまでだな」


「く、くくくく……」


「何がおかしい」


「貴様の甘さに……笑っているのよ」


「……」


「この世界を再生するなどと……がはっ。そんな世迷い言をほざく……」


 血を吐きながら、凄絶な笑みを浮かべておれを見あげる。


「そんな世迷い言をはく貴様も……いずれはこうなるのよ」


「だから――」


「そんなことはありません!」


 奴隷達が一気に剣から飛び出した。


 魂だけの存在から実体化して、全員でおれとマクシムの間に立った。


 リーシャがまず反論して、それから他の三人が続く。


「あんたと一緒にしないでほしい」


「ご主人様ならできる」


「負け犬こそ世迷い言を抱いたまま、さっさと退場するといいですの」


 奴隷達は次々と辛辣な言葉をマクシムに投げかける。


 あっけにとられるマクシム。


 おれは四人の前に出て、言葉を引き継いだ。


「お前はこの世界に残ってる資源は有限だから、奪いあわないとダメだと言ったな」


「まだ無限だと……言いはるのか」


「ああ」


「そんなものは……どこにある」


 おれは憐憫の目をマクシムに向けつつ、後ろに向かって呼びかけた。


「リーシャ」


「はい」


「ミラ」


「うん!」


「ユーリア」


「ここに」


「リリヤ」


「ですの」


「ここにある。彼女達がおれの力だ」


 ――魔力を1,000,000チャージしました。


 ――魔力を1,000,000チャージしました。


 ――魔力を1,000,000チャージしました。


 ――魔力を1,000,000チャージしました。


 振り返る必要はなかった。これまでの事で、奴隷達の表情が想像できたからだ。


 そして、マクシムの顔もそれを証明している。


 あっけにとられ、それから憎悪に染まる。


「最後までおちょくるか――」


 最後の力を振り絞って飛びかかってきた。


 奴隷達が剣になる。


 四人の力が集結した剣で、マクシムを腰から両断した。


 勢いのままおれの後ろにすっ飛んでいき、地面に落ち、そのまま事切れた。


「ま、マクシム様!」


 騒ぎを聞きつけた兵士の一人が声を上げた。


 おれは剣の切っ先を突きつけて、聞く。


「見ての通りマクシムは倒れた、おまえらは――」


「ひ、ひいいいい!」


 どうする? って言葉を最後まで言わせることなく、兵は逃げ出した。


 逃げ出しながら、大声でわめく。


 瞬く間に、街中にマクシムの死が広まっていった。


 しばらく待った。誰かが逆襲か復讐のために入ってくるかと思ったが、誰も来なかった。


 気になって外に出ると、兵士が一人もいなくなっていた。


 さらってきた働き手を残して、兵士は一人残らず逃げ出した。


 恐怖と力で押さえつけていたマクシムがいなくなった途端の瓦解。


 幕切れは、以外とあっけないものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ