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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第六章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
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心を愛でる

 夜、領主の舘。


 おれの前に全員揃っていた。


 第一奴隷リーシャ。


 第二奴隷ミラ。


 第三奴隷ユーリア。


 第四奴隷リリヤ。


 体と一体化した首輪をつけた四人がおれの前に立っていた。


 これから武器の進化、真・エターナルスレイブに進化させる。


「メニューオープン」


 DORECAを持って、作成リストの中から「スレイブハート」を選ぶ。


 それを魔法陣にする、全部で四つ。


 同じ魔法陣だが、素材の矢印がそれぞれ違う奴隷を指している。


 赤い光がリーシャに、青い光がミラに、白い光がユーリアに、黒い光がリリヤを差している。


「全部が一本……お前達だけってことか」


「これって……わたし達がここに入ればいいんですか、ご主人様」


 リーシャが聞く。


「多分な」


「あの……それってリリヤたちが素材になるって事ですの?」


「そういうことだ」


「いやなの?」


 ミラがリリヤに聞く。リーシャとユーリアが同時にリリヤを見た。


 リリヤはちょっといやそうな顔をしてて、それを見るミラとユーリアが不機嫌そうになった。


「それはちょっと困りますの。リリヤはずっとおにーちゃんの奴隷として働きたいですの。素材になって消えるのは困りますの」


 リリヤの理由は実に彼女らしいものだった。


「それは名誉な事じゃないですか。ご主人様のものになれるのは」


 と、リーシャがいう。これまた彼女らしい。過労すら名誉に感じてしまうエターナルスレイブらしい発想だ。


「それは御免被りますの。ずっと生きて、おにーちゃんより長生きしてずっと奴隷として働きたいですの」


「どっちも、わかる」


「うん」


 ミラとユーリアがそういう。


 結局の所、リーシャもリリヤもいってる事は「奴隷として」というのが先に来てるから、共感するところが大きいんだろう。


「とにかく、わたしはご主人様のお役に立ちたいんです!」


 リーシャがそう言って、魔法陣の中に入った。


 躊躇はまったくなかった。


「……あれ」


 しかし、意気込んで入った割には何もおこらなかった。


 赤い光がリーシャの全身を包むだけで、他には何も変化がない。


「どうして……なんでしょう」


「……全員が入らないとダメなんじゃないのか?」


 おれは少し考えて、言った。


「そうかもしれない」


 ユーリアは同意しつつ、自分も魔法陣に入った。


 リーシャと同じように白い光が彼女の小さな体を包み込む。


 それ以外の変化はやはりない。


「あたしも入ってみるね」


 そういってミラも魔法陣にはいった。


 青い光が同じようになる。


 リーシャ、ミラ、ユーリア。


 三人が魔法陣の中からリリヤを見つめた。


「うっ……な、なんですのその目は。リリヤをせめてますの?」


 三人は答えない、ただ見る。


 次はお前の番だと、強い視線で訴えた。


 三人とリリヤは考え方がちょっと違う。ミラもユーリアも「理解できる」とはいっても、考え方はリーシャに近い。


 だからすんなり魔法陣の中に入った。


 しかしおねだりを多くして、「生きて役に立ちたい」というリリヤはなかなかそうはならない。


 少なくとも、自分の意思で決められないでいるみたいだ。


「リリヤ」


「な、なんですのおにーちゃん……」


「入ってくれ」


 リリヤをまっすぐみつめて、言った。


 命令ではないが、命令に近い口調。


 お願いも入ってる。


「うぅ……」


 リリヤが呻く。


 さすがにご主人様が口を開いたら突っぱねることは出来ない、って顔だ。


「これが必要……いや」


 おれは言い換えた。


 必要なにもそうだが、それ以上に。


「これがほしいんだ」


 そう、おれはそれがほしい。


 予感はあるんだ。


 エターナルスレイブ改になったとき、奴隷を一人、剣の中に取り込むことが出来た。


 それによって奴隷と強く繋がって、かなりちかくにいるのが感じられた。


 それの次が「真・エターナルスレイブ」。


 「改」の次が「真」だ。


 もっと強く繋がって、更に次の段階に進むのは確実だと思う。


 おれはもっと奴隷と繋がりたい、近くに感じたい。


 奴隷を……もっと愛でたい。


 もっともっと、もっともっともっともっと。


 この健気な生き物を近くに感じて、愛でてやりたい。


 その手段がきっとこれだ。


 これで叶えられるはずだ。


 そんな確信がある。


 だから、見つめる。


 リリヤをじっと見つめた。


「……わかりましたの」


 最初は唸ったが、次第にリリヤの表情も変わった。


 落ち着いた……覚悟を決めた顔に。


ご主人様(、、、、)にそこまで言われたら、奴隷として従うしかありませんの」


「ありがとう」


「おにーちゃんは素敵すぎますの」


 リリヤはそう言って、自分の魔法陣に入った。


 黒い光が彼女を包む。


 赤、青、白、黒。


 四つの光が奴隷から発して、とけ合って、混ざり合う。


 おれが持ってるエターナルスレイブ改も光り出した。


 奴隷の光、奴隷剣の光。


 光は共鳴し、膨らみ、混ざり合い。


 やがて――全てを包みこんだ。


     ☆


 気がついたら知らない場所にいた。


 この世の場所とは思えない、何もない空間。


 強いていえばあの女神と会った場所、異世界に転移してくる時にいた場所と似てる。


 そこでおれは真っ裸になっていた。


 ……なぜ?

 ――ご主人様。


 疑問に思った途端背後から声をかけられた。


 振り向く、そこに奴隷達がいた。


 リーシャ、ミラ、ユーリア、リリヤ。


 全員は同じように全裸でいた。


 緑色のドレスは着てなくて、体に一体化した首輪だけをつけている。


 全裸首輪の奴隷達だ。


 それを見た途端おれは理解する。


 ああ、そういう場所なんだ、と。


 おれは無言で四人に近づいた。


 手を伸ばして、四人の首輪に触れる。


 リーシャの赤い宝石。


 ミラの青い宝石。


 ユーリアの白い宝石。


 リリヤの黒い宝石。


 順番に撫でてやった。


 四人は頭を撫でられたようにうれしがり、胸を撫でられた様に悦んだ。


 順番で最後までなで回すと、さっきと同じように光が膨らみ、またおれたちを包みこんだ。


     ☆


 光が収まった後、部屋の中には誰もいなかった。


 おれしかいなくて、奴隷の姿はどこにもなかった。


 が、おれは探さなかった。


 わかってるからだ。


 剣を抜いた。


 奴隷の剣。柄と刀身の間に四つの宝石があり、それが四つとも輝いていた。


 四つが全て、同時にだ。


「リーシャ」

(はい、ご主人様)


「ミラ」

(いるよ)


「ユーリア」

(ここに)


「リリヤ」

(はいですの)


 一人ずつ呼びかけて、それぞれから返事をもらう。


 全員が剣に入っていた。


 これが、真・エターナルスレイブだ。


 おれはそれをもって、舘の外にでた。


 炎と念じれば刀身が炎になり、氷と念じれば氷の刀身になる、光と念じればまわりのあらゆる気配を強く感じ、闇と念じれば――。


「リリヤの能力はなんだ? そういえば」

(リリヤにもわかりませんの)


「そうか。まあいい、何かしらはあるだろ。それより――」


 おれは念じた、全部、と。


 四色の宝石は同時に光っていたのだ、それが出来るはずだと確信してる。


 実際、出来た。


 真なる奴隷剣は炎と氷が融合したような刀身になり、かつまわりの気配も感じられる。


 奴隷をまとめて使える剣に進化したのだ。


「これなら……マクシムに勝てるな」


 おれは確信する、これならば勝てる、と。


 四人を戻した。


 宝石から輝きが消え、光が剣から抜け出て、四人が元の姿に戻った。


「あっ、もどりましたの」


「ちゃんと戻れてよかったね」


 ミラがリリヤにいう。


「不思議な感じだった」


「うん、でもこれでもっとご主人様のお役に立てるって思った」


 リーシャとユーリアが言って、うなずき合った。


 おれが何かを確信したのと同じように、奴隷達も同時に剣の中に取り込まれた事で何かを感じたんだろう。


 それを一番強く感じたのは――。


「おにーちゃん、もう一回ですの!」


「もう一回?」


「はいですの! もう一回リリヤ達を剣にするですの」


「さっきは嫌がってなかったっけ?」


「嫌がってなんていませんの。それよりも今は一緒におにーちゃんのものになりたいですの、あのお役に立てる感じがほしいですの!」


 リリヤが強く訴えてきた。


 彼女らしかった、おねだりをしてくるのは実に彼女らしかった。


 他の三人も口には出さないけど、おれをじっと見つめている。


 リリヤと同じ考えのようだ。


「よし」


 真・エターナルスレイブを強く握り締め、四つの宝石に触れる。


 奴隷達がまた光になって、剣に吸い込まれる。


 途端に強い充実感を覚えた。


(ご主人様……)


(ご主人様!)


(ご主人様)


(おにーちゃん!)


 奴隷四人の声が聞こえる。


 それはまるで、彼女達の希望に聞こえた。


 同時に、おれの希望でもあった。


 奴隷を愛でたいという、おれの希望。


「寝る。今夜はこのままだ」

((((はい!))))



 ――魔力を1,000,000チャージしました。

 ――魔力を1,000,000チャージしました。

 ――魔力を1,000,000チャージしました。

 ――魔力を1,000,000チャージしました。


 その晩、おれは夜遅くまで、四人の心を愛で続けたのだった。

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