第四奴隷リリヤ
「とりあえずは首輪とドレスか、ああ奴隷カードもか」
領主の舘の執務室、おれはリリヤの格好を見つめながらいった。
「ドレスですの?」
「ああ、リーシャたちが着てるあの緑色のドレス、あれもおれがつくったものだ」
「えええ、おにーちゃんって裁縫も得意なの?」
「そんなわけあるか、これだこれ」
DORECAを取り出して、魔法陣を作った。
手元にある紙を素材として、紙コップを作った。
「こんな風に魔法でものが作れるんだ」
「すごいですの、他になにが作れるんですの?」
「家とか」
「家ですの!? じゃあこのお屋敷もおにーちゃんが作ったものなんですの?」
「そういうことだ」
「はわ……すごいですの」
リリヤは感動を受けた。
「とりあえず首輪とドレスと奴隷カード、この三つだな」
DORECAから魔法陣を三つ作った。
矢印がそれぞれ違う方向を指す。
おれはリリヤをつれて、素材を探しに出かけた。
☆
無人の荒野、見つけたサソリを一刀両断する。
「すごいですの。そのサソリはかなり凶悪だったと記憶してるですのに、あっさりと倒してしまいましたの」
「最初の頃はかなり苦戦したよ」
サソリの死体を拾い上げて、まじまじ見つめる。
最初は万能薬を十数個使い切ってようやく倒せたヤツが今は一撃だ。
ちょっとだけ自分の成長を感じる。
「それは何になりますの?」
「メニューオープン」
DORECAから魔法陣をだした。
舘にレーダー代わりの同じ魔法陣を出してるけど、すぐに作ってしまいたいから、同じ魔法陣を作った。
そこに素材を投入すると、ドレスができあがった。
リーシャたちがきてるのとまったく同じもの、エルフ――エターナルスレイブ映えする草色のドレス。
それをリリヤに渡してやった。
「ほら」
「ありがとうございますの!」
リリヤはドレスにきがえた。
「じゃーん。どうですの? どうですの?」
着替えたリリヤはおれの前でくるっと回って見せた。
「似合ってる」
「ありがとうございますの……でも」
「でも?」
リリヤのテンションがいきなり下がった。「どうしたんだ?」
「すごく素敵なドレスですの、まるでこれを着るために生まれてきたかのようですの」
そんなにか。
「でも、それだけに寂しいですの。ここが」
リリヤは首を触った。
「物足りなさで切ないですの。おにーちゃん、はやくリリヤに首輪を作ってくれですの」
おねだりをしてきた。
ちょっと新鮮だ。
リーシャ、ミラ、ユーリア。
今までの奴隷達はここまでストレートにおねだりしてこなかった。
一番直情的なミラでさえ、どこか控えめな感じだった。
リリヤは違う、ぐいぐい押してくる。
奴隷としてほしい物を次々とおねだりしてくるのだ。
それは新鮮だった。
だけど、わるい気分ではない。
「はやく揃えて、おにーちゃんの本当の奴隷になりたいんですの」
「そうだな、次行こうか」
「はいですの」
おれはリリヤをつれて、次の素材の場所に向かってあるきだした。
☆
いったんリベックに戻ってきた。
次の素材の場所がここをはさんで反対側にあるからだ。
町に入ると、おれを見つけた奴隷三人が全員駆け寄ってきた。
「どうした?」
「ご主人様、街外れのニートカが何者かに壊されたそうです」
「ご主人様! ペルミの人達が何か仕事をしたいっていってるよ!」
「ゲラシムから、一部の住民がリベック引っ越したいって要望が」
リーシャ、ミラ、ユーリアの順で報告してきた。
おれはそれを聞いて、それぞれに指示を出す。
「ニートカは普通に直せ、最優先だ。町の南に木を植えて公園を作りたいって思ってたからペルミの人達にはそれの下準備をさせといた。リベックの引っ越しの理由を詳しく聞いてこい」
三人が頷き、それぞれ走り出した。
その姿をリリヤがじっと見つめていた。
「どうした」
「あれはなんですの?」
「仕事だ。町の運営で色々忙しくてな、それで働いてもらってる」
「お仕事ですの!?」
大げさなくらい驚くリリヤ。
「羨ましいですの。リリヤにもお仕事をさせてほしいですの!」
「仕事したいのか?」
「はいですの。第四奴隷リリヤとして、ちゃんと仕事をしたいですの!」
リリヤは握り拳で力説する。
「なんだその第四奴隷ってのは」
「あれ? もしかしておにーちゃんに別の奴隷がいるんですの? リリヤが知らないだけで実は第五奴隷だったんですの」
「いや第四であってるけど、言い方が」
なんとなく第四使徒とか、そういう感じのものに聞こえた。
第一奴隷リーシャ。
第二奴隷ミラ。
第三奴隷ユーリア。
第四奴隷リリヤ。
……うん、やっぱり使徒に脳内変換しちゃう。
「リリヤにできるお仕事はありませんの」
「いや、まずは首輪と奴隷カードを……」
「領主様」
領民が一人やってきた。三十代の中年だ。
顔に何故かひっかき傷がある。
「どうした」
「じつは家を壊してしまって……その、女房とケンカして。いつもの様に領主様に直してもらえないかと」
「わかった、多分リーシャが――」
「リリヤがやるですの!」
話を聞いてたリリヤが名乗りを上げた。
「あんたは……エターナルスレイブ。領主様の新しい奴隷さんか?」
「そうですの! 第四奴隷リリヤですの」
「そうか、じゃあ頼んで良いか」
「任せるですの、さあ行くですの!」
リリヤは男を引っ張ってダッシュしていった。
途中で立ち止まり、おれの方をむいて、大声で叫んだ。
「おにーちゃんのためにお仕事するですのー。見ていて下さいのー」
そしてまだダッシュしていった。
おれはクスッと笑った。
今までの三人と違ってアクティブだけど、やってる事は三人と一緒だった。
奴隷としてご主人様のために働きたい、うん、まったく一緒だ。
「可愛いヤツだ」
おれはそうつぶやき、その場で待った。
しばらくして、リリヤがショボンとした様子で戻ってきて。
「おかえり、どうした」
「……どう直せば良いのかわからなかったですの」
意気消沈するその様子をみて、おれは吹き出した。
「教えてやる、ついて来い」
「はいですの!」
魔力をチャージする第四奴隷を連れて、首輪と、奴隷カードの素材を集めに再出発したのだった。




