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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第六章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
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サムライアリ

 夜、自分の部屋のベッドの上で。


 おれは寝そべったままDORECAを眺めていた。


 真・エターナルスレイブ。


 エターナルスレイブ改を素材に使った新しい武器。


 どう見ても上位版、どう見ても強化する。


 相変わらず消費魔力は0で――素材は奴隷がらみだった。


 スレイブハート×4。


 内容以前の問題だ。


 必要な素材は四つ、おれの奴隷は三人。


 足りない。


 作るのに足りない。


 おそらくだがもう一人奴隷が必要だ。


 奴隷を増やすのは問題ない、チャンスがあれば受け入れる。


 問題は見かけないことだ。


「はあ……」


 ため息を吐き、DORECAをしまう。


 おれは何となく、聖夜の奴隷の事を思い出していた。


     ☆


「ペルミの町が滅ぼされました」


 翌朝、町の仕事を始めたおれはユーリアからその報告を受けた。


 内容が内容だったけど、ユーリアはいつも通り平然とした顔で言った。


「ペルミってどこだ?」


「ビースクの更に向こうにある町。最近協力を求めてきてた。食糧が必要だったからプシニーを渡してた」


「ふむ」


 それは報告されてないけど、別に良い。


 プシニーはほしいところがあれば適当に分け与えろというのがおれの方針で、ユーリアはそれを適切に処理したんだろう。


「その町が滅ぼされたってのか。誰に」


 聞いたが、予想はついている。


「マクシム」


「やっぱりそうか。なんでだ?」


「いつも通り。町を襲って、滅ぼして、人間を全員連れ去って、労働力にする」


「ああ……」


 頷き、納得した。


「サムライアリみたいなやりかただな」


 サムライアリってのは蟻の一種で、基本的に種族内で働き蟻を持たない。


 代わりに兵隊蟻が他の蟻の巣を襲って、そこから働き蟻を奪って、労働力にする。


 ゲームでの「イナゴプレイ」っていうのと同じようなヤツだ。


 マクシムがそれらしい。自前の生産力を持たないで兵隊だけ持って、資源とか労働力は略奪で維持する。


 ますますマクシムに負ける訳にはいかなくなったな。


     ☆


 ミラをつれて、ペルミの町にやってきた。


「ひどい……」


 ミラが口を押さえて、言葉を失った。


 ペルミの町は焼き払われていた。


 廃墟そのものの町に人の気配はまったくない。


「ものもないな」


 ミラと一緒に半分くらい焼け残った家に入った、そこには金目のものは一切見当たらない。


 つかえそうなものもまったくない、きっと奪われたんだろう。


 中を眺め回していると、外から声が聞こえてきた。


「なんだってまたこんなところに来なきゃならないんだ?」


「この前の村でよ、焼き払った後でも色々残ってたんだ。隠し財産とか、隠し部屋にいた子供とかな」


「そうそう、そういうのがあるからちゃーんと確認しないとな」


 何人もの男のいやらしい声が聞こえてきた。


 ミラをつれて外にでる。


 そこに三人、兵の格好をした男の姿があった。


「おい、お前ら」


「お、いたいた」


「ほらな、こういうのが残ってたりするんだよ」


「残り物にはふくがあるってか?」


 男達はゲラゲラと笑った。


「お前達、マクシムの部下か?」


「だったらどうする」


「一番偉いのはどいつだ」


「このおれだが。なんだ? 賄賂でも送って見逃してもらおうってのか。言っとくけど――」


 青の宝石に触れ、ミラを剣に取り込んだ。


 氷の奴隷剣。リーダー以外の二人を縦に真っ二つにした。


 切断面は即冷凍して、血も出ないまま真っ二つになった。


「――おれは賄賂なんか効かない、ぜ?」


 男は状況を受け入れるまでに時間がかかった。


 おれをみて、仲間の二人の死体をみて。


 訳がわからないって顔をしたが、状況を理解するとみるみる怒りだした。


「てめえ!」


「ふっ」


 更に氷の剣を振った。


 今度は斬らなかった。逆に冷気をあげて、男の下半身を凍らせた。


 胸から下が凍った。まるで簀巻きで立たされてる様な、身動きのとれない状況になった。


 おれは男の前にたった。男はようやく状況を完全に理解して、顔面蒼白で怯えた表情になった。


「た、たのむ、見逃してくれ」


「答えろ。この街の人間はどうした。殺したのか?」


「ぜ、全員は殺してない。大事な労働力だからな」


「……どこにつれてった」


「あ、あっちだ。あっちに分隊がある」


 男は町の入り口の方にあごをしゃくった。手まで凍らされて指すことができなかったからだ。


「分隊はどれくらいいる?」


「ぜ、全部で300人。町を襲うときって大体それくらいの数だ」


「そうか」


「た、頼む。みのがし――」


 もう一度氷の奴隷剣を振った。


 男は命乞いしたまま凍りついた。


 三人の死体を置いて、おれはペルミの町を出た。


(ご主人様、行くの?)


「ああ」


(わかった!)


 ミラが言う。何となく力強く頷かれた、そんな雰囲気がした。


 氷の刀身から放つ冷気が一段と強くなった。


 男が示した方向に向かって三十分くらい歩いて行くとそれが見えてきた。


 いくつかのテントがあって、そこにマクシムの兵がいた。


 なにやら盛り上がっていた。


 近づき、何をしてるのか後ろから見た。


 胸くそ悪い光景だった。


 兵士達は輪を作っている、輪の中に後ろ手に縛られた青年の男と、鋭い爪のサル・シュレービジュがいた。


 男とシュレービジュが戦っている。


「ほらほらどうした、もっと本気でやれ」


「そいつに勝てたらお前と女房、それに子供を解放してやるぞ」


「負けたら女子供は全員おれ達の慰み者だけどな」


 男達は青年をはやしたてている、よく見れば離れたところに拘束された妻子らしき人間の姿がある。


 そして輪の外、もう少し離れたところに町民とシュレービジュがそれぞれ拘束されている。


 ……むかっ腹が立つ光景だ。


 おれは一番近くにいる男に背後から声を掛けた。


「おい」


「なんだ、良いところだから後にしろ」


「……おい」


「だから後に――」


「ミラ」


「うん!」


 青の宝石、氷の奴隷剣。


 おれはその男を背後から真っ二つにした。


「なんだてめえは!」


「敵か?」


「一人で来たのか? 命知らずめ」


 騒ぎに気づいた兵達が続々とおれの方を向いて、悪態をつき、武器を構えてきた。


「ざっと300人か」


(やりましょう! ご主人様!)


「そのつもりだ」


 おれは感情のままに剣を振るった。


 一人、また一人と斬っていった。


 血は一切でなかった。


 ミラも怒っているのか、強まった冷気は凍ったばらばら死体を量産した。


「なんだてめ――」


「こんなことをしてただで――」


「たすけてく――」


 真っ二つにした途端に凍ってしまうから、誰一人として言葉は最後まで続かなかった。


 そして、逃げられもしなかった。


 おれは魔力を込めた。


 実に十万近い魔力をミラに注ぎ込んだ。


 その結果冷気が更に強まって、兵達を足元から凍らせて、逃げられないようにした。


 300人を全滅させるまで、三十分もかからなかった。


     ☆


「全員無事か」


 捕らわれたペルミの町人の元に向かい、縄を剣で切ろうとした。


「ひっ」


 町人が怯えた、エターナルスレイブ改をみて。


「ああ、悪い」


 おれはミラを戻した。


 刀身が金属のに戻って、冷気を放たなくなった。


「これで凍らなくなる」


 必要ないけど、安心させるためにミラを解放した。


「剣から人間が……あれ、エターナルスレイブか」


 縄を切られた男が言った。


「ああ、知ってるのか」


「存在は知ってるが、初めて見る」


「ペルミにはいなかったのか」


「ああ」


 頷く男。ちょっと残念な気分だ。


 スレイブハートを四つ必要だからもしかしてペルミにエターナルスレイブがいるのかもってちょっと期待した。


 まあしょうがない。


 おれは町人を次々と解放していった。


 解放された町人は他の町人も解放する。


 あっという間に全員が解放された。


「どなたかは知りませんが、助かりました」


 代表……多分町長らしい老人がおれの前に立って、お礼を言ってきた。


 おれは話を聞くのと、これからの話をしようとした。


「おれは――」


「ご主人様!」


 後ろからミラが大声でおれを呼んだ。


 ビックリした声だ。


「どうした」


 振り向き、ミラをみる。


 彼女の足元に人間達が倒れていた。


 兵じゃない、まわりにはシュレービジュの爪が散乱してる。


 自己判断でシュレービジュを倒してたみたいだ。


「人間にもどしてたのか。よくやった」


「それよりご主人様、この子」


「うん?」


 ミラに近づき、見下ろす。


 驚いた、ミラがおれを呼んだ理由がわかった。


 金色の髪、尖ったミミの女。


 まるでエルフの様な姿――エターナルスレイブ。


「あたしと同じだ」


 ミラがつぶやく、そう、彼女と同じ、シュレービジュから戻ったエターナルスレイブだった。

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