衣食住を確保する
夜、おれとリーシャ、マドウェイの三人が木の家の前にある空けたスペースに集まった
夜ご飯の時間だ。
マドウェイがたき火を起こして、鍋でスープを作ってくれた。
根菜とちょっとだけの肉を煮た簡単なスープ。味はともかく、疲れ切った体にありがたい。
「具材が少なくてすまない。蓄えが底をつきそうなんでな」
マドウェイは申し訳なさそうにいった。
「いきなり三人分だからな、しかたないさ。それよりも食べ物もなんとかしなきゃな」
そういって倉庫を見る。
中に様々な素材が詰め込まれてるけど、食料になりそうなものはほとんどない。
「メニューオープン」
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アキト
種別:ノーマルカード
魔力値:21900
アイテム作成数:9
奴隷数:1
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これまでアイテムを9個作ってきた。
木の家が4、布団が3、鉄の剣とドレスが1ずつ。
衣食住の内、衣と住は確保した、次は食をなんとかする番だ。
「そういえば今まで食べ物はどうしてきたんだ?」
作成可能リストを眺めつつ、マドウェイに聞く。
「木の実を拾ったり、小さい獣を狩ったり。あっちに少し行ったところ小川があるから、魚も捕ったりしてな」
「なるほど。川があるんなら水もそこか」
「いや、水は別だ。あっちの方にわき水がある。川の水は前に飲んだけど腹を下した。沸騰させても同じだったから、あの川の水は飲めない水だと思ってる」
「そうか」
おれは頷いた。
なんというか、大変だと思った。
平気でマドウェイが説明したけど、それってかなり苦しい生活だよな。
この滅びかけてるっていう世界じゃ苦しくてしょうがない。
ますます、食べ物を何とかしないとって思った。
メニューを食い入るようにじっと見つめる。
わき水(小)、と言うのを見つけた。
大分最初の頃からリストにあったものだけど、話の流れで注目した。
作ってみるか――と思ってさわると、ビックリした。
なんと、そのわき水の必要魔力が20000だった。
今までで最大級に必要な消費魔力。木の家の8倍、万能薬に至っては66倍だ。
一体どんなわき水なんだ?
ますます気になったから、作ってみようと思った。
たき火から少しはなれたところに魔法陣をつくる。光の魔法陣から出てきた矢印は4本、三本が倉庫の中、一本がマドウェイの家をさしてる。
リーシャは早速立ち上がって、スープの器を地面に置いて、倉庫の中から素材を運んで来た。
おれはマドウェイと一緒に彼の家にはいった。
部屋の隅っこに光ってる水がめを見つける。
「あれは?」
「さっきいった飲み水だ」
「もらっていいか」
「もちろんだ」
マドウェイは水がめを運び出して、魔法陣の中に水を注いだ。
素材が全部揃って、魔法陣がわき水になった。
手水場みたいなのが出来て、ちょろちょろと水が流れ出す。
水がたまってもまだ出てくる、あっという間に最初に入れた水よりも量がおおくなった。
「これって、ずっと出るものなのか」
「わからない――けどそうだと思う」
根拠は魔力20000だ。
大量の魔力を消費して、なんでもない素材で作ったわき水(小)。
破壊されない限りずっとわき出る、とおれは推測した。
「飲めるのかな、これ」
「試します」
リーシャが言って、手皿で水を掬ってのんだ。
口の中に溜めて、ごくりと飲みくだす。
「どうだ?」
「……大丈夫だと思います。無臭無味の普通の水みたいです」
「なるほど」
おれも水を飲んだ。確かにリーシャが言うとおり無臭無味の水っぽい。
水道水じゃなくて、どっちかというとミネラルウォーターに近い感じだ。
うん、これは問題なく飲めそうだ。
これで水も確保、あとは食べ物だ。
メニューの中で食べ物は見当たらないけど、「果樹」とか「畑」とかはある。
魔力が残り1900だから、500で作れる果樹の魔法陣を作った。
矢印は二つ、一つは倉庫で、一つはわき水をさしてる。
「とってきます!」
「おれが入れるよ」
リーシャが倉庫に向かっていき、マドウェイがわき水から水を汲んで魔法陣に入れた。
「ご主人様、ちょっときてくれませんか?」
「どうした」
倉庫の中に入る、リーシャが困った顔で違う木の実をそ両手に持っている事に気づいた。
どっちの木の実も魔法で光ってる。
メニューを開いてみた。該当するところで「木の実×1」としか書かれてない。
木の実ならなんでもいいんだろうか。
「どっちがいいのでしょうか」
「じゃあこっち」
リーシャの右手を指した。判断材料が他になくて適当に選んだ。
おれの決断なら間違いないとばかりに、リーシャは右手に持ってた木の実を魔法陣に持っていって投入した。
魔法陣が収束して、身長の二倍の高さの木になった。
そこに投入したものと同じ木の実がいっぱいくっついている。
「すごい……いっぱいできた」
試しに一つもいで、更に500払って果樹を作った。
同じものができた。
わき水のように無限でわき出る訳じゃないけど、つくったらすぐに実がつくみたいだ。
魔力500消費を考えれば、使いよう次第では便利かもしれない。
そして何より。
これで衣食住、全部を確保する事ができたのである。