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笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第六章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
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散弾の矢

 翌朝、領主の舘の応接間。


 ヤンはニヤニヤ顔でやってきた。


「答えを聞かせてもらおうか」


 まあ聞かなくてもわかるけどな、って顔をしてる。


 残念だがその期待には添えられない。


「マクシムの下につく気はない」


「……は?」


 表情が変わった、信じられないものを聞いたって顔に。


「いまなんて言った」


「マクシムの下につくつもりはないと言った。同盟とか、協力しあう関係なら歓迎するけど、一方的にそっちの下につくつもりはない」


「本気か、てめえ」


「ああ」


「後悔するぞ。マクシム様はマジで逆らったものは皆殺しにする人だ。この街、いやてめえの四つの町が皆殺しにされるぞ」


「2000人の兵力で?」


「そうだ。2000だぞ2000」


「それで襲われたら返り討ちにするだけだ」


 ヤンは唖然となった。


 こいつ正気か、って顔をする。


「後悔するぞ、いいのか」


 それはさっき聞いた。


「こっちの答えは変わらない。マクシムに伝えてくれ、対等の立場でならいくらでも手を取り合うつもりはあるって」


 きっぱり言い放って、ヤンを見つめる。


 冗談とかじゃなくて、本気である事を伝えるためにまっすぐみた。


「……はっ、後で悔やんでもしらねえぞ」


 ヤンは嘲りの顔で吐き捨てて、応接間から出て行った。


 廊下からパリーンって音がした。何かに八つ当たりしていったみたいだった。


     ☆


「ご主人様、今日は何からつくりましょうか」


 舘の外、三人の奴隷がおれの前に集まった。


 リーシャのいつもの台詞にちょっといやされつつ、それぞれに指令をだす。


「町の建設はいったん中止、防衛の手段を確保する」


 まずは大方針を伝えて、ミラをみた。


「ミラはカザンに行って、トローイを大量に狩ってと伝えてくれ。トローイの腕を持ってきたら相応の報酬を払うって。一応ニートカの魔法陣を町の外に作っとくから、トローイ自体見つからない時はそれ使え」


「うん、はい!」


 ミラが飛び出した。


 ニートカはシルバーカードからだから、こっちがだしてやらないといけない。


 次はユーリアをみた。


「ユーリアは町を回って、剣とか槍とか、弓とか。そういう武器を生産、補修してくれ」


「わかった」


「もし気づいた事があって、ブロンズカードで何とかなる様なことだったらやっといてくれ。シルバー以上が必要な事は持ち帰っておれに言え」


「わかった」


 ユーリアも去っていった。


 残ったリーシャはおれを見つめる。


 キラキラとした忠犬の様な目。


 最後はわたし、わたしには何をさせてもらえるの? という目だ。


「リーシャはおれと一緒だ」


「わかりました」


 ――魔力を5,000チャージしました。


 これから初顔合わせの敵と会うことになるかもしれないから、奴隷を一人手元に置いておきたい。


 DORECAでメニューを開く。


 作成リストの中、武器のカテゴリー。


 シルバーカードからの機能、できた後のイメージ動画を一つずつ確認していく。


「お」


 その中で良いものを見つけた。


 グラディックという武器だ。


「これを……量産できれば……」


 おれは動画を見続けて、それが実戦投入された光景を想像した。


     ☆


 リベックをでてリーシャの二人と歩く。


 相変わらずこの世界に荒野が広がってる。どこまでも広がる不毛の荒野。


 こんなのをみてると、人間同士で争ってる場合じゃないと思うんだがな。


「そういえばリーシャ、あの森はどうなった」


「最近は動物もすごく増えてきて賑やかですよ、手入れに行くと動物たちがじゃれついてくるので、仕事に入るまで時間掛かるのにちょっと困ってます」


「動物に好かれるのか」


 エターナルスレイブという金髪エルフ。


 それに加えてリーシャは物静かで人当たりのいい性格だから、動物たちに好かれるのはうなずける。


「そういうことならあそこは全部お前に任せる。ブロンズカードで何とかなることなら好きにやっていい」


「いいんですか?」


 伺う口調で聞き返してくる。


 この辺ユーリアとは違う。ユーリアはおれが命令したらなんでも従うが、リーシャは例え命令でも「任せる」って言うところでためらう。


 まあ、彼女らしくていい。


「いいと思うから、信頼してるからブロンズカードにしてやった。まだだったらノーマルのままだ」


「あっ……」


 ――魔力を20,000チャージしました。


 頬を染めるリーシャから魔力がチャージされた。


 森の話が一段落して、リーシャをつれたまま魔法陣の矢印を追いかけていく。


 やがて――モンスターが現われた。


 おれ達の目の前に現われたのは人間と同じくらいのサイズの大きな鳥だった。


 全身が羽毛でおおわれ、くちばしの中には鋭い歯がある。


 人間をみるなり敵意を剥き出しにするどう猛さを持ってる。


 プチーツァ、と言うモンスターだ。


「あれですかご主人様」


「ああ、こいつがもってるプチーツァの魂っていうのが必要だ」


「あっ、あの溶岩の……」


「そういうことだ。倒すぞ、リーシャ」


「はい!」


 リーシャは応じて、表情を引き締めた。


 おれは腰のエターナルスレイブ改を抜いて、赤い宝石に触れてリーシャを剣に取り込んだ。


 炎の奴隷剣。刀身が燃え盛る。


 それを振りかぶった――瞬間に先制攻撃された。


 プチーツァは体の倍はある羽を広げて、羽ばたいた。


 無数の羽毛を飛ばしてきた。


「ふっ!」


 魔力を込め、火力をあげて横一閃。


 尖った先端で飛んでくる羽毛をまとめて焼き払う。


 焼き切れなかった一本が顔をかすめていき、血が頬を伝う。


(ご主人様!)


「問題ない」


 手の甲で血を拭って、プチーツァに挑みかかっていく。


 再び振り上げて、全力で切り下ろす。


「ぴぎゃあああああ!」


 悲鳴を上げる巨大な鳥。


 火力を上げた炎の奴隷剣はバターの様に羽を片方切りおとしたが、反撃を飛ばしてきた羽でかすり傷をおった。


 距離をとって剣を構え直し、つぶやく。


「ユーリアもいればな」


(ごめんなさい)


「落ち込むな。も、だ。両方いた方がいいって思ったんだ」


(両方?)


「ああ」


 切りおとした羽の断面から、おそらくリーシャの炎が属性って意味であってる思う。


 そして羽を避けるにはユーリアのレーダーが必要。


 リーシャの火力、ユーリアの回避力。二人をまとめて取り込めればな、って思ったのだ。


「長引くと面倒臭い、ごり押しするぞ」


(はい!)


 おれは更に魔力を込めて、倍近くに膨らみ上がった炎で、プチーツァを真っ向から切り下ろし、返す刀で全身を焼く。


 怪鳥が燃え上がり、瞬く間に黒焦げになって、地面に音を立てて倒れた。


 消し炭になったプチーツァの中から光の玉が浮かび上がってきた。


 プチーツァの魂。


 光ってるこれがグラディックの素材だ。


     ☆


「プチーツァの魂一つ、弓一つ、っと」


 リーシャが持ってた万能薬でケガを直しつつ、その場に出した魔法陣に揃った素材を入れて、目当てのグラディックを作った。


 魔法陣がアイテムに変化する。


 そこに現われたのは白い羽根飾りがついた弓だった。


「ふむ」


 手に取って、まじまじと見つめる。


「どうですか? ご主人様」


「弓の事はわからん。お前が使ってみろ」


「はい」


 リーシャはおれから弓を受け取って、矢をつがえた。


「あの岩を狙います」


「ああ」


 おれが頷いた直後に矢を放った。


 まっすぐ飛んでいくリーシャの矢――は途中で変化した。


 一本の矢が分裂して五本になった。


 ドスドスドスドスドス!

 五本の矢がまとめて岩に突き刺さった。


 DORECAの動画で見たとおりの効果ができた。


「こんな風になるんですね」


「ああ。放った矢が分裂するショットガンみたいなもんだな。これを量産して防衛に使ってもらう」


「すごい……こんな弓見た事ありません。これがあれば2000の兵なんて怖くないです」


「そう簡単な話でもないだろうが、とにかく火力は上がるはずだ」


 グラディックとニートカ。


 この二つを大量生産する、がおれの考えた戦術だ。


 砲台とショットガン、この二つを並べればなんとかなると思う。


 それを揃えるために、おれはリーシャと二人で万能薬がつきるまでプチーツァを狩り続けたのだった。

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