表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
笑顔で魔力チャージ~無限の魔力で異世界再生  作者: 三木なずな
第六章 プラチナカード+奴隷ブロンズ
46/172

積み上げてきたもの

「ミラ、お前の奴隷カードを出せ」


 朝、領主の舘の中。


 ミラに言うと、彼女は自分の奴隷カードを出して、おれが作った魔法陣の中に置いた。


 おれはエターナルスレイブ改で指先をちょっと切って、血を一滴ずつたらし込む。


 プラチナカードで解禁された新しいアイテム、奴隷カード(ブロンズ)。


 必要な素材は奴隷カード(ノーマル)に主の血の二つ。


 魔法陣が揃った素材を包み込んで、新しいカードにした。


「ありがとうご主人様!」


「他の二人にはもうやった後だけど、一応効果を試す」


 エターナルスレイブ改で部屋の中にあるテーブルを真っ二つにした。


 DORECAで作った木造のテーブルだ。


「メニューを探せ、ブロンズから修復があるはずだ」


「見つけた」


「それをこのテーブルにかけてみろ」


「わかった」


 ミラは言われた通りカードでテーブルに修復をかけた。


「魔力と素材は?」


「元々の半分だよ」


「おれのオリジナルカードと一緒だな」


 ノーマルの時と同じだ。


 ミラは部屋から飛び出していった。修復のための素材を取りに行ったのだ。


 おれは椅子に座って、テーブルを眺めながら考える。


 これはかなり大きい。ブロンズになって修復が奴隷達にも使える様になったのは大きい。


 今まではおれしか修復がつかえなかった、それで色々効率が悪かった。


 奴隷達が修復使える様になったのはものすごく大きい進歩だ。


 ミラが素材を持ってきて、テーブルを直した。


「ふむ、とくに問題はないみたいだ、DORECAの能力とまったく一緒だな」


「はい! うふふ」


「どうした、にやけて」


「これでもっとご主人様の役に立てるのが嬉しいの」


「そうか。なら、これからももっとおれのために働け」


「うん!」


 満面の笑みで、即答するミラ。


 相変わらずな奴隷だった。


「ご主人様」


 ドアが開いて、ユーリアが入ってきた。


「どうした」


「使者が」


「使者? ヴァレリヤか?」


「カザンの人じゃない」


 静かに首を振ったロリ奴隷。その顔はいつになく真剣そうに見えた。


     ☆


 応接間に入ったおれは思わず眉をひそめた。


 そこに男がいた。無精髭で傷だらけの鎧をつけて、マントも赤黒いしみで汚れてる。


 パッと見て、盗賊かなんかに見えてしまう風体。


 そいつはテーブルの上にある、リーシャが出した来客用のカステラをむさぼる様にくって、ぼろぼろこぼしていた。


 行儀が悪い、本当にこいつがユーリアの言ってた「使者」か?


 そいつはおれに気づいて、顔を上げた。


「あんたがアキトか」


「……そうだが?」


 向かい合って座った。一緒に入ってきたミラがおれの背後に控えた。


「おれはヤン、マクシム様の下で働いてる」


「それで?」


 ヤンは喋りながらもくっちゃくっちゃ食べてる。向き合ってて不快感がものすごい。


「マクシム様の言葉を預かってきた。十日以内に挨拶に来い。だ」


「十日以内に? 挨拶に? なんの話だ」


「そこであんたの態度次第でここを含める四つの町の待遇がきまる、くれぐれもマクシム様の機嫌を損なうまねをするんじゃねえぞ」


「まて、話が見えない。一体何の話をしてる。そもそもそのマクシムってのは何者だ。おれに何を求めてる」


「はっ」


 ヤンは鼻で笑った。


「おいおい、リベックの新しい長はこんな無知野郎なのか?」


「ご主人様をバカにするのか」


 ミラが大声で怒鳴った。


「なんだてめえは……奴隷じゃねえか。奴隷ならもっと奴隷の分をわきまえろ。ご主人様が話してるときに割り込んで良いのか? ん?」


「くっ……」


 ミラは下唇をかんだ、悔しそうに黙ってしまった。


 その事を奴隷として反論できないって感じだ。


「ミラ。こいつとは喋るな。命令だ」


「わかりました」


 ヤンの言葉をおれ(ご主人様)の命令で上書きした。


 それでミラの悔しさは減ったが、怒りは相変わらずで、ヤンを睨み続けている。


 おれはヤンを向いて、聞く。


「無知ですまんな。話をわかりやすく説明してくれないか」


「本当にマクシム様の事を知らないのか」


 今度は呆れた。そんなに有名人なのか?


「あの、ご主人様」


「なんだ」


「マクシムっていうのは北の方にいる大領主の名前で、あっちこっちに戦をしかけて、町をうばって自分の物にしてる人です」


 つまり侵略者か。


 ヤンをみた、そいつは得意げな顔で胸をはった。


「まあそういうことだ。安心しろ、マクシム様も別に血を流すのが好きってわけじゃねえ。そっちがちゃんと挨拶に来て、マクシム様の配下にはいったら何もおこらねえ」


「……もし、断ったら?」


「その時はマクシム様の配下、2000人の兵がこの街に押し寄せるだけだなあ」


 ヤンは更ににやにやした。


「……すまないが、一晩時間をくれ」


「はっ、いいだろう。どうせ答えはわかり切ってるがな」


「……リーシャ」


 あえて背後にいるミラじゃなくてリーシャを呼ぶ。


「およびですか、ご主人様」


「ヤンさんに泊る所を案内しろ。丁重に」


「わかりました」


 ヤンはリーシャにつれられ、応接間から出て行った。


「ふう……」


 椅子に深くせもたれて、息を吐いた。


 戦争。


 その言葉が頭に浮かんできた。


 つまり降伏勧告にきたのだ、死にたくなかったら降伏しろ、さもなくば2000人の大軍が押し寄せるぞ、って。


 さて、どうするかな。


     ☆


 リベックの町を散歩した。


「姉ちゃん、これいくらだ」


「五千エンだよ」


「たかいな、ちょっとまけてくれよ」


 街の中は活気に満ちていた。大通りはいつの間にか商店街の様になってて、様々な取引が行われている。


 マラートの支配下にあったときに比べるとかなり変わった。


「領主様」


 おれの事に気づいた一人の男が話しかけてきた。


「領主様、実は小耳に挟んだんですが、マクシムがここを狙ってるって本当なんですか」


「……誰から聞いた」


「さっきマクシムの部下ってヤツがやってきたんだ。うちの店の商品を勝手に持ってって、それでとめたら『どうせマクシム様のものになるんだ』って言ってきたんだ」


 ヤンか……。


「何を馬鹿な事をいってるんだって思ったけど、領主様の奴隷様がついてて、そいつを止めなかったからさ」


 リーシャか……。


 おれの命令でつきそってるリーシャがヤンの事を権威付ける形になってしまったか。


「うちも持ってかれたよ」


「こっちもだよ」


「おれなんかほら、止めたらここ殴られたんだぜ」


「こっちは店を壊されたよ」


 次々と住民が集まってきて被害を訴えた。


 殴られた男に万能薬を渡して、壊された店はDORECAで修復をかけた。


「悪いなみんな。確かにそう言う話はある」


 おれの言葉で一斉にざわめきだした。


「マクシムから降伏勧告を受けた。降伏してあっちの傘下に入らないと2000人の兵で攻撃してくるって脅かされた」


 さらにざわざわした。


 やっぱりそうだよな。


 2000人の兵がくるなんて言われたらそうなる。


 リベックはおれの町のなかで一番住民が多いけど、それでも千人ちょいだ。


 2000がくるって言ったら怯えて当然だ。


 と、おれはおもったのだが。


「領主様、おれたちは何をしたらいい」


「え?」


 最初に被害を訴えてきた男が聞いてきた。


「何をしたらいいって、何が?」


「戦うためだよ。2000人の兵を撃退するためにおれ達は何をしたらいい?」


「……」


 おれは驚いた、予想してた反応とまったく違うからだ。


「バカだねえあんたは」


 別の女がいった。


「うちらがやる事なんて変わらないよ。領主様が作る何か、それの材料を集めるだけさ」


「そうそう、領主様ならきっと2000人も撃退するすっごい何かを作ってくれ」


「あれあれ、ほらあのニートカ。あれをいっぱい作るってのはどうかな」


 住民達がわいわいがやがやと言い出した。


 全員が希望に満ちた顔で話し合う。だれも絶望してない。


 おれはDORECAを持ち出した。


 全員が注目した。


 向けられてきたのは、強い信頼の眼差しだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ